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2024/10/10:フリーペーパーvol.103発刊!

電通社員、高橋まつりさん飛び降り自殺から4年

あの事件で、職場の何が変わった

2015年の12月15日、この日、国内最大の広告代理店「電通」の社員だった高橋まつりさんが、自殺しました。高橋さんは、一カ月に100時間を超える残業や上司からの悪質なパワハラに苛まれ、精神的にも肉体的にも追い詰められた結果、自社ビルの寮から飛び降りました。

2015年12月15日、高橋まつりさん自殺

日本の労働生産効率は、高い数値を記録するGDPに比べ世界でも極端に低く、G7世界主要七カ国のなかでは最下位、OECD36カ国中でも21位と低迷しています。

日本の低い労働効率

海外に目を向けてみると、例えばドイツでは、部下に1日10時間以上の労働をさせた上司には罰金が課されます。

特に管理職に対しての労働時間が厳しく管理される制度が整っているため、部下である社員も労働時間を上司の目で管理してもらうことができるのです。

会議をしたという既成事実を作るためだけの会議を開き、その会議で使うだけの資料作成に長々と時間をかけ、結果的に成果物につながらない時間と労働が浪費されています。

せっかくExcelで作った資料をさらに目視で確認し、その承認に何人もの役職を通さなければならないなど、新たな利益につながる生産を潰している例が無駄として確認されています。

高橋まつりさんの死

2015年に過労死した高橋まつりさんについては、どのようなことが言えるでしょう。

0円東大生

電通社員だった高橋さんは、学生時代から優秀な成績を残し、高校は卒業まで特待生として扱われていました。

両親の離婚により母子家庭となっていた高橋さんにとって、成績の低下による授業料負担は避けなければならないという精神的なプレッシャーも想像できます。

自身の通う高校から東京大学に進学したのも彼女一人だったと言われており、塾にも通わず、現役で合格を決めた高橋さんが、もとから頑張る素質を持っていたであろうことは容易に理解出来ます。

電通での入社試験でも、経済的負担をかけることなく進学を果たした「0円東大生」であることをアピールしていたことが報告されています。

電通での業務

2015年4月に入社し、同年10月から本採用となった高橋さんは、やがて、一カ月の残業時間が69時間に達するなど、法定上限70時間ぎりぎりの月が続いたことが報告されています。睡眠時間を削ることで捻出した仕事時間も上司に課された業務を終えるには足らず、退社後自宅に持ち帰り翌日に間に合わせるため睡眠を2、3時間まで切り詰めることも続いたそうです。

その結果、休日を返上して仕上げた仕事の成果を上司からひどくけなされ、パワハラやセクハラとなる悪質な「いじり」も報告されています。

出社時の目が赤い、充血している、髪がボサボサで女性らしくない、

仕事の成果とは関係のない女性が気に病む指摘を受け、超過残業やパワハラはさらに助長されていきました。

1カ月の残業時間が100時間に及ぶということが、人道的にどれほどバカげたことであるか、一般的な労働者であれば理解できるでしょう。たとえ長時間の残業が重なったとしても、それが自分の望む業務であり、職場そのものは和気あいあいと他の社員からの協力も得られる状況なのであれば、残業100時間は行き過ぎであるとしても、まだ頑張れるものかもしれません。

しかし、彼女は自分が本来なら休みとして使うはずだった時間まで仕事の犠牲にし、友人や恋人との交際も断って仕事をこなしていたということです。

精神的に破綻をきたすのは当然とも言えるもので、そうなるまで社員を放置し仕事を任せ続けた電通には、多くの改善すべき企業文化が残されていました。

さらに20年前

1991年の過労死自殺

高橋さんの事件からさらに20年以上まえ、電通は1991年にも男性社員の過労死自殺を出しています。亡くなった24歳の男性社員は月に147時間の残業を課され、うつ病を発症した男性は自殺に追い込まれたことが明らかになっています。

この事件は、過労死というものに社会の厳しい目が向けられる大きなきっかけになったと言えるでしょう。

過労死の持つ残虐性

電通から発生した過労死の多くは、20代の新入社員であることが報告されています。前途洋々、大きな可能性を不当な労働時間の強制によって奪った企業の責任には、極めて重いものがあります。

世界でも有数の先進国である日本の、その最大の広告代理店でこのような事件が立て続けに起きてしまう原因には、日本が持つ独特の労働環境が挙げられるでしょう。

その点を改善していくことが日本の企業風土を改善し、社員の働きやすい職場の実現につながっていくはずです。

無駄のしわ寄せ

低い労働効率は生産性を下げ、生産量を落とし、優秀な人材の活用効率を極端に下げてしまいます。それは、社員の採用に高い費用をかけた、企業自身の損失にもつながるはずです。

無駄な残業が発生する原因は管理職の工夫不足にあり、それを埋め合わせるための仕事自体は新たな利益を生みません。

無駄に時間を浪費する会議、生産の伴わない連絡事項の連続、それらの合理化は、部署の責任者たった一人の改善では成し遂げられません。

大切なことは、正しい方針を会社全体で決定し社長が率先して指導することです。

自殺に追い込まれた高橋まつりさんのように、責任感が強く人一倍頑張ってしまうために命まで奪われてしまうような企業文化が、このままさらに下の世代まで続いてしまうようでは、この国の将来的な生産力の向上は見込めないでしょう。

世界でも類を見ない高度な教育を受けた優秀な頭脳が、国外へ流出してしまう事態さえ避けられない状況に陥ってしまうことが予想されるのです。

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