星や月にまつわる、名前はこんなにたくさん!
私が10代の頃、入院していたとき、ずっと欠かさず読んでいた本がある。
それは『宙の名前』(写真・文 林完次 発行:角川書店)だ。
この本は、星や月にまつわる名前が写真262点、351項目も紹介されており、入院時の活字をあまり読めなかった私でも、読めた(眺められた)本。
つらいときこそ、響く宙の本
つらいときこそ、心に響く本だった。
美しい星や月の写真、言葉に心が洗われ、私は私自身が独りじゃない、とふと思えた。
星が好きな人、詩歌や文学をたしなむ人、綺麗なものが好きな人、そして、何より、悲しみに打ちひしがれた経験がある人、すべての人に響く本だ。
今回はその中でもとくに私自身が胸に刺さった言葉を紹介する。
後の月、という言の葉
後の月
陰暦の8月15日(十五夜)に対して、陰暦の9月13日の月、今でいう10月の月のことを『後の月』という。
十五夜は毎年、注目されるけど、10月の月だって本当は綺麗なんだ。
十五夜の満月以外であっても、多様な月の美しさを昔の人は、愛でる感性があったのだ、とこの言葉を知ったとき、驚いた。
この時期は菊の花が咲く頃で、十五夜の月と違い、少し月が欠けていることから、万全ではない状態、すなわち、『朔が満ちる(欠けていた月が満月に近づくこと)』、悪運からいい風が次第に吹いていく意味もある。
真珠星、という言の葉
真珠星
乙女座の一等星、スピカの和名。
春の夜に一際、輝くスピカを真珠になぞらえている。
まばゆい真珠が、夜空に輝く様子が目に浮かぶような言葉。
星を宝石に例えた、言葉の中でも、珠玉の言葉。
別名、牛飼い座の一等星、春の大曲線に並ぶ、アルクトゥルスとスピカを合わせて、春の夫婦星ともいう。
夫婦星とは本来、彦星と織姫の星である、アルタイルとベガを差す。
真珠星は元々、大分県で謂われた方言で、春の夜空に青白く、輝く真珠星は、幻想的な想像を掻き立てる。
夏の夜の女王、という言の葉
夏の夜の女王
ベガの和名であり、別名。
ベガは琴座の一等星で、織姫星のこと。
夏の大三角形(鷲座のアルタイル・琴座のベガ・白鳥座のデネブ)の中でも一際輝く、ベガを夏の夜に輝く女王になぞらえた。
ベガは街中でも見える星。
夜空に瞬く、ベガの異名にふさわしい、星の名前。
七夕伝説でもお馴染みのベガ、織姫星。
日本では宮廷で行われた一連の儀式が、江戸時代になると民間で広まり、今日の七夕行事になったと謂われている。
天狼、という言の葉
天狼
冬の大三角形(オリオン座のベテルギウス・おおいぬ座のシリウス・こいぬ座のプロキオン)の一つである、シリウスの和名。
おおいぬ座の一等星であるシリウスには、他に青星、絵の具星、野鶏、大星など、様々な異名がある。
天狼とは、古代中国で呼ばれた名前で、その名の通り、狼の目に星をとらえた言葉。
シリウスは冬の夜空の中でも、一際大きく輝く星でもある。
天狼という俳句雑誌があり、俳人の中には西東三鬼、橋本多佳子など、名だたる俳人を輩出した。
最期に星の文学者、野尻抱影
星や月の名前を眺めると、私は今でも心が豊かになります。
ここで紹介した『宙の言葉』はほんの一部です。
ネットでも星や月にまつわる言葉を検索すると、芋づる式で閲覧できるので、気になった方は検索してみると、疲れた心も癒され、もっと知りたくなると思います。
最後に星や月にまつわる言葉を研究した作家の、野尻抱影について紹介します。
この『宙の名前』で度々、引用される野尻抱影は、今はなき、冥王星の命名者でもあり、天文民俗学の第一人者でした。
野尻抱影さんの本もおススメです。
≪参考文献リスト≫
・野尻抱影『星の民俗学』
・KADOKAWA出版『宙の名前』
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