誰もが疑問視し始めたコンビニエンスストア24時間営業
読者のみなさまにも既にお馴染みとなった4コマ風刺漫画「コラボてぃにゅ〜」も、もう3回目。続編まだかな…と首を長くして待っていた読者の方もいらっしゃるはずです。今回はコンビニエンス・ストアでのお話。
漫画は今から20年ほど昔、1999年ごろのコンビニ店内の様子を描いたものです。24時間営業するにあたって常に付いて回る問題が、深夜アルバイト店員の健康や安全面の問題です。はたして、店のオーナーは本気で店員のことを心配しているのでしょうか。
あなたは、コンビニエンスストアの24時間営業をどの程度必要だと思いますか?
〉24時間営業の見直しについて、消費者の72.6%が賛成であることが日本経済新聞社の調査でわかった。
〉消費者との意識の差が鮮明になった。https://t.co/XYNvqCXSJH
— 太郎 (@nNlFanhCdV2Ouri) 2019年5月23日
日本のコンビニエンスストアの発祥
日本に初めて開店したコンビニエンス・ストアは、1974年5月15日に東京都江東区で営業を始めた「セブンイレブン豊洲店」でした。セブンイレブンはアメリカ発祥のチェーンで、店名は午前7時に開店し午後11時に閉店することに由来します。長時間営業を売りにするにしてもそのくらいの営業時間が妥当というのが、少なくとも当時のアメリカの平均的な感覚だったことを示しています。
【24日のMJ】コンビニが営業時間を見直した場合、午前6時~夜12時までの開業を望む消費者が多いようです。約5000人を対象にコンビニの営業時間などに関する調査を実施しました。
(どうなる24時間営業)コンビニは朝6時~夜12時:https://t.co/as4cBl4Lfl pic.twitter.com/cbIBigwzyz
— 日経MJ (@nikkeimj) 2019年5月23日
24時間営業は儲かるか?
24時間営業で問題となっているのは深夜の営業です。近ごろはスーパーマーケットでも23時や午前0時ぐらいまで営業するチェーンもあり、そのくらいの時間までは割安で購入できるスーパーにも客は流れます。深夜勤の始まる前に、一度来店のピークを迎えるのが午前0時前後。コンビニの治安が最も悪くなるのが、朝の商品搬入の始まる午前1時から午前4時くらいまで、深夜の店員(多くの場合アルバイト)が担当する時間です。深夜帯は、時に眠気をこらえ無理して仕事しますから、身体的にも負荷が大きい時間帯です。
固定費
深夜のコンビニといっても賑わいぶりは店によりさまざま、立地の影響も強く受けます。都心の人口密集地では客が集まり、人口の少ない地域では店は閑散となります。
客が多いなら深夜であっても営業すれば利益が出せるでしょう。しかし、1人あたりの1回の購入金額の低いコンビニエンスストアが、来客も少ないのに連日24時間営業をしても利益は安定しづらいでしょう。光熱費・人件費などの固定費は逃れられない出費ですから、同じ時間を営業するなら、地域や来客数に関わらずほぼ同じ金額の光熱費が負担になるはずです。
深夜の人件費
次に、人件費のことも考えなければなりません。人件費は経営に重くのしかかってきます。どこの企業でも、経営が苦しくなると真っ先に人件費を削りたがるという傾向は昔から変わりません。人件費は1人削れば確実に1人分のマイナスが消えるわけで、その数字がそのままプラスとなって利益となってくれます。
コンビニの深夜勤務は危険を伴います。今でもときどき強盗のニュースが報じられます。今から約20年前、私がコンビニの店員をしていたころは、深夜であっても1人ですべての業務をこなすのは普通でした。しかし当時、レジの現金を狙ったコンビニ強盗が多発した結果、安全のために店員を2人以上置くことが推奨されるようになりました。現在では、コンビニのワンオペを目にする機会はほとんどありません。
2人勤務させれば2人分の人件費が負担となり、夜の22時から早朝5時までの深夜労働に対しては25%増しの賃金が支払われなければなりません。人件費が2倍となり、そこからさらに × 1.25倍の賃金が要求されます。
昼夜問わず客が途切れることのない都市部の繁華街なら店員を2人以上置いても十分に利益を確保できるでしょう。
しかし、人口が少なく深夜は散発的にしか客が来ない地方の店舗が、深夜に割増の人件費のかかる店員を2人置き、必要以上に明るい蛍光灯を灯し続けることに意味があるのでしょうか?
24時間営業の問題で揺れるコンビニ最大手、セブン‐イレブン。「毎月、オーナーとひざ詰めで対話します。」永松文彦社長は、きょう開かれた株主総会でこう述べました。経営陣が問われたのは、これまでの成長を支えてきたビジネスモデルの見直し。株主にどう説明したのか、詳しくは9時からの放送で! pic.twitter.com/TXGjN1tG7f
— ニュースウオッチ9 (@nhk_nw9) 2019年5月23日
1999年のコンビニ深夜バイト
当時からすでにコンビニの取り扱う業務は多岐にわたっていて、レジ、公共料金支払い、宅配便や郵便物の受付、携帯電話の販売、清掃、ゴミ出し、ポスター書き、揚げ物調理、深夜の商品発注操作…などなど、業務の種類は山ほどありました。本音を言えば1人ですべての業務をさばき切るのは必死の思いで、精神力との戦いというか、当時は不況の真っ只中だったから、逃げ場はないと思って働いていました。
何でも要求できると思ってる
自分が店員として働いていたコンビニは、チェーンまるごと倒産して今はもう存在しません。親会社の小売店チェーンが倒産し、子会社だったコンビニも無くなってしまいました。一部ではあったものの、客の中には「自分は客で立場が上だから店員には何でも要求できる」という考えの人もいるようでした。買う側と買ってもらう側ですから、店員は元から弱い立場にあります。
「自分に対して何も抵抗できないことが分かっている相手に、それでもどれだけ誠実に自分は相手に対応できるか」という点に、人間の価値は表れるものだと思いますが。
万引き、つまみ食い、はけ口
深夜のコンビニにはいろいろな客が来ました。複数で組んで来店し、1人が店員に商品の質問などして探させている間にもう1人が店の商品を物色するなど。
おでんの汁が少ないから「パサパサで食えないだろ!」と、いきなりどやしつける年配の男性とか。今なら何らかのハラスメントで問題になるのではないでしょうか。
20年前はまだ「ハラスメント」という単語が今ほど取り沙汰されていなかった面もあり、店長に相談してもほとんど対応してもらえませんでした。「セクハラ」だけはすでに用語が存在し、ちょっと問題になっていましたが。
イオン岡田社長「イオン傘下のミニストップも反省して根本的な解決策を出す必要がある。24時間営業が適正かどうかというのは本質的でない議論だ。コンビニ業界で本部がこれだけもうかっているのは富の再配分に問題がある」
コンビニ、問題は富の分配: 日本経済新聞 https://t.co/FKxrLi35mB
— AEQUITAS /エキタス (@aequitas1500) 2019年5月19日
最後に
すべての店舗が24時間営業をやめるか、またはすべての店舗が24時間営業を継続する、という二者択一に執着する必要があるのでしょうか。
各地域を、ある程度の面積と人口で分割し「深夜営業は数店に限定し持ち回りで担当する」ような方法をとっては駄目なのでしょうか。
その方が光熱費の節約にもなるし、集客効率が高い分バイトを2人以上置いても利益を確保しやすいでしょう。周知の目も届きやすくなり、万引き防止や店員の安全にもつながります。
それがなぜ実現しないのだろうと、私は長く疑問を抱き続けていますが、きっと使えないアイデアであることがすでに明らかになっているのでしょう。
それにしても、コンビニエンスストアのフランチャイズ本部が24時間にこだわる理由はどこにあるのか?24時間営業にともなう損益については、各店舗のオーナーだけが一方的に負う、という取り決めでもあるのでしょうか?
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