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2024/12/10:フリーペーパーvol.105発刊!

障害者雇用にとまどう雇用主に贈る自立訓練支援員のことば

ラグーナ出版福祉事業部部長、河野豊さんが語る自立訓練事業サポートネットラグーナとの歩み

HIFUMIYO TIMESでは、株式会社ラグーナ出版社長の川畑善博さんにお話をうかがい、主に精神障がい者の就労と経済的自立について貴重なご意見をいただきました。同社は就労継続支援A型事業所として、精神に障がいのある方と雇用契約を結び、出版事業を行っています。

そのA型事業所に併設するように、ラグーナ出版は「サポートネットラグーナ」という自立訓練(生活訓練)事業も行っています。サポートネットラグーナを利用する方々へ毎日のプログラムを考案し、月ごとの時間割を作成し、プログラムに必要な道具を用意しセッティングしたり、利用者の前に出て司会を務めたり、利用者と一緒にプログラムに参加し、現場のスタッフとして中心的役割を担っている人物が、同社福祉事業部部長、河野豊(かわの ゆたか)さんです。

自立訓練(生活訓練)事業所・サポートネットラグーナの紹介

サポートネットラグーナは2011年4月、株式会社ラグーナ出版に併設された自立訓練事業所です。障害者総合支援法に基づき、利用者それぞれの自立した日常生活や社会生活を送ることができるよう、個別支援を行います。

障がい者の就労の場として、一般的に知られるものに就労支援事業所がありますが、自立訓練は就労にいたるまでのステップを踏む、ゆとりある生活や訓練の場といえるでしょう。長く引きこもりの生活を送り、外に出ることにも恐怖感を覚える方や、重度の精神障がいにさいなまれ生活のリズムが狂ってしまった方などが、規則正しい生活リズムを身につけるための訓練の場でもあります。

プログラムを通して利用者同志で交流したり(スポーツなど)、テーマに沿って意見を交わしたり(SST、WRAPなど)、農作業(農園)やレクリエーション施設でレジャー(ボウリング、カラオケなど)を楽しんだり、いったん心のリズムを整え、生活のなかにゆとりをつくっていく場です。それでは、河野部長のお話を中心に、サポートネットラグーナについてご紹介していきたいと思います。

サポートネットに欠かせない存在、河野豊部長

取材は、A型事業所の一部屋、製本作業などが行われている事務所の丸テーブルで行われました。

利用者への配慮

Q:名人「河野部長が、スタッフとして利用者の方に特に配慮していることを教えて下さい」

A:河野「はい、そうですね…、サポートに来るまでの間、自宅から出られなかったとか、大変な思いを抱えておられるというところを大前提に考えて、やっとここまで来たという気持ちを大切にしながら接するのは、スタッフ共通で思っているところです。あとは、個人個人に対しては一人の人として接する中で、生きづらさの特性というか、そのへんを考えながらですね…、個別に対応しているところです。目標を立てるのですが、できそうなところから、ちょっとずつ成功体験を積み重ねられるように対応できたらと思っています」

河野さんのやってみたいこと

Q:名人「河野部長がご自身で、今後このサポートネットの中で、自分独自のアイデアで、企画したいこと、やってみたいことなどはありますか?」

A:河野「最近新たに取り組んでいるプログラムは、ほぼほぼ僕企画のものが多くてですね…そのなかで『これどうでしょう』と、川畑に確認を取って、「これいいんじゃないか、こうした方がいいんじゃないか」という流れで決まったものが、わりと多いですね。今の形はそうなっていますね。午前中は個別でそれぞれ活動をして、午後からは集団で取り組めるプログラムが今のスタイルです」

自立訓練に参加する人たちへの願い

Q:名人「それでは、利用者の方に対することですが、利用者を中心に考えた場合に、こういうことをしたら良いんじゃないかなというアイデアがあれば(教えてください)」

A:河野「そうですね、やっぱり……安心感を感じてもらうと一番いいんですけどね。やっぱり、外に出るだけでも緊張して大変だという方が多いので…」

Q:名人「では、このサポートネットの中で、河野さんの務めって何だと思いますか?」

A:河野「私の、あ、役割的なものでしょうか? そうですね、私の役割は、サポートネットの中で、サポートネットに来てみようと思う方が「人と接するのも悪くないな」って思えて、未来に少しでも希望を感じられるようになれて、次のステップに進めれたらいい。それが僕の役割だと思います」

サポートネットラグーナの立ち位置

株式会社ラグーナ出版の1部門として、サポートネットラグーナもメディアで紹介される機会が増えてきました。

サポートネットの役割

Q:名人「日本全体の福祉の中で、サポートネットラグーナの果たす役割は何だと思いますか? この場所は、どういう役割を果たしていると思いますか?」

A:河野「(そんな大それたこと)あんまり考えたことなかったかもです」

Q:名人「ここを卒業した方(僕もですけど)、一般就労されたり、別の活躍場所を探して行ったり、ここのサポートネットを起点として、きっかけとして」

A:河野「そう考えると大事なとこですね(笑)。(そう思います(笑・名人))言葉ではあまりいい表現じゃないかもしれませんけど「ちょっと休める通過点」であればいいなと思っています。ここはゴールじゃない、良い意味で、通過点であればいいなと思っています。

必要とされる場所でありたい

A:河野―例えば入院していた方がいて、「退院したらどうしよう」じゃなくて、退院したら「あ、サポートネットラグーナに行ってみよう」と思える場所になればいいなと思ってますね。でも、どうしても入院生活が長くなると外に出る怖さとかも出てくると思うので、そういう意味ではちょっとは希望になれていたらな、とは思います。抽象的でごめんなさい…」

Q:名人「僕も同じようなことを以前言われたように覚えています。通過点であるとか、安らげる場であるとか。
ちょっと、テーマから外れるかもしれないのですが、僕が最初に河野さんにお会いした5年前と今の河野さんでは、この組織の中での立ち位置が変わっていると思うのですよね。まあ、偉くなってしまった。で、今のほうがやりやすいこととか、やりにくいこととかありますか?」

A:河野「あー、なるほど。やりやすいことは、どっちとも言えるかもしれないですけど、自分の判断でプログラム一つにしてもですね、利用者の方が一番大切の発想で私は動いているのですけど、自分の思うように動けるようになってるというのは良いことと思います。と同時に、やっぱり、常にこれで正しいのかなという思いは感じつつも、川畑にも確認しつつもですけど、ただ、自分の判断で動くことは多くなりました。それは、自分にとって良いことなんだけど、利用されてる方にとっても良いことであってほしいと思いつつ… はい(笑)まあ、個人的にはですね」

まとめ

サポートネットラグーナを、実は私も利用していたことがあります。当時は別の建物に入っていた施設で、プログラムも今と少し違うものもありました。

河野さん

河野部長のことを当時の私は河野さんとお呼びし、立場的には私はお客さんだったわけです。河野さんは今よりもう少し若く、今以上に迷いが多かったのかもしれないと想像します。利用者というのは私も含めて精神に障がいのあるかたがほとんどで、河野さんによる懸命な励ましの声や相手のためを思っての言葉も、通用しない場合があったはずです。もちろん、そんなときは川畑社長や精神科医である森越先生によるサポートがあるのですが、他の生活支援員の同僚とともに懸命に立ち振る舞っていた様子も覚えています。

生活支援員という仕事

「寄り添う」といえば、何かゆとりを持って心のこもった応対をする仕事と思われるかもしれません。もちろん、そうであればそれに越したことはありません。しかし、精神に障がいのある方々と現場で毎日平穏に応対するという仕事は、並大抵の苦労でできるものではありません。責任の重い職務だし、万一事故でも起きれば、責任の矢面に立たされるのは河野さんであり社長である川畑さんになるわけです。ごくまれのことではありますが、障がいがあるとはいえ利用者から理不尽な言い分で不平を浴びせられ、それでも笑顔を絶やすわけにはいかない気持ちを想像すれば、この仕事の苦労も少しは伝わるのではないでしょうか。河野さんは、いつも笑顔で利用者一人ひとりに対応することを重要視しています。現在はもう施設の利用者ではない、私にさえそうでした。

河野部長のお話はまだまだ続きます。川畑社長のお話ともリンクする部分がありました。次回第2弾では、インタビューの続きをご紹介し、私自身が経験したこともあるサポートネットラグーナのプログラムの特徴などについてもお届けしたいと思っています。

 

※ラグーナ出版への過去の取材記事はこちら

株式会社ラグーナ出版社長・川畑善博さんの精神障害者就労への試み
ラグーナ出版〜人間の尊厳を回復するために作った会社〜
ラグーナ出版だから知ってる、障害者就労に対する国と企業の現状

※ラグーナ出版に関する過去の寄稿記事はこちら

ラグーナ出版に学ぶ障がい者雇用を成功させる3つのポイント

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