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2020/06/10:フリーペーパーvol.51発刊!

「大崎事件」第4次再審請求で問われる司法府の責任

原口アヤ子さん第4次再審請求「大崎事件」警察の取り調べと証拠

1979年10月15日、鹿児島県曽於郡大崎町の農業、中村邦夫さん(当時42歳)が、自宅横の牛小屋で遺体で発見された。この事件の容疑者として、被害者の長兄と次兄、長兄の妻で被害者の義姉にあたる原口アヤ子さん、被害者の甥にあたる次兄の息子の計4人が、殺人や死体遺棄の容疑で逮捕されている。

裁判の経緯

警察の取り調べに対し原口さんは一貫して事件への関与を否定したが、1980年3月31日、鹿児島地裁は原口さんに対し「被害者を絞め殺し牛小屋に死体を遺棄した殺人・死体遺棄の罪」で懲役10年の判決を下した。さらに、長兄に対して懲役8年、次兄に懲役7年、被害者の甥に懲役1年と、有罪判決をそれぞれ下している。

原口さんは即日控訴したが、長兄、次兄、甥の3人は公判でも否認せず、地裁の有罪判決にも控訴しなかったため有罪が確定。原口アヤ子さん自身は無実を訴え最高裁まで争ったものの、1981年に刑が確定した。きっちり10年の刑に服し、1995年から再審の請求を開始している。

再審請求

第1次再審請求は即時抗告で福岡高裁宮崎支部が再審開始決定を取り消し、さらに2006年1月30日、特別抗告によって最高裁が即時抗告審の取り消し決定を支持した。

第2次再審請求は鹿児島地裁によって2013年3月6日に棄却され、弁護側が特別抗告したものの最高裁によって2015年2月に退けられた。

再審開始決定の取り消し

2017年6月28日、鹿児島地裁は第3次再審請求で共犯者らの自白を「捜査機関の誘導で変遷した疑いがあり信用性は高くない」と判断。原口さんの夫と原口アヤ子さん再審の開始を認めた。2018年3月に福岡高裁宮崎支部も地裁の決定を認めたが、不服とした検察側が最高裁に特別抗告し、2019年6月25日、最高裁は再審開始決定を取り消した。

この決定は、1、2審で認めた再審の開始を最高裁が覆した初の例とされている。

―2020年2月11日、原口さんの弁護団が、3月30日に鹿児島地裁に第4次再審請求することを発表した。

大崎事件

原口さんに下された有罪判決とは「土間に放置した被害者をタオルで絞殺し堆肥に埋めた」というものだった。しかしその後の鑑定結果から、死亡原因は殺人ではなく被害者が自転車から転落した事故死であるとの味方が強まり、再審請求はこれまで3度にわたって行われてきた。

吉田教授の鑑定

3度目の再審請求では、弁護団が「死因はタオルで首を絞めたことによる窒息死ではなく、自転車で側溝に転落した際の出血性ショック死の可能性が高い」との東京医科大・吉田謙一教授による新たな鑑定内容を提出した。死因となった「頸椎前面の組織間出血」は、首にむち打ち症のような力が加わる「過伸展」によるものと判断するものだった。

高裁はこの鑑定を重視し、再審を支持したが、最高裁は「吉田教授が直接死体を検分していない」ことを理由に再審の開始決定を取り消す。

この事件では、被害者の長兄にあたる原口アヤ子さんの夫は事故の後遺症で知的能力が低い状態にあり、次兄とその息子には知的障害があったことが知られている。

冤罪

これまで日本国内で繰り返されてきた様々な冤罪事件では、後に違法性が問われるほどの厳しい取り調べが問題視されてきた。原口さんは一言の自白もないまま有罪が確定しており、無実を訴え続けたため仮釈放は認められず、10年の懲役をつとめあげる形となった。

最高裁の判断

仮に、地裁と高裁が下した再審の決定を最高裁が認めないのであれば、最高裁がその場で棄却するのではなく、一度高裁に差し戻してもう一度審理させ、その決定を再び最高裁で判断し直すのが通常ではないだろうか。審理が再開すれば、裁判所は検察に新たな証拠の開示を求め、検察はこれまで開示してこなかった証拠を提出することになるだろう。

しかし、そもそも法廷での審理に役立つ証拠なら、裁判所の要求に関わらず自主的に提示すべきだろう。この事件では、第2次、第3次と再審請求がなされる過程で、それまで出てこなかった新たな証拠が次々と出てきたことが報告されている。

裁判官の誤審は誰が裁く

原口さんが無罪となった場合、判決は裁判所の誤審ということであり、誤審につながったすべての審理に対して責任が課されるべきだろう。また、原口さんが無罪であれば、原口さんをはじめ全ての容疑者を警察は誤って逮捕、取り調べたということになり、その過程で負わせた精神的・肉体的すべての苦痛に対し法的な責任を取る義務を負うということになる。

懲役10年

無実の人間を法的強制力によって10年間、刑務所に服役させ、前科を付け、社会的な未来を半永久的に奪ったということになる。これは、どれだけ莫大な金銭で賠償したとしても償いきれるものではない。冤罪で人生のすべてを失った者が本当に賠償して欲しいものとは、40年間苦しみ続けたのであれば恐らくそれは、

今ここで40年前に時間を戻し、その時点で自分の無実を警察が認め自分を釈放し、今までの40年間に本来自分が生きてきたはずの、本来存在していたはずの人生をそっくりそのまま返してもらうこと

だろう。本当に無実なら、本当に要求したいものはそれだろう。どれだけ大金を積まれようと、たった1秒の時間すら買うことはできないのだ。

城鑑定

事件当時、被害者の遺体を解剖した鹿児島大学・城哲男教授の鑑定では、「死因は窒息死、警頸部の組織間出血は外的圧力によるもの」で、他殺が推測されていた。

一方、第3次再審請求で2015年に弁護団が提出した東京医科大学の吉田謙一教授の法医学鑑定書では、「自転車転落事故による出血性ショックの可能性が高い」とされている。

第3次再審請求で提出された鑑定が正しいなら、タオルを使った絞殺とした確定判決は間違いということになり、原口さんの無実が証明されるはずだ。しかし、地裁と福岡高裁宮崎支部が支持した再審開始を、「自白の信用性」を理由に最高裁は取り消している。

実は遡って第1次再審請求で、鑑定を担当した城教授自身が自らの鑑定を訂正している。自白にも大きな疑問が残されたままだ。

再審法整備

警察と検察、裁判所がそれぞれ責任を持って確かな判決を下す。そこには、正当な手順で進められた取り調べと、確信の持てる証拠による裏付けがなければならない。

再審無罪

近年の再審請求において、足利事件、布川事件、大阪東住吉放火事件、松橋事件のように、再審無罪の下される例が続いている。袴田事件のように、不当な取り調べと警察による証拠捏造が認められた結果、死刑囚が釈放されるような件も発生した。

日本の再審法整備のもろさが、これらの覆った事件によってあらわになっている。

法曹不足の問題

日本では、弁護士、裁判官の数が圧倒的に不足しており、法科大学院設置によって見込んでいた法曹の増員も、合格者の質の低下などが問題視され現実的に失敗に終わっている。

再審が増えることは、多忙な裁判官をさらに忙殺することにつながり、新たな審理に割く時間が切迫していく。再審によって判決が覆ればそれだけで国民からの非難の声が高まり、司法府の最高機関である最高裁は、再審を認めるほどに自らが批判される機会を増やす結果となってしまう。

自白の信用性

原口アヤ子さんの弁護団は2月11日、第4次再審請求を3月30日に鹿児島地裁に申し立てることを発表した。森雅美・弁護団長は「ある意味で最後になる。絶対に勝たなければいかんと。死因と自白を支える供述の信用性に、大きな戦力を注いできた」と、報道機関に対し述べている。

原口さんは92歳であり、鹿児島地裁に対し迅速な審理を求めている。

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