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2018.11.10:フリーペーパーVol.32発刊!

法定雇用率を上げるだけの障害者雇用対策には限界がある

障害者雇用を普及させる方法として法定雇用率を引き上げる手法には限界がある

中央省庁や一部の地方自治体が、法律で規定された障害者の法定雇用率を満たしていなかったことが発覚した問題で、民間でも障害者雇用の意識が高まっています。2018年4月からは法定雇用率が民間でも2.2%に引き上げられ、精神障害者の雇用も義務化されました。義務とされる数値を満たすため、企業も障害者の採用を拡大しはじめています。

法定雇用率を守ることだけが仕事なのか

法定雇用率の引き上げと精神障害者の雇用義務化により、一時的には障害者雇用者数の増加を見ることができました。それでは、法定雇用率と納付金制度(罰金制度)による締め付けの強化は、今後長期的に見て、障害者が職能を高めキャリアを形成していくための手助けになっていくのでしょうか。

利益を上げ無駄な労力は省き、必要な人員を必要な人数、適切に配置することが企業が追求する利益最大化であるなら、仕事の内容にかかわらずすべての業種に均一に、障害者法定雇用率を義務化する現在の画一的な法律は、障害者を有効に活用しようとする企業の工夫さえ妨げるようにさえ思えるのです。

精神障害者一般就労の実態

障害者雇用を進めるため最初に覚悟しておくべきことは、雇用主、障害のある労働者、一般の労働者の全員が、最初から何も苦労することなく全員が楽しく働けるといった関係からスタートすることなどあり得ない、ということです。

障害者の進まぬ仕事にじれる雇用主

障害者とくに精神障害者については、仕事の複雑な工程がきわめて苦手な人が多くいます。そのため、仕事の進み具合や精度について必ずどこかにしわ寄せが来るでしょう。そういった期間を、それぞれの企業が雇用主主導で一体となって待てるか、という点に、障害者雇用の命運がかかっているように思います。障害者をどのように配置すれば本人の適性が最も効果的に発揮されるか、かなりピンポイントで探る必要がありまする。多くの企業はそんなに時間的な余裕が無いから、使いづらいと判断したら一旦通常業務をフルタイムでやらせてみて、やっぱりダメだと結論を出したら、その後の障害者の処遇は本人の疲弊を待つだけになります。冷淡なものです。

何人もの例を見てきた当事者だから言える

私には、発達障害や統合失調症、双極性障害などの精神疾患を患う友人が多くいます。彼らは、たまに障害者と分かったうえで雇用してもらえる一般就労の機会に恵まれ、そのことを顔をほころばせて喜び数人の友人に打ち明けます。そして、意気揚々と一般就労を開始するのですが、長期間続く者はごく一部で、ほとんどの友人は1カ月どころか下手すると1日で辞めてしまいます。ダメになる理由はほとんどの場合、長すぎる就労時間です。

精神疾患を持つものがなぜ長時間働く体力がないかというと、大きな原因として大量の服薬があります。多くの方が風邪薬なら飲んだことがあるでしょう。精神障害に関する薬は、風邪薬の何倍も眠くなります。その状態で8時間働くことを想像してみてください。頭はクラクラ、目はうつろの状態で、複数の指導の声が交錯するなか新しい作業に次々と挑戦するということです。精神障害者の低い就労率に対する解決方法が、業務の分割と複数人員への分担というのは、それが理由です。

罰金ではなく指導役の常勤化

もし、1人あたり1カ月に5万円の罰金を企業から徴収するなら、そのお金を「高齢・障害・求職者雇用支援機構」に収めるのではなく、1人のメンター(障害者に仕事を指導する専門のスタッフ)を配置するための人件費にまわすことはできないのでしょうか。

メンター(指導係)の必要性

1社に1人が難しいなら、複数の同業者で結成する「組合」というものもあるので、組合単位で数人のメンター、ジョブコーチ、障害者として先に経験を積んできた先輩の指導係などの人材を配置し、障害者にとって働きやすい環境の工夫をはかるべきです。会社にとっても、障害者にキャリアを積んでもらい、やがては障害者自身を重要な指導係として後に続く障害者雇用のメンターにすれば、障害を持つ労働力の安定雇用が継続できるはずです。

仕事内容が理由で辞めるばかりではない

もしあなたが障害者だとして、大勢の健常者がすでに仲間になっている会社集団の中に、たった1人の障害者としてポツンと配置されたら、どんな気持ちになりますか? 大企業においてさえ、現在でもこのような採用があたり前のように行われているのです。

仕事ですから、お友だちごっこではないのだし、職場に適応するのも本人の責任なのかもしれません。とはいえ、普通に考えて、新入社員となる障害者にとってそこは息苦しい場所で、悩みを打ちあける話し相手もおらず、障害を持つ異質なものとして周囲からジロジロ観察されるといった場所でもあります。

「そういった環境に、あなたなら耐えられますか?」
「そのような場所で集中して良い仕事ができるでしょうか?」

この点は、雇用者が、もっと工夫しべき問題です。1人の仕事を2人で分け、賃金も半分に分ければいいだけのことです。投薬のせいで体力が低下している障害者なら、そのような雇用形式はむしろ歓迎されるでしょう。仕事で大切なのは、長く続けることですから、報酬は本来の半分で問題ありません。仮に通常の半分であっても、障害者を対象とした作業所の「工賃」よりは、はるかに高い報酬だろうと思いますから。

罰金と雇用率引き上げに頼らない障害者雇用

法律で罰金を科し、ペナルティーを逃れるために障害者を雇用するといった、現在の障害者雇用促進策は「障害者を出来る限り雇用したくないけど、罰金があるからいやいや雇用する」といった企業側の図式を解消する手助けにはなりません。

障害者雇用が企業側に左右されている

障害者の能力に対する企業側の理解が深まることはないからです。障害者雇用において、即効性があり具体的な方法は、仕事の分割と人員に対する仕事の的確な割り当てです。だからなおさら、こまめな指示を出さなくてもどのような部署に配置されても、器用に独自の判断でどんどん仕事をこなしてくれる正社員を期待する雇用主にとっては、障害者は雇いたくない存在なのかもしれません。

地方の中小零細の活動

地方の中小・零細の企業の中には、自社で障害者を雇用する余裕はないけれど、障害者を雇用している取引先を選んで業務を発注しているところもあります。発注であっても障害者の仕事を増やすという意味で雇用に貢献しているといえるでしょう。

「うちでは雇えないから、せめて仕事を回させてもらいます」といった草の根で障害者就労に貢献している会社は、せめて罰金の対象から外していただけないものだろうかと思います。経済活動全体として見て、障害者の活躍する場面を増やすことで雇用に余裕のある大企業が障害者雇用を拡大できるなら、それも障害者雇用への協力といえるでしょう。自社雇用とは違った形での協力に対する評価が、存在していいのではないかと思います。

障害者に目を向けて人間として知ってください

できない仕事を無理に割り振って会社と社員ともに自ら苦境に追い込む必要はありません。障害者の仕事への認識の甘さを許したり、諦めを簡単に認める必要もありません。仕事に必要な指導は妥協なく行うべきです。障害者雇用は、何度も改正を重ねるずっと前の最初の法律から何十年たってもほとんど改善していません。企業にしても我が身を削って障害者を雇い入れているわけですが、障害者を長期的に雇用するための、行政が協力する手取り足取りの現場対応は不足しています。精神障害に限定しても、人口が150万人を超えるような県に該当する福祉センターは1件しかなく、そこをたった6〜7人のスタッフで回してるような状態です。

障害者を雇い入れるには企業側も痛みを伴います。企業を雇用人数と割合だけで評価して、罰金を中小企業から大企業に回すだけの行政は、もうやめるべきです。本当にやるべきことほど、手間がかかり効果は見えにくいものですが、本当に必要とされる支援とはそういうものです。

行政は、各企業で障害者が働いている様子を毎日観察できるシステムを構築したり、障害者を雇用する企業側の相談にも乗れる担当者を配置すべきです。障害者雇用に、国でさえどこかしら乗り気ではないような風潮があります。それが、民間企業の障害者雇用に対する消極性さえ育ててしまっているのではないでしょうか。