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2024/12/10:フリーペーパーvol.105発刊!

社労士が説明する「障害年金を受給しながら働く場合に知っておきたい年金の仕組み」

障害年金を受給しながら働く場合に知っておきたい年金の仕組み

障害年金を受給されている方の中には、年金だけに頼るのではなく、自立して働きたいと考えていらっしゃる方もたくさんいらっしゃると思います。

しかしながら、その一方で、働くことによって年金が減額されてしまうのではないかと不安に思っていらっしゃる方もいるのではないでしょうか。

そこで、今回は、障害者の方の就労と障害年金の関係について説明をしていきたいと思います。

原則として障害年金の減額は無い

まず、安心して頂きたいのは、障害基礎年金・障害厚生年金含め、給与所得を得たことによる年金の減額や支給停止は無いということです。

働けるくらいまで障害が軽快して、そもそも障害等級に該当しなくなっていたということでしたら別ですが、障害等級に該当する障害を抱えながらも、頑張って働いて給与所得を得たならば、その頑張りは当然報われるべきだと国は考えているのです。

20歳前障害の場合も過度の心配は不要

ただし、1点だけ注意をして頂きたいことがあります。

それは、先天性の障害や子供の頃の傷病など、20歳前に発生した障害に基づいて障害基礎年金を受給している場合です。

20歳前障害

年金の保険料は原則として20歳から払い始めますが、20歳前に発生した障害に基づいて障害基礎年金を受給する場合は、1度も年金の保険料を払っていなくても受給権が発生しますので、公平性の観点から所得制限が設けられているのです。

支給停止条件

所得と家族構成に応じ、障害基礎年金の2分の1または全額が支給停止になるのですが、たとえば、1人世帯(扶養親族なし)の場合は、所得額が360万4千円を超える場合に年金額の2分の1が支給停止となり、462万1千円を超える場合に全額支給停止となります。

とはいえ、支給停止になる金額は額面の「収入」ではなく、基礎控除や給与所得控除がマイナスされた「所得」ベースで360万4千円以上ですから、月20万円や30万円の給与を得たとしても、支給停止になることは全くありません。

20歳前障害に基づく障害基礎年金を受給している場合であっても、相当多くの給与を得なければ障害年金の支給停止基準にはひっかかることはありませんので、過度に心配する必要はないと思います。

働いて支払う社会保険料は無駄にならない

障害年金を受給している方は、国民年金の保険料は免除となっています。

社会保険料の用途

ところが、企業に入社して障害年金をもらいながら働く場合、おおむね週30時間以上勤務することになると、健常者の方と同様に社会保険に加入し、本人負担分の社会保険料は給与から天引きされます。

社会保険料が天引きされて手取りが減ることは、確かに残念に感じるかもしれません。

しかし、働いて支払った社会保険料は、決して無駄にはならず、将来の老齢厚生年金につながります。

たとえば、障害基礎年金を受給している方が、いちども就職することなく65歳を迎えた場合、引き続き障害基礎年金を受給することができますが、それ以外には何も発生しません。

障害基礎年金と老齢厚生年金

逆に、障害基礎年金をもらいながらも就職して、社会保険料を払い続けた場合、65歳からは障害基礎年金に上乗せして、老齢厚生年金も受給することができます。

昔は障害年金か老齢年金かを選ばなければならなかったのですが、現在は、障害を持ちながらも一生懸命働いてきた人には手厚く報いるべきだという国の方針があり、一定の要件を満たせば障害年金と老齢年金は両方もらえるようになったのです。

まとめ

現在、我が国では「1億総活躍社会」というスローガンが掲げられていますが、国は、障害者の方にもどんどん社会に参加して、その能力を発揮してほしいと考えています。

障害者差別解消法

それゆえ、障害者差別解消法により企業には「合理的配慮」が求められるようになり、また、障害者の法定雇用率も2018年現在2.2%まで引き上げられました。

そして本稿でも説明しましたよう、年金制度も、障害年金の受給者の方が働いても損をしないような仕組みになっていますので、そのことも覚えておいていただいたうえで、就労のチャンスを是非積極的に生かしてほしいと思います。

 

プロフィール

榊 裕葵(ポライト社会保険労務士法人代表)

大学卒業後、製造業の会社の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務。その後、社会保険労務士として独立し、あおいヒューマンリソースコンサルティング代表に就任。勤務時代の経験も生かしながら、経営全般の分かる社労士として、顧問先の支援や執筆活動に従事している。

主な寄稿先:東洋経済、DODA、シェアーズ・カフェオンライン、創業手帳Webなど

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