社労士は誰のために仕事をし、誰から売上を得ているのか?
前回の記事では、社労士とは何者かということや、社労士の仕事内容について説明をさせて頂きました。
今回の記事では、より具体的に掘り下げて、社労士事務所は誰のために仕事をして、誰から売上を得ているのかということについて紹介をしたいと思います。
ざっくり
多くの社労士は会社からの「顧問料」で生活している
まず、大前提として開業している社労士の多くは、会社と顧問契約をして、会社の人事労務の事務を代行したり、経営者の労務相談に応じたりして生計を立てています。顧問先の会社から頂く顧問料が最も重要な売上です。
会社のため働く人のため
ですから、社労士は、会社から顧問料などの形で売上を得て、会社経営者のために仕事をしているということは間違いありません。
しかし、だからといって社労士が、「働く人の敵」ということではないのです。
確かに、過去には「気にくわない社員を合法的にうつ病にして退職させる方法」を指南して懲戒処分を受けたというような(元)社労士もいました。
従業員を大切にしなければ会社は長続きしない
そのような社労士は例外中の例外で、多くの社労士は、そのようなブラックなことはせず、「法律を守って働く人が安心して働けるような会社になれば、長い目で見ればその会社の業績は良くなる」と考えて顧問先の経営者にアドバイスをしています。
従業員定着の重要性
従業員がみんな「こんな会社で働くのは嫌だ」と退職してしまったら会社は存続できません。そこまで極端ではなくても、従業員が定着せず、退職と新規採用を繰り返していたら、求人広告など採用コストばかりかかってしまいますし、習熟度の低い従業員ばかりになってしまって、製造業であれば品質や生産効率が悪化してしまいます。サービス業であれば顧客に対するサービスの質も上がらないでしょう。
ですから、会社の事業をしっかりと維持発展させていくためには、従業員を大切にすることが必要不可欠なのです。
社労士は社労士法を守らなければならない
加えて、社会保険労務士法第1条と第2条には次のように書かれています。
【第1条】
この法律は、社会保険労務士の制度を定めて、その業務の適正を図り、もつて労働及び社会保険に関する法令の円滑な実施に寄与するとともに、事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上に資することを目的とする。
【第2条】
社会保険労務士は、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、公正な立場で、誠実にその業務を行わなければならない。
誠実なアドバイス
社労士の仕事は国から資格を与えられた公共性の高い仕事であるので、たとえ顧問料を頂いている顧問先からの依頼であっても、違法なアドバイスをしたり、事実と異なる書類を作ったりすることは許されません。
正しい労務管理
より具体的に言えば、たとえば、給与計算の代行を依頼されている顧問先の経営者から「30時間分以上の残業代は削って給与計算してください」などと依頼されても、それに応じるのではなく、正しく残業代を支払うことの必要性を説明し、顧問先の経営者が正しい労務管理を行うよう導いていかなければならないということです。
顧問社労士がいる会社は、働く人にとっても安心できる会社
そのように考えると、従業員の立場で働く人にとっても、契約している顧問社労士がいる会社で働くということは、安心感があるということなのです。
「顧問社労士が経営者にブラックなアドバイスをして、グルになって私たちをだまそうとしている」なんてことは基本的にはありませんのでご安心ください。
倫理徹底と風紀引き締め
冒頭でお話しした、「社員をうつ病にして退職させる」というブログを書いた社労士の事件以降はとくに、社労士業界を統括している全国社会保険労務士連合会や、各都道府県の社労士会および支部会は、倫理研修や会員への通知文などを通じて、各社労士への倫理の再徹底や、風紀の引き締めを図っています。
会社の発展と働く人の安心のため
もし顧問社労士がいなければ、経営者が確信的な悪意を持って違法なことをしているのは論外ですが、知らず知らずのうちに残業代の計算の方法を間違えていたり、本来社会保険に加入できるはずの人の加入手続が漏れてしまっていたり、ということが発生している可能性もあります。
社会保険労務士は、日々の労務相談や、人事労務手続・給与計算の代行などを通じて、顧問先の会社に正しい労務管理を伝えていき、会社の発展と働く人の安心感を支えていく存在ということができるでしょう。
ですから、社会保険労務士は、会社の味方であり、かつ、働く人も味方でもあるということが言えるのです。
プロフィール
榊 裕葵(ポライト社会保険労務士法人代表)
大学卒業後、製造業の会社の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務。その後、社会保険労務士として独立し、あおいヒューマンリソースコンサルティング代表に就任。勤務時代の経験も生かしながら、経営全般の分かる社労士として、顧問先の支援や執筆活動に従事している。
主な寄稿先:東洋経済、DODA、シェアーズ・カフェオンライン、創業手帳Webなど
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