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2024/12/10:フリーペーパーvol.105発刊!

近年頻発している「レイプ事件」はなぜ起訴すらされないのか?

19歳実の娘に対する強制性交罪がなぜ不起訴なのか

女性の性被害に対する厳罰を求める声が、#MeToo運動の拡大からも明らかになりつつある。その一方で、近ごろ発生しているいくつものレイプ事件が不起訴となり、被害者が事実上の泣き寝入りを強いられている例が増えている。「レイプは心の殺人」であり、人の一生をボロボロに壊してしまう凶悪な犯罪だ。日本の司法は今後、レイプ事件をどのように扱っていく必要があるのだろうか。

19歳娘への実の父からの犯行・名古屋地裁岡崎支部

19歳の実の娘に対する準強制性交罪に問われた男に対し、名古屋地裁岡崎支部(裁判長・鵜飼祐充)は3月26日、無罪を言い渡した。「娘の同意は存在せず、極めて受けいれがたい性的虐待に当たる」としながら、「抗拒不能だったとはいえない」というのが無罪の理由だった。

強制性交罪

日本の刑法では「同意のない性交」だけでは強制性交罪が成立しない。被害者が必死に抵抗し、それでも抗うことが困難だったことが示される条件において、ようやく強制性交罪が成立する。これを「抗拒不能」と呼ぶ。

「抗拒不能」とは「意思決定の自由を奪われ、抵抗することが困難な状態」のことを指す。「暴行」「脅迫」を加えて性交した場合には「強制性交罪」、心神喪失や抗拒不能に乗じての犯行は「準強制性交罪」が適用される。

現在の法律に従えば、被害者は抵抗が著しく困難であることを証拠に残すことを意識しながら、かつ強制的な性交の被害に遭いながらそこから逃れるという手順を踏まなければ、後に加害者を強制性交罪で起訴することすらできないという状況にある。

被害者は19歳の実の娘

この事件の加害者と被害者は実の父娘の関係にある。

日本の司法は、実の父親からレイプされそうになった19歳の少女が、実の父による残酷極まりない仕打ちから身も心も引き裂かれた感情のまま、力でねじ伏せようとする男性の性暴力を跳ね返すことができるとでも思っているのだろうか?

セカンドレイプ

平成29年7月の刑法改正で、強制性交罪は親告罪ではなくなった。そのため、検察官が証拠を揃えて起訴することも、現時点では可能となっている。

しかし現実には、事件が望まぬ不起訴となるケースも少なくない。そこには、日本の司法が抱え続ける弊害、法廷での「セカンドレイプ」の問題が潜んでいる。

被害者をPTSDにならしめる裁判制度

被害者は裁判が開始するまでの過程において、警察や検察、弁護士などに対して、自らの被害状況について詳細な説明を行っている。

警察、検察、そして法廷と、新たな場に置かれる度にそれまで嫌というほど繰り返してきたはずの自分自身の被害状況を、また一から克明に説明し直さなければならない。被害者は辛い記憶を払いのけようと苦しみながら、これから始まる法廷における説明に備え、細かい記憶を維持しなければならない。

それは、心の殺人と呼ばれるレイプ事件の被害者が、辛い記憶を懸命に払拭しようとしながら、その気持ちとは相反するものを同時に要求されているようなものだ。心が分裂してもおかしくない。

加害者側弁護士

被害者はPTSDを引き起こし、精神的に不安定な状態に追い込まれる恐れをじゅうぶんに抱えている。「忘れたい」「悔しい」「あいつを殺してやりたい」といった湧き上がる苦しみを胸に封じ込め続け、少女は心の平静を失う。

法廷で説明を終えたらそれで終わり、ではない。

興味本位も集まる恐れを孕んだ傍聴席に聞かれたくない弱点を知られるリスクを甘受させられ、自分のプライバシーがその後どのように守られるのかについての絶対的な保証があるわけでもない。法廷にたどり着くころには自分の被害の詳細を知る人物が、いったいどれだけの人数にまで膨れ上がっているかについてさえ自分自身も正確に把握できなくなっている。

そこまで自分を犠牲にして説明したからといって、被告の有罪が確定する保証があるわけでもない。犯人が有期刑の判決を受ければ、刑期を終えたのちどのような報復を計画しているのか被害者は怯え続けなければならない。心理的重圧に押しつぶされた結果、被害者が起訴を取り下げることも少なくない。一方、加害者は過剰とも言えるプライバシー保護に守られ、社会に戻ってのうのうと居座り続けることになる。

甘すぎる日本の性犯罪罰則

強制性交罪の罰則は「5年以上」の有期懲役だ。それでも、性犯罪は再犯率の高いことでも知られている。

GPS監視を徹底

被害者は自分の体を傷付けられ加害者の欲望を満たす対象として陵辱される。それでも、今の法律では加害者にせいぜい懲役5年以上を課すことくらいしかできない。

かなり以前から日本のニュース報道において、犯罪者更生の機会という名目で「前科」という表現も封じられてきた。これだけ再犯率が高いことが分かっている犯罪なら、度重なる被害者を出さないことが大事だ。そのためなら、加害者を守る必要などあるのだろうか。これだけ再犯率が高いことが分かっている犯罪なら、まずは度重なる被害者を出さないことが重要であり、被害者を出さないためなら加害者を守る必要などはない。

危険な加害者が社会に開放されるのであれば、犯罪歴のあるその人物が今までいつどこで合計何回の性犯罪を繰り返し、被害者をどのような状態にまで追い込んだかについての詳細を、近隣住民には知る権利がある。それは、未然に被害を防ぎ自らの身を守るための近隣住民にとっての「正当防衛」の一種とさえ言える。

自分の勝手で犯した罪を理由に装着させられるGPSならそれは加害者の自業自得であるし、むしろ、GPSを装着する程度で済んでしまう罰則の甘さに感謝しても足りないくらいだろう。

岡崎で判決が下された事件で言えば、父と娘といった主従意識が長年にわたって育っている関係で、被害者の少女がとっさに懸命な抵抗を見せることなど困難だということぐらい、裁判官は判断すべきであろう。

不起訴の原因を知る必要性

レイプ事件が不起訴となる理由には法的な定義の問題もあるし、日本の警察や司法、裁判のプロセスにおける性犯罪被害者のプライバシーを守る意識の低さ、制度の不備などもある。

被害者は自らの被害を法廷で公開することで、結果的に自分自身を晒し者にする犠牲を払っているのだということを、司法は思い知らなければならない。

そういった、残酷極まりない心の犠牲を条件にしなければ被害者が裁判を起こすことさえできないというのなら、その事実はこの国に被害者保護の制度などまったく整っていないことを示している。

守られるべき順位が高いのはまず被害者であり、被害者の苦しみを避けるために強いる加害者への苦痛なら、長期にわたる懲役刑の厳罰化でも一生にわたるGPS装着でも、容赦なく課すべきである。

不起訴は無罪ではない。

現実に犯罪があったかどうか法廷で明らかにならないまま、争いを今ここでやめましょうという検察からの命令に過ぎない。もし犯罪が現実に存在した不起訴なら、犯人は罰を受けることなく世に解放されるということだ。

性犯罪の不起訴とは、多くの場合、妥協を強いられた被害者側の苦渋の決断であり、そういう判断を下さざるを得ない「サードレイプ」まで追い込んだのは他ならぬ日本の司法制度の未熟さそのものだと、司法にたずさわる者たちは思い知らなければならない。

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