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2024/12/10:フリーペーパーvol.105発刊!

米津玄師さんが奏でる当事者性のある歌詞について

高機能自閉症と診断された米津玄師さん

米津玄師さんと言えば、泣く子も黙るJ-POP界のカリスマ的スターであり、飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍されているのは大方の人は周知の事実だろう。そんな名声を得た米津玄師さんが高機能自閉症をカミングアウトしているのはご存じだろうか。

米津玄師さんは二十歳の時に高機能自閉症と診断された過去があった。米津玄師さんの描く歌詞は当事者ならではの苦しみや悲しみに満ちている。ここでは米津玄師さんの描く歌詞を当事者の目線でピックアップする。

いじめ、無理解、生きづらさが米津玄師さんを作った

米津玄師さんは1991年生まれ、徳島県で育った。幼い頃から周囲と打ち解けず、浮いてしまい、その特徴的な名前からいじめられ、生きづらさを抱えて生きてきたという。

小学高学年の頃にバンド、BUMP OF CHICKENやスピッツに憧れて音楽活動を開始するようになるが、同級生と組んだバンドは高校入学すると自然消滅するなどここでも困難に見舞われる。

そこで米津玄師さんは一人でも音楽制作ができるボーカロイド・初音ミクを駆使し、製作した音楽をネット上に上げるようになる。

高機能自閉症ゆえの周囲との軋轢や無理解、ままならなさなど米津玄師さんは苦しんだ。米津玄師さんにはもう一つ、マルファン症候群という難病も罹患している。

学校ではいじめられ、二次障害のうつ病にも苦しみ、そんな生きづらさを歌詞に込めていた。
もちろん、発達障害の人全員が米津玄師さんのように曲を作れるわけではないが、米津玄師さんの奏でるその独特な世界観のある歌詞は多くの当事者にも共感される。

その歌詞は当事者性に富んでいる

米津玄師さんの奏でる歌詞をじっくり聞くとその独特な語呂合わせや含蓄のある言語表現に驚かされる。ボカロ出身の歌手ということもあるかもしれないが米津玄師さんの奏でる歌詞はまるで、詩歌のようだと思う。

文豪の作品のような米津玄師さんの奏でる歌詞は何度聞いても色んな解釈ができる。

その背景には高機能自閉症と診断され、生まれてきてから今まで様々な困難を味わったからこそ、奏でられる才能なのだと思う。

代表作『Lemon』の歌詞の中に

『あの日の悲しみさえ あの日の苦しみさえ そのすべてを愛していた あなたとともに』

というくだりがあるが、この詩的な歌詞にも当事者性が含まれているように感じる。発達障害の当事者は不甲斐ない人生を送り、この期に及んでも苦しい生活を送っている人が多い。

発達障害の人全員が、米津玄師さんのように才能を発揮し、この社会で認められるばかりではないが、当事者としての米津玄師さんはそんな名も無き当事者たちの悲痛な声を掬い取り、その切なさや苦しみ、怒り、悲しみを素敵な旋律に載せて歌っている。

もし、米津玄師さんが当事者じゃなかったら?

もし、米津玄師さんが当事者でなかったら歌手になれていただろうか? と思う。

米津玄師さんが当事者だからこそ苦しんだ生きづらさがその詩的な歌詞を生みだし、昇華し、多くの生きづらさを抱えた人に届けているのだ、と思えば、米津玄師さんは当事者だからこそ、歌手になれたのかもしれない。

私は米津玄師さんの奏でる楽曲に救われている。

才能あふれる米津玄師さんが訴えた生きづらさの歌詞には、私自身やその他の人たちの日々のしょうがない感情ややるせなさを昇華させる効力がある。

ちょうど、帰り道の路上で見上げた夕焼けの色をなぞるように米津玄師さんの奏でる歌詞は生活に根付き、その生活を尊いものにしている。

私はどうしようもない夜に米津玄師さんの曲を聴き続けるだろう。

何度もリピートしてその歌詞の深さを味わうだろう。米津玄師さんが歌う世界観は当事者性を超えて永遠不滅の金字塔を打ち立てている。

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