あなたは「カプグラ症候群」という病を知っているだろうか。
カプグラ症候群は身近な家族、恋人、親友など、自分にとって大切な人が、瓜二つの分身(ドッペルゲンガー)に入れ替わって見える妄想に陥る精神障害である。

この病は、1918年、フランスのパリで、

彼女は、精神科医ジャン・マリ・ジョゼフ・カプグラの目をじっと見据えて訴え続ける。

 「夫と娘の姿がどこにも見あたらないの。二人に替わって、そっくりさんが急に現われたわ。私を騙そうとしているに違いない!」

そう、半狂乱になって叫ぶマティルド・ムーラン夫人に見られた症例である。

ムーラン夫人の「そっくりさん幻想」は、1914年のある日、突然始まった。娘が認識できず、誰かに誘拐され、別の替え玉を置いて行ったと信じる。しばらくすると、娘はまた別の娘と入れ替わり、次々と何度も別の分身に変身していった。

 ムーラン夫人は、精神病院「メゾン・ブランシェ(白い家)」でも、自分やカプグラの分身が見えた。「私の分身は見舞い客を無断で追い散したり、私が注文した品物を横取りする。カプグラ先生の分身は、診断や指示を一から取り消すから、私はひどく混乱している」。ムーラン夫人の脳裏に、分身の分身が次々と増殖しているように見えた。

しかし、もちろん、ムーラン夫人の見る分身はすべて家族や知人本人だ。
ムーラン夫人も、誰の分身かは分かっている。顔の認識不能ではない。

症例は、ムーラン夫人にとどまらず、その後もカプグラ医師は他の患者を診ている。

一諸に暮らしている母親は「母親のフリをしている偽物だ」と母親を一生拒み続けた患者。「恋人がロボットか宇宙人に取って替わっていなくなった」と頑迷に確信する患者。兄と両親が分身だと分かるや、何年も口を閉ざして引きこもった患者。鏡の中に見知らぬ男の顔が見え、「おまえは何者だ? お前は絶対、俺ではない!」と、鏡の中に自分の分身を見ていた患者もいる。

カプグラ症候群に見られるこのような症状は明らかに妄想である。
妄想の対象は、人物だけでなく、場所、物体、時間などに対しても起きる場合があることから、当初は知覚障害や錯覚ではないと考えられていた。
しかし、1970年代以降、様々な学説が飛び交う中で、カプグラ症候群を神経学や認知心理学のスタンスから解明する学説が有力になっていったそうだ。

果たして、カプグラ症候群の原因は何か。

記事には、

諸説あるが、妄動型統合失調症、脳血管性認知症、パーキンソン病をはじめ、てんかん、前頭葉や側頭葉の器質的障害、頭部外傷、脳梗塞、脳腫瘍、糖尿病、偏頭痛、思考障害や被害妄想障害など、多種多様な病徴や病態が主因になると推定されている。

とある。

また、近年、カプグラ症候群以外にも、知っている人物が知らない人物に変装して自分を騙そうとしていると妄想するフレゴリ症候群(フレゴリの錯覚)などといった妄想を伴う病例が発見され、
カプグラ症候群・フレゴリ症候群・相互変身症候群・自己分身症候群の4つの症候群を総称して「妄想性人物誤認症候群(Delusional Misidentification Syndrome)」と呼ぶ場合が多いそうだ。

それでは、カプグラ症候群に治療法はあるのか。

症状を軽減させるため、認知行動療法と薬物療法を合わせて行うことも多いというが、もちろん、妄想をすぐに訂正することは不可能である。
妄想を否定することなく受け止めて、その原因を解明して取り除くことを目指すことが、大切であるそうだ。
それでもやはり、被害妄想が多くなると、つい否定したくなるだろう。しかし、一旦肯定して、本人に共感することが必要である。

カプグラ症候群のような奇病であったり、他にも常人には理解しがたい精神疾患が、この世の中には存在する。そのような病を抱えている人はそれを隠して生活していたり、病気であるという診断を敢えて受けていないケースもあるだろう。
今は他人事かもしれないが、それがいつ自分の身に降りかかってくるかもわからないのだ。

理解をすることはなかなか難しい。しかし、何でも「知る」ことは重要である。
もしかすると今も「自分には関係ない」と思っていながら、ごく身近なところで悩んでいる人がいるかもしれない。

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