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2024/4/10:フリーペーパーvol.97発刊!

障害者の就労と最低賃金について

最低賃金のルールの把握と、多様な働き方の可能性を目指して

我が国の労働法では、最低賃金が定められており、これを下回る賃金で従業員を労働させることは原則として違法となります。本稿では、最低賃金の全般的なルール、および、障害者の就労と最低賃金の関係について説明をさせて頂きます。

最低賃金とは

冒頭で申しあげたよう、最低賃金は「この賃金以下で従業員を労働させてはならない」という法律で定められた基準です。最低賃金は都道府県ごとに時給ベースで定められていますが、一部の職種においては職種別の最低賃金も定められており、該当する職種の場合は、都道府県別最低賃金と業種別最低賃金のうち、高いほうが適用されます。

月給者の場合には、月給を月平均の所定労働時間で割って、時給換算したうえで、最低賃金との比較を行なうことになります。最低賃金は、毎年10月頃に見直され、アベノミクス以降は好調な景気を受け、大幅な引き上げが続いていましたが、昨年はコロナ禍により、据え置きまたは小幅な引き上げに留まりました。

参考として、最低賃金の高い県・安い県を下表にて紹介させて頂きます。

髙い県 安い県
県名 最低賃金額 県名 最低賃金額
1位 東京都 1013円 秋田県

鳥取県

島根県

高知県

佐賀県

大分県

沖縄県

(以上同額)

792円
2位 神奈川県 1012円
3位 大阪府 964円
4位 埼玉県 928円
5位 愛知県 927円

障害者にも最低賃金は適用される

障害者の方が就労する場合にも、原則としては健常者と同じ条件で、最低賃金は適用されます。一般企業はもちろんのこと、就労継続支援 A 型事業所においても、障害者と事業所は雇用契約を締結しますので、最低賃金の対象となります。ですから、障害者というだけで、一方的に最低賃金を下回る賃金で雇用契約を締結させられるのは違法です。

ただし、労働基準法には、最低賃金の適用除外があり、会社が都道府県労働局長の許可を受けることを条件として、最低賃金を下回る賃金で雇用契約を結ぶことも可能です。この許可を受けるためには、健常者に対してアウトプットがどれくらい少ないのかなど、客観的に証明ができる書類を提出の上、労働局長の審査を受けなければなりません。

審査の結果、たとえば、東京都の会社で、健常者に対して当該障害者の方のアウトプットが30%下回るということであれば、時給は、

1023円×(1-0.3)=717円

での雇用契約が認められるということです。

このような許可を得て、はじめて最低賃金を下回る条件での就労が認められます。障害者の方が就職の際、最低賃金を下回る賃金を打診された場合には、労働局長の許可を得ているのかの確認を必ずするようにしてください。

就労継続支援B型事業所は対象外

いっぽう、就労継続支援B型事業所は最低賃金の対象外となります。B型事業所の場合は、就労訓練の要素が高いため、雇用契約の対象外とされており、賃金ではなく工賃という形で報酬を受け取るためです。A型事業所に比べ、収入は少なくなりますが、重度障害者の方を含め、多くの障害者の方が、自分の個性を活かして、自分のペースで働くことができる環境が用意されているのがB型事業所の特徴です。

最低賃金を上回る働き方を目指して

障害者の方が就労するときの賃金については、どうしても、最低賃金を上回るかどうかという点が話題の中心になりがちです。しかし、障害者の方が個性を生かした働き方をし、自分の得意なことに取組むことで、健常者以上のアウトプットを出すことができる可能性もあるはずです。そして、昨今はITの発達や、テレワークの普及などで、その可能性はどんどん高まっているのではないでしょうか?

インフラの活用や、私たちの内面におけるマインドチェンジも通じて、障害者の方が、個性を生かしたアウトプットをどんどん出し、健常者と同じか、それ以上の収入を得られるような社会を目指していくことができたら素晴らしいことですね。

 

プロフィール
榊 裕葵(ポライト社会保険労務士法人代表)

大学卒業後、製造業の会社の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務。その後、社会保険労務士として独立し、個人事務所を経てポライト社会保険労務士法人に改組。マネージングパートナーに就任。勤務時代の経験も生かしながら、経営全般の分かる社労士として、顧問先の支援や執筆活動に従事している。また、近年は人事労務freee、SmartHR、KING OF TIMEなどHRテクノロジーの普及にも努めている。

主な寄稿先:東洋経済オンライン、シェアーズ・カフェオンライン、創業手帳Web、打刻ファースト、起業サプリジャーナルなど

著書:「日本一わかりやすいHRテクノロジー活用の教科書

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