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2018.7.10:フリーペーパーVol.28発刊!

ラグーナ出版だから知ってる、障害者就労に対する国と企業の現状

雇用実績のある「ラグーナ」だから言える、日本の障害者就労に対する国と企業の現状

今年2018年4月から施行された「改正障害者雇用促進法」により、精神障害者も雇用義務の対象に加わりました。法定雇用率を満たさない企業には罰金が課されます。

そのような背景もあり、障害者の能力を知ろうともせず、罰金対策として「とりあえず」何らかの雑務に就かせようとする、多くの企業があります。

前回のラグーナ出版取材記事第1弾「株式会社ラグーナ出版社長・川畑善博さんの精神障害者就労への試み」の続編である本編では、障害者就労を経済の視点から考え、罰金制度を初めとする国や当局による障害者就労の現場に課されるさまざまな制約について、川畑社長のご意見とともに掘り下げていきます。

精神障害者の秘める高い生産能力

新たに施行された法律の対策として、精神障害者雇用義務に負担を感じている経営者は多いことでしょう。

しかしその方々は、精神障害者の仕事能力を知った上で雇用を躊躇しているのでしょうか?肩書や学歴で採用して、失敗した経験はありませんか?

本当に望ましい人材が、精神障害者と呼ばれる能力集団に埋もれているのかも知れません。

精神障害者雇用で重要なこと

Q:名人「これから、精神障害者を戦力として雇用を考えている会社に対してのアドバイスがあれば教えていただけないでしょうか…苦言でもいいです」

A:川畑「今、人手不足でしょ、だからそういった意識で、とりあえずって雇うのは止めてほしいですね。仕事っていうのは、大事なのは尊厳の回復の場だと思う。そして、鹿児島(県)は比率でいうと、まあ163〜4万人ぐらいの人口ですから。いま(精神疾患をかかえる人の)推定数は、よく16人に1人と言われているのですが、分かりやすいですね、鹿児島163万人だから。だから10万人の外来患者さんが(鹿児島県には)いるということになるわけですよ。で、その10万人の患者さんにご両親ご家族がいるので、おそらく50〜60万人は、もう絶対関わってるんですよ、メンタルヘルスの問題に。で、鹿児島県は、地域での取り組みが遅れているでしょ、そういう問題に。だけど、ここの問題に取り組まない限りは、絶対に日本という国はよくならない。鹿児島は特に―

法人税と精神障害者の経済損失

―何でかっていうと、経済、お金の問題でいうと、去年の法人税10.3兆円なの、法人税が。ところが、精神障害者の損失、じゃあ国はいくらというと、2008年の統計で、7.8兆円と言われてて。これは患者数が200万人のときの推定ですから、現在400万人ですから、損失は倍くらいになっているはず、多分法人税を超えてるんじゃないかな。国は社会保障費消費税増税で賄おうと考えていますが、支出を抑えない限り、増税の問題はなくならないと思います。でもこれは本当に人手不足だからとかではなくて、例えば入院中の患者さんが今ここで働いていくとして、ある程度働くようになってきたら税金で返していくわけですよ―

地方経済の問題

―そういう風になっていけば、地域が豊かになっていくなあと思って。だから地域の問題として考えてもらいたい、というのが本当にすごくありますよね。で、経済損失が7.8兆円というけど、一人ひとりが輝いて強みを持って、やっていったら、7.8兆円どころか78兆ぐらい、利益は上がりますよ。10倍くらい。震災の時を見れば分かるけど、誰かを助けようとするときの日本人の団結力はすごいですからね。だから、それはすごく感じてます。あと、障害者雇用で一番いいところは、会社で最も大切な社風とか風土を考えるきっかけをつくってくれることです。16人に1人だったら、クラスに2〜3人いるわけで、じゃあ、その2〜3人の子をどうしようかっていうきっかけになると思うんです。そこで「救おうと考える会社」になるのか、障害者雇用をしていて、それとも「見捨てようと切り捨てよう」と、とりあえず仕事をさせておこうと罰金対策で、とかね。そんなとこ良い会社の空気は絶対に生まれない。だからそこですね、そこが会社の選択でもあり、鹿児島の選択だと思っていますー

長期入院と経済損失

―(名人:鹿児島は遅れていると思いますか?)
先進国中一番遅れているのが日本と言われていて、日本の中で、地域医療が遅れているのが鹿児島です。何が遅れているかというと入院患者数が人口比率で一番多いんですよ。それと、入院の長さ。それも異様に一番長い、これが鹿児島。イタリアは、もう精神科病院がないのね。一般病院なんか13日だったかな、聞いたら。鹿児島361日、ほぼ1年ぐらいですけ、まだ。全国平均が281日ですよ。ああ、400ぐらいにはならない、でも1年超えるのよね。その時の、経済的な損失もあるけど心的な苦痛とか地域で生きていく希望とか、考えているのかなまじめに、と思っていますね。だからそのあたりをしっかり、メンタルヘルスの問題として取り組んで(障害者も)地域のためにやっていけるんだよというのを、ラグーナは示していきたいな、というのが一番強い思いですよね。

福祉の範疇からの脱却

(名人:病院と、雇用環境と、経済が、全部関わってくるんですね)
―そうですね、だから、福祉事業所にも言いたいことがあるんだけど、いつまでもね、やっぱり福祉の範疇でやってたら、精神障害者はあそこ入れとけという思想が地域の中でできるので、そういうのではなくてね、やっぱりなんていうのかな、経済に参加するには仲間入りをしてもらうためには、きちんと会社の経営というものを、一つとしては、どうやって売り上げをあげていくかとか(考えていくべきです)。あともう一つは、そこの持ってる事業所の特徴は何で、こういったことをやっていくという、私はそうだったんだけど、昔、出版社時代、東京でやってたんだけど本売ってもあんまり楽しくなかったんです。いや、まじめに。ところが「シナプスの笑い」のあの500円の本作って、売れたとき、その本に思いがこもってるわけですよ会社の。ものすごく売れて泣いたの覚えていますよね

精神障害者を雇用する企業の現実

前述した「改正障害者雇用促進法」により、精神障害者の雇用も義務化されました。まるで法律に対応するように企業は動いているようですが、精神障害者自身には、これといった変化はほとんど感じられません。

新法は大して障害者を救っていない

Q:名人「精神障害者を雇用していく上で、制度上、国や当局に要求したいこと、今後すべきことなどは、ありますか?」

A:川畑「あ、ありますよ。国はありますね。まずあの罰金制度じゃなくて、あの、罰金を、雇えないからといって、この前大企業からちょっとあの、(雇用に関する相談に)来たんですよ。河野さんと行ったんだっけね、3万人だったかな。のところから、鹿児島の支部なんですね。で「仕事どんなの任せるの?」と聞いたら、「考えてない」と、「とりあえずその時あった仕事を任す」と。「どうしてですか?」って聞くとどうやら「罰金があるから」(国が)うるさく言うと。仕方なくみたいなんですよ。こんなね、罰金制度という考え方、賞罰で動く、これはねえ、なんかもうちょっとシステムとしては…

本当の意味で障害者を雇用するとは

―例えばうちにはですね、障害者雇用は出来ないけれど、仕事を発注してくれるところはあるんですよ。そういう人こそ本当に大事で、自分たちが出来ないことを「ああ、川畑さんのところは偉いね」って発注してくださるんですよ。もうその額をね、雇えないのだったら罰金から省いてくれるとか。そうしたら経済活動として成り立っていくと思うんですよ。今びっくりしますよ。障害者雇用率を達成している企業は50%らしいんですよ、一般企業で。で、50%から罰金取ってその罰金何に使ってるかというと雇用してるところに流してるだけなの。経済活動も何にも動いてない。ただ賞罰で動いてるだけで、こんなの意味ないと思ってて。そうではなくて本当に心ある中小企業、特に鹿児島は中小企業が99%ぐらい占めてるでしょう。もうギリギリでやってるところもあって、まあ、本当は業務分解をして採用してほしいとか思いますよ。ですけど、どうしても無理だと、でも発注はくれる。そう言ったところはそういったところで、(雇用として認めていただきたいくらい)―

0.…人って、何人のことですか?

―あのカウントのとり方、0.なんとか、人間は1人しかいない。で、さっき言ったようにうちは「人に仕事を合わせていく」で、仕事っていうのは勤務時間と業務内容なんですよ。これをやっぱりね、人に合わせてデザインしていくというのが僕は大事だと思っていて、それを正社員で雇えと言うとそれは精神疾患はいろんな定義があるかと思いますが、その1つは「疲れやすい病気」と思っています。最初の勤務時間は、1日3時間の週3~4日が疲れを測る基準の時間になると思います。そこから、「余裕感」と見合った技能と仕事が合えば、勤務時間と業務数が増えていったら理想ですね。また、孤立が発症や再発の契機になりますので、職場に患者2人以上で雇用してほしい、というのが願いです。こんな試みを誠実に行う中小企業には、20時間以下でも、1カウントとしてほしい。そうすれば、精神障害者の雇用が内実を持って進んでいくと思います。

責任感に賭けてみませんか?

川畑さんにお話いただいた精神障害者就労についての考えと社会の現状は、自分で体験してきた事実をもとに強い説得力を持つものでした。

本編の内容は、雇用主にとって耳の痛い話だろうと思います。

どんな規模であれ経営とは、むしろ中小や零細の企業にとって、不安な要素の多いものでしょう。障害者に就労の場を与えることも、出来るならやりたいと思う経営者がほとんどでしょう。

しかし、経営者には責任があるから、自分があまり詳しくない障害者を容易には雇用できないというのが本音ではないでしょうか。

そんなとき、厚生労働省が進める「障害者トライアル雇用」という制度があります。障害者を原則3か月間試行雇用することで、適性や能力を見極め、継続雇用のきっかけとすることを目的とした制度です(厚生労働省・障害者トライアル雇用詳細へのリンク)。

「どんな人が働いてくれるのだろう?」という不安があるなら、試してみてはいかがでしょう。精神障害者の特徴とも言われる

「まじめで、責任感が強く、細かい作業に適性が高い」

特徴を活かせる仕事を「人に合わせる」ことができれば、精神に障害を持つとされる方々がどれほど高い職能を持った人材であるかがお分かりいただけるだろうと思います。川畑社長ご自身も、また別の場で経営者の方々に紹介している制度です。

雇用してみて「いい人が見つかって良かった」と、新しい視野の広がることが期待できるはずです。

次回、ラグーナ出版取材記事第3弾では、同社に併設される「自立訓練部サポートネットラグーナ」の生活支援員として活躍する福祉事業部部長、河野豊さんに焦点を当て、サポートネットラグーナの特徴とともに、実際にその制度を利用していた名人の体験なども交えながら、お話を進めていく予定です。