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2024/4/10:フリーペーパーvol.97発刊!

16歳から薬を飲み始めたってよ

「はたちの献血」キャンペーンに献血したくても出来ない人へ

冬になると、より盛んになる献血のお願い。寒い季節は献血する人が減り、輸血用の血液が不足します。人の集まりやすい休日のショッピングモールや図書館に「献血バス」が停車し、目立つ色のハッピを着た職員が、大きなのぼりを握りながら献血を呼びかけます。

16歳になってから、私はその光景を複雑な気持ちで視線に入れないよう努めてきました。精神安定剤を服用し始めていた私は、献血したい気持ちで胸は一杯でしたが、自分の血液を輸血用に提供することは、もう出来なくなっていたのです。

献血することが夢

14歳ぐらいからだったか、16歳から献血ができることを知りました。政府広報などのコマーシャルで、16歳から200cc献血が、18歳から400cc献血と成分献血が可能になるとかいう内容を、当時の基準で放送されていたことを覚えています。これは当時の記憶そのままで、現実の細目は少し違っていたかもしれません。

献血センターでもらえるお礼のパン

当時から、献血が不足していることはテレビコマーシャルで頻繁に放送されていました。献血センターでは、献血に訪れた人にお礼として飲食物を提供したり、献血後に休息を取ることのできる設備が整えられていることも、情報番組で特集されていました。

そこでもらえるお菓子が欲しかったわけではないけれど、人の命を救うために自分が少しでも役立てるなら、困っている人に自分の血液を200cc提供することぐらい、自分にとってはなんでもないことでした。

早く、16歳の誕生日にならないかと願っていたものです。

服薬する者の献血

16歳になってからほんの少しの間、自分にはまだ服薬を始めない期間がありました。できればこの間に、1回でも献血しておけばよかったのかもしれないと後悔しています。

16歳発症、服薬開始

16歳になって数ヶ月後、私は大学病院の精神科を受診しました。初診当日から向精神薬、精神安定剤の処方がはじまり、その時から、献血が出来ない体になっていたはず、ということになります。もちろん、服薬をやめ、体の中から薬の成分が抜けきってしまえば、献血は再びできるようになるでしょう。しかし今のところ、そういう体に戻ることは実現していません。

献血の規定

献血できる状態であるかについては、日本赤十字社で明確に規定されていて、誰でもどんな状態でも献血できるというわけではありません。薬についても、どんな薬もすべて献血出来ないというわけでもないらしく、以下に挙げる薬については、献血当日に服用していても、原則として献血に協力できるということです。

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以下のお薬については、献血当日に服用されている場合でも、原則として献血にご協力いただけます。

ただし、献血にご協力いただけるか否かの判断は、お薬の種類だけでなく、ご本人の体調、服薬目的、症状などを考慮して、検診医が最終的な判断を行いますので、ご理解ください。

①健康増進のためのサプリメント(ビタミン剤、ミネラル剤など)
※貧血治療中を除きます。

②胃腸薬
※感染性下痢症状がある場合を除きます。

③降圧薬
※血圧がほぼ正常域にコントロールされている場合。

④漢方薬
※肝疾患、感冒、ぜんそくなどのために服用されている場合を除きます。

⑤高脂血症治療薬
※一部の治療薬を除きます。

⑥アレルギー治療薬
※一部の治療薬を除きます。ぜんそくのために服用されている場合は症状により判断させていただきます。

⑦少量の女性ホルモン・避妊薬(ピル)
※更年期障害や月経困難症などの補充療法に服用されている場合は献血いただけますが、緊急ピルの場合は除きます。

⑧局所投与の薬物(点鼻薬、点眼薬、塗り薬、貼り薬)
※広範囲に使用されたり、感染症による場合を除きます。

⑨抗潰瘍薬
※潰瘍予防薬として服用された場合。

⑩緩下剤

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「日本赤十字社|よくあるご質問|Q 服薬していると献血はできないのでしょうか。に対する A 」より
http://www.jrc.or.jp/donation/qa/

献血バス

2019年12月30日の大晦日前日、鹿児島市の大型ショッピングモール入り口には献血を呼びかける日本赤十字社の大きなバスが停車し、歳末の慌ただしい雰囲気のなか懸命に献血を呼びかけていました。黄色いハッピを着た職員は、赤文字で「献血」と記入された黄色いのぼりを片手に、買い物客に献血をお願いしていました。

献血希望者の減少

献血そのものへの熱意の低下、若年世代の献血希望者の減少、日本人全体の高齢化など、さまざまな原因が複合して、献血希望者は年々減少していることが明らかとなっています。

通常なら献血バスのスタッフも同じく、この大型ショッピングモールの客として、年末の楽しい慌ただしさを友人や家族と過ごしたい気持ちで仕事をしていたはずです。

そういった中で、体格が立派で、外見がまだ若そうな私に対して、わずか200ccの血液を求めることに個人的には痛いほどその気持ちは分かります。自分なら自分自身に対し、

「そのデカイ身体のたった200ミリリットルの血ぐらい、あげればいいじゃん」とさえ、自分に対してだけは、言いたくなってしまうほどです(笑)

年末の献血バス

自分がショッピングモールで何を買ったのかは、もう覚えていません。自宅に帰ろうと、いくつもある入り口から一カ所選び出ていこうとすると、献血バスの周りで献血を呼びかける、一人の職員らしき方が私の存在を認め、じっとこちらに視線を向け「どうですか」と笑顔で呼びかけてきました。

またか、と思った私は長年蓄積してきた自分の心の弱さのようなものを、そこで一気に吐き出してしまったような気がします。

献血できない理由

職員の声掛けに私はきちんと答えたいという気持ちになり、自分の声が聞こえるだろう距離まで近づいてはっきりした声量で、

「献血したいのですが、薬を飲んでいるので出来ないんです」

と答えました。すると職員は、あらーという表情になり口を尖らせぽかんとした表情になり、

「なんの薬ですか?」

と私に質問しました。私は、

「精神科です」

と回答し、その場を離れ、帰宅しました。

献血してみたい

何を言っても、大切な献血活動にケチをつける発言としか、思われないのかもしれません。私のこういった悩みに対する他者の考えは、それはそれで仕方のないことだと思います。

しかし、もし出来ることなら、「献血したくてもやむを得ず献血から目を背けざるを得ない人が存在し、外見だけではその理由など分からない」こともあるのだということを、頭の片隅にでも置いてもらえないかと、願うのです。

そして、献血を呼びかける赤十字の人なのであればなおさら、歩行者の目を見て笑顔で発声してまで献血を呼びかける行為をとるのであれば、そういう事情を持つ人も世間には存在するのだということまで念頭に置きながら、献血活動を進めてほしいのです。

たくさんの人の命を救うため、たくさんの血液を集めて欲しいと心から願っています。

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