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2024/4/10:フリーペーパーvol.97発刊!

アンビエントの世界に触れるーあなたが求めているのは、もしかしたらこんな音楽かも!

はじめに、私自身のことから

皆さんは、どのような時に音楽を聴きますか?定期的に音楽を聴いて楽しんでいるという方もいれば、そもそも音楽を聴きたいと思うことが日常において無い方もいらっしゃるでしょう。

音楽に対する向き合い方は人によって様々です。近年はサブスクリプション・サービスの国内での確実な定着化なども含め、より音楽の聴き方、見つけ方は多様化しています。この記事を書いている私は、入浴中もiPodを水のかからない場所に置いて音楽を聴いていたり、夜に眠る時にも音楽をかけながら入眠したりしています。在宅勤務中も音楽をずっと聴いていて、実際その方が集中できているのです。

両親が音楽の好きな人間で、常に音楽が日常の中に組み込まれていたこともあると思いますが、音楽が無いと妙な気分になるというか、どう心を落ち着かせていいのか分からないのです。

音楽を愛することが、現代を生きるあなたを支える

こういった人は一見マイノリティなようで、実は世界中に存在しているのではないかと思っています。特定のアーティスト名で検索しながらSNSサイトを眺めると、多くの音楽を愛好する方々が散見できます。そういった方々がネットに書いている情報から、また新たなアーティストを探すこともできます。

音楽を愛好するということは、自分を見つめ、その創作物を作り上げたアーティストを見つめ、自分を深めていくということに直結します。政治的にも民間的にも、あらゆる複雑な問題が頻発する現代。人の心に触れ、人間が持つ繊細な部分について考える時間をくれる「音楽」という表現ツールが、今ますます重要性を増しているのではないか、と私は考えるのです。

アンビエントってどんな音楽?

今、私が熱中して聴いている音楽ジャンルは「アンビエント」というものです。この「アンビエント」は「環境音楽」とも呼ばれます。
クラシック分野の音楽家であるエリック・サティが1920年に作曲した「家具の音楽」という楽曲があります。これは家具のように、そこにあっても日常生活を妨げない音楽、意識的に聴かれることのない音楽を目指して書かれた音楽で、この思想に影響を受けたブライアン・イーノという音楽家が「アンビエント(環境音楽)」を提唱しました。ブライアン・イーノは、1978年から1982年にかけて「アンビエント・ミュージック」と名付けた4枚のアルバムを発表し、アンビエントという音楽の在り方を定義付けます。

このアンビエントという音楽を構成するのは、自然音や柔らかいタッチのピアノ、電子音といった鍵盤楽器の音、あるいはアコースティックギターの心を落ち着かせるような和音の響き、といったものです。あまり歌唱が入ることはなく、インストゥルメンタルとして作られていることがほとんどです。各界の研究によるところでは、勉強をしながら環境音楽を聴くと不安が少なくなり、集中力が高まり、結果としてテストの得点が高くなるという結果も出ています。

ネガティブな感情を抑え、自分の内面世界に集中させてくれるアンビエント。新型コロナウイルスの流行に代表されるような深刻な事件が度々起こり、メディアによって絶え間なく不穏な状況がシェアされ、大衆的な不安感情が高まる今こそ、アンビエントは有効なのではないか。静かに、アンビエントは時代に求められているのではないか。私はそう確信しています。

アンビエントはどういう時に聴くといい?

アンビエントを聴こうと思っても、どういうタイミングで聴けばいいのかが最初は掴めないかもしれません。
私は、とにかく睡眠を取る時に聴くことをお勧めします。アンビエントには、ドローンと呼ばれる一定に持続する音階・和音、リバーブと呼ばれるコンサートホールの部屋鳴りのような残響の持続が含まれていることが多いです。この持続する音階・和音を眠気がある時に集中して聴くと、不思議なことに、だんだんと意識が入眠に向かっていきます。私はアンビエントを部屋で流し、このドローンやリバーブの効能を利用して、毎日ぐっすりと入眠しています。ですから、意欲を出して動きたい時にアンビエントを聴くのは向かないでしょう。

アンビエントを聴く時は、自分がそれを聴くのに対して適切な環境にいるかどうかを確かめながら聴くと、すんなりと聴くことが出来るかと思われます。街やテレビでよく聴かれるような、歌唱があり、一定の構成がある音楽とアンビエントは全く違うものですから、理解するまでには時間がかかるものです。ゆっくりと聴いていきましょう。

アンビエントのおすすめアルバムを3つ挙げると……

では、ここからは私がアンビエントを聴き続ける中で見つけた、3つの個人的なおすすめのアルバムを御紹介します。

ロビン・ガスリー&ハロルド・バッド/Bordeaux

Apple Music
https://music.apple.com/jp/album/bordeaux/418900999

コクトー・ツインズを初めとして、そのギターサウンドによって幽幻な音世界をたゆまず創り続けて来たイギリスの名ギタリスト、ロビン・ガスリー。そして前述したブライアン・イーノともコラボレートを重ねる孤高のピアニスト、ハロルド・バッドの二人がコラボレートしたこの「Bordeaux」こそ、アンビエントの一つの理想型なのではないかと私は思います。

2011年に発表されたこのアルバムでは、ギターやピアノが主となりながらも、その音色はギター、ピアノという個々の楽器の限界を超越しています。鮮明で潤沢な残響音、前述したドローンの重層的な連続も含めて、プラネタリウムのように美しい世界がひとたび再生するだけで広がっていきます。普通の歌謡曲等では有り得ない、楽器の音色とそこに付随する残響やドローンだけで構築された世界でありながら、美麗な芸術品としてすんなりと受け取れる一作です。ジャケットが連想させるような真冬の時期に聴くと、特に感情移入できるのではないかと思います。

ビビオ/PHANTOM BRICKWORKS

Apple Music
https://music.apple.com/jp/album/phantom-brickworks/1286972624

AmazonやGoogle、HONDAといった世界的企業のCMにも楽曲を提供するイギリスの敏腕プロデューサーであるビビオが2017年に発表したこのアルバムには、彼が何年かかけて作り上げたアンビエントが9曲収められています。

ほとんど即興で作り上げてしまったというアルバムですが、全くそんな風には聴こえません。全ての音に意味と個性が宿っているアンビエントです。様々な鍵盤楽器の音色や深い残響に満ち溢れたギターが生み出す、どこか切ない気持ちになるような和音の響きに思い切り酔ってみるのもよし。集中したい時にBGMとして聴いて、不安な気持ちや焦燥感を抑えるのもよし。と、様々な角度・観点から聴くことができるアルバムです。

ブライアン・イーノ/LUX

Apple Music
https://music.apple.com/jp/album/lux/571670493

やはりアンビエントという音楽自体を提唱した張本人であるブライアン・イーノの作品も外せません。2012年に発表された、彼の作品の中でもより優しく、柔らかい音の響きを持ったこのアルバムには、日常のストレスで脳が活性化され過ぎてうまく入眠できない時に本当に助けられました。同じように脳機能の稼働が落ち着かない方、日常の中で擦り切れてしまった優しい気持ちを取り戻したい方には最も適したアンビエントではないでしょうか。木々を描いたジャケットのイラストレーションも含めて、非常に美しいアルバムです。アンビエントそのものを生み出したイーノにしか発露できない、素晴らしい才覚を感じさせます。

これらのアルバムはApple MusicやSpotifyに代表される各サブスクリプション・サービスでも配信されているので、聴くまでのハードルはそこまで高くないと思われます。アンビエントに興味が出てきたけれど、どのアーティストのどのアルバムを聴けばいいのかと迷っている方には、是非御参考にして頂きたく思います。

アンビエントに込められた「優しさ」

これらのアルバムを聴いていくと分かるのは、アンビエントという音楽に込められたある種の「優しさ」です。リスナーの集中を妨げない、興奮を煽らないこういった音楽は、言葉に比重を置き、感情に訴えかける現代のポピュラーな音楽に込められた情熱とは違ったベクトルの、しかし確かな優しさ、寛容さが存在します。

リスナーの感情を動かすだけが表現ではなく、リスナーの感情を落ち着かせ、和やかにさせることも強力な表現に繋がっていくのです。あらゆる日常の不安要素や、混乱した政情が絡まり合った現代において、アンビエントが提唱する音楽的な在り方、ひいては心の在り方。それは音楽という概念を超えて、毎日の生活を繰り返す上での生き方のヒントになるかもしれません。

現代特有のタスク、リスクの多い毎日の生活をどう乗り越えるべきか。どうやって不安な感情と付き合っていけばいいか。そこに迷い、活路を見出そうとしているあなたに、アンビエントの世界は開かれているのです。

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