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2018.10.10:フリーペーパーVol.31発刊!

イタリアの精神保健に触れて”鹿児島の今と未来”を考える

【バザーリア法40周年】イタリア・ボローニャの精神保健に触れて〜今を共に考える〜

10月3日、イタリア・ボローニャ精神保健局前局長で精神科医のイヴォンヌ・ドネガーニ氏が鹿児島を訪れました。「バザーリア法40周年 イタリア・ボローニャの精神保健に触れて〜今を共に考える〜」と題した講演会(主催:HOP STEP WRAP かごっま、共催:(株)ラグーナ出版、協力:NPO法人東京ソテリア(医)常清会 相談支援事業所ドライブ)には、当事者や家族をはじめ、精神保健医療福祉に関わる専門職の方、福祉を学ぶ学生、弁護士、司法書士、療育支援に関わる方など、平日にもかかわらず約250名が参加され、鹿児島の精神保健医療福祉への関心の高さが伺えました。ショートフィルム上映、ドネガーニ氏による特別講演、さまざまな立場から語り合うダイアログと盛り沢山の内容でした。

ボローニャと鹿児島の違い

ドネガーニ氏の特別講演では、イタリアの精神保健の歴史や保健サービスのしくみから、サポートファミリープログラム、ピアサポーター、演劇、アートサークルなど地域でのリカバリーに必要とされる活動に至るまで、幅広い分野のお話が聞けました。なるほど、と思うと同時に、鹿児島とは随分違うなと感じました。

バザーリア法制定から40年。鹿児島の今は…

イタリアで、バザーリア法が制定されたのは1978年。40年前になります。ここから約20年かけて、精神科病院を廃止していきました。一方、鹿児島の精神科病院の入院ベッド数は現在9728。イタリアでは、精神障害者が地域に出始めて40年もたっているのに、鹿児島はまだまだ世界の流れからだいぶ遅れている印象があります。地域に出たとしても受け皿が少ない現状もあり、課題が山積している状態です。

地域で精神障害者に関わる人数が違う

ボローニャの人口は約87万人。11の精神保健センターがあり、各センターには15~20名オペレーター(専門職)を配置しています。かなり、手厚い配置ですよね。聞いてびっくりしました。

ボローニャは10日。鹿児島は1年。

入院日数はボローニャが10日前後に対して、鹿児島は平均361日、約1年です。鹿児島も全体的に専門職が少ないわけではないと思います。地域における精神障害者に関わる専門職が少ない。だから、地域になかなか出られないのだと思います。

ダイアログから鹿児島の未来を考える

さまざまな立場から語り合うダイアログでは、当事者、行政、福祉、医療の分野で活躍されている方々がドネガーニ氏に質問する形で行われました。ダイアログを聞いていて、ハッとさせられること、共感すること、考えさせられることなどいろいろな気づきがありました。

ピアサポーターについて

ピアサポーターをはじめて間もない方からは、「イタリアのピアサポーターはどんな思いで活動しているのか」という質問がありました。

ボローニャでは、ピアサポーターは地域精神保健センターの支援員と一緒に利用者の支援に当たるそうです。ピアサポーターは、支援員より近い存在なので話もしやすく、場合によっては支援員が話を聞くより効果があると、ドネガーニ氏はおっしゃっていました。でも、まだ法的な資格がないので、ピアサポーターも法的な資格になるように動いているとのことです。

ピアサポーターの立ち位置がはっきりすることによって、自信をもって仕事に取り組めたり、自分を認められたり、心身ともにリカバリーしていくのかもしれません。今、増えつつある鹿児島のピアサポーターがリカバリーしていくことによって、地域で暮らそうと思っている患者・利用者は、希望をもって日々を過ごしていけるようになるのではないかと思います。

問題は認識している。その先には

行政として、「イタリアのようにやるにはどうしたらいいか」という旨の質問がありました。

今までの制度やシステムをどう変化させていくことが、今の鹿児島にとって良いのか聞きたかったのだろうなと思いました。ベッド数9728、平均入院日数361日の鹿児島。ここから、どうやって、退院促進、地域移行を進めていくか…。

ドネガーニ氏は、大切なことはやられている。問題を認識しているのが大切。と伝えた上で、さまざまな機関、ピアや地域、ラグーナ出版のような就労継続支援事業所などが一緒になって動いていくことで、市民の文化の意識を変えていくことができる、と語っていました。

医療と福祉の連続性がない現状から

「病院の中では治療、外では福祉と、精神障害者のケアの連続性がないという鹿児島の現状。これをどうしたらいいか」というニュアンスの質問がありました。

確かにそうだな、と思いました。中から外へスムーズに移行するためには、相互の情報共有が必要だし、書類だけではなく、しっかりとした形での共有がなければ、生活の安定、症状の安定には繋がらないだろうと思います。

ドネガーニ氏は、この質問に対して、リカバリーという言葉を出しました。リカバリーは、日常生活を再び自分に戻す、使うという意味。精神科医も、福祉に関わる人も、ピアも一緒になって、協同でやっていかなければいけない。治療はリカバリーの1つの結果でしかない。症状が出てる時、何が出来るか、もう1度考えたい、とおっしゃっていました。

希望とは何か

バザーリアは、とにかく自由・希望と言っているが、希望をどんな風に考えたらいいか」という旨の質問がありました。

希望。自分は、今思うと、その時々で変わっていたように感じます。希望がない状態から、少しずつやりたいことが見つかり、今は人と繋がっていくことが希望になっています。1人でいると、なかなか希望は見つけられないのではないかと思います。

ドネガーニ氏は、精神科医だけではなく、福祉で関わる人も医療で関わる人も、希望を共有すること、希望を一緒に作っていくことが大切、というニュアンスのことを語っていました。

イタリア・ボローニャの精神保健に触れて

ドネガーニ氏の特別講演、ダイアログを通じて私が感じたのは、とにかく繋がることが大切だということ。精神保健医療福祉に関して、後進国の日本。日本の中でも一番遅れをとっているといわれている鹿児島。多分、医療・福祉に携わるほとんどの方が危機感とやるせなさをもって、日々を送っているのではないかと思います。

今、遅れているといわれている鹿児島だからこそ、見える世界があると思います。問題はわかっている、あとは方法を考えるだけ。当事者・家族・精神保健に関わる専門職はもちろん、多くの方を巻き込んで繋がっていければいいなと思います。イタリア・ボローニャから40年遅れている鹿児島から、さまざまな取り組みが報告されること、精神障害者のみならず、市民みんなが生きやすい環境になればいいなと、この講演会に参加して感じました。