2018.6.10:フリーペーパーVol.27発刊!

同一労働同一賃金非正規雇用問題に最高裁が判決・6/1

同一労働同一賃金が生み出す労働市場の流動性

横浜市の運送会社に契約社員の運転手として働いていた男性が、正規雇用の労働者と同じ仕事をしているにもかかわらず賃金や手当などの面で劣るのは不当として訴えを起こしていました。

その裁判の上告審判決6月1日最高裁判所で下されます。

全国さまざまな職場で議論されている「同一労働同一賃金」の問題に、日本の司法最高機関が最終判断を下します。判決の内容は今後の雇用問題に大きく影響することが予想されます。

最高裁の判例ですから、今回の運転手の男性による訴えが認められれば、日本の企業は今後、雇用形態にかかわらず純粋に「やった仕事の内容と結果」によってのみ報酬を決定しなければならなくなるはずだからです。

今まで、雇用側の経営状況の調整弁としてうまく利用され続けてきただけの非正規雇用労働者は、自分の業務内容に対して報酬がふさわしくないと判断できる場合、当然の権利として不合理を会社に訴え、労働基準監督署などの公的機関に訴えることも、現在より容易に行えることになるでしょう。

同一労働同一賃金

仕事内容は同じなのに、雇用形態が違うからといって賃金に違いがあるのは不当という理論は、国際的に見れば当たり前です。

しかし、世界でも有数の先進国日本では、入社した時点での契約形態により「正規」か「非正規」かが決定し、その後まったく同じ仕事をしても、賃金、手当、福利厚生などの処遇に差が生じます。

そして、それは当たり前だという考えが広く行き渡っています。

運送会社と運転手双方への最高裁判決

横浜市で運送会社の運転手をしていた男性が、いったん定年退職したのち「再雇用」されたという理由で、定年前と同じ仕事をしているにも関わらず賃金や手当が劣るのは不当として訴えを起こしていた裁判の上告審判決が6月1日、最高裁から下されます。

運転手をしていた男性は、1審で勝訴、2審で逆転敗訴しています。2審の高裁判決の理由に(非正規雇用は)「広く社会的に認められている」といったものがありますが、広い社会とはどの範囲なのか、社会に広く認められていることの定義とは何なのか、判断の難しいところです。

期間雇用郵便配達員の場合

日本郵便の期間雇用社員で郵便配達員を務める、ある男性の時給は1530円と言います。アルバイトとして働き始め、契約更新をくり返し現在42歳で期間雇用歴16年とのことです。

管理職の指揮の下、配達の仕事は正社員も期間雇用社員も区別はありません。しかし、正社員には支給される年末手当、年始手当、郵便外務業務精通手当、住居手当、扶養手当などが、期間雇用社員には無いか、減額されます。

東京メトロ売店店員の場合

地下鉄東京メトロの販売員メトロコマースの女性は、労働契約法20条を理由に、正社員と契約社員の賃金や手当の違いは不合理な差別であるとして訴えを起こしました。時給は手取りで1000円程度、1カ月の給料は12〜14万円程度で、これは生活保護ラインぎりぎりとも訴えます。

女性が労働組合の団体交渉で訴えても、その部分について経営側はだんまりを決めているだけといいます。賃金の不当な低さは人格の不当な差別に繋がると、女性はさらに訴えます。

働き方改革と6月1日上告審判決

多くの企業では、正規雇用と非正規雇用の間に、賃金に加えて手当、休暇など福利厚生の面で違いを設けています。もちろん、労働力や仕事の結果に明確な違いがあり、賃金を減額して合理的であると判断できるなら、それも仕方のないことかもしれません。しかし、非正規という雇用形態は、企業の経営状況に合わせた単なる調整部分となっているのが、現状です。

働き方改革への影響

現在、安倍政権が取り組んでいる「働き方改革」の一項目として、同一労働同一賃金の問題があります。今回の最高裁判決は、今後同様な問題が起きた場合、判例として長く基準にされるでしょう。

司法は司法で独自に判断を下すわけですが、三権は分立していますから結果が立法府や行政の長にとって、必ずしも好ましいものになるとは限りません。しかし、最高裁の判決はそれが司法の最終判断となるため、判例としてその後長い期間にわたり、同様の問題に基準として参考にされることでしょう。

正社員の持つ価値の変化

雇用形態が異なることで賃金や手当に格差が出ることは、現代に比べ以前の日本では顕著なことでした。

しかし、正社員に与えられる報酬や保証などの待遇が、現在と30年前とでは大きく違っています。

かつて、正社員は基本的に絶対に解雇されず、年功序列終身雇用の恩恵を受けていました。その代わり、転勤命令などの会社から命じられた業務にはすべて応じることが当たり前でした。一方、非正規雇用であれば補助業務に就くことが一般的でした。

しかし現在の正社員に、正社員としての恩恵は以前ほど残っていません。
一方で、リストラなどの人員整理は活発に行われます。

さらに、非正規雇用と正規雇用間での仕事の違いが失われつつあり、雇用形態の区別は意味を持たなくなっています。

日本の非流動的労働市場問題

日本の企業で正社員として正規雇用の座を射止めた人が、仕事のスキルや実行力だけで厚遇の正社員に選ばれている訳ではないことには、多くの労働者がお気付きでしょう。

正社員の価値を決めるもの

日本で、正社員として正規雇用の座を確保する人材が決定される理由は、その人のスキルの高さや仕事の結果によるものでなく、転勤命令に服従し自らの人生に会社の都合を取り入れてくれるような会社にとって都合の良い人材であるとか、正社員であることに満足し上司の無能を目の当たりにしても役職と能力との逆転現象に無神経でいられる性格のおかげ、などではないでしょうか?

日本の技術革新

かつて、市場における競争力とともに世界でもトップを走り続けてきた日本の技術力は、世界の中で徐々にその勢力を失いつつあります。

その理由には、人件費や生産コストの増加などさまざまな要因があるでしょうが、一つ挙げられるものが、停滞する人材の流動性です。

さらに、その原因となる終身雇用制度も成長の足かせになっているでしょう。

世界では、高い技術を持って実績を積んだ実力の高い労働者が、さらに良い条件を求めて新たな企業と労働契約を結ぶのが一般的です。

人材と企業の双方が、対等の立場で高いスキルと賃金を等価交換しているのです。

そういった技術力の正当な市場競争が、海外では労働者の競争力を高めています。それに対し、日本では同じ企業に留まり勤務年数を積み重ねることが、高い処遇を受け続けるための効率的な対策となっています。

このような状況では、高い能力を持つ労働力が活躍することで社内の技術力が流動していくことも、期待しがたくなります。

雇用契約を結んだ時点での最初の内容が総合職のキャリアコースであれば、その総合職はパートやアルバイトの指導を受けながら定型業務に就いて高い給与を受けていても構わないわけです。

同一労働同一賃金問題のまとめ

同じ人が同じ労働をして同じ成果を出した場合、同じ賃金を受け取るのは当たり前のはずです。一旦定年退職してから再雇用されたというだけの理由で、正規雇用の労働者と同じ労働内容なのに低い賃金しか支払われないことにも合理的な根拠が認められません。

定年後再雇用などの非正規雇用の賃金が低い理由には、若い新卒採用の機会が減るといったものもありますが、その点については企業側が工夫すべきことでしょう。

能力の発掘を封じてしまう、日本独自の新卒一括採用といった慣習だけに頼らず、純粋な能力の高低から応募者を序列化し、上から採用していけばいいだけの話ではないでしょうか。

その結果、高齢の労働者が実力的に負けたのであれば、それはそれで仕方ありません。
実力による判断なのだから、負けた本人も納得するでしょう。

仕事は内容に応じた賃金が支払われるべきで、同一労働同一賃金は、重要かつ基本的なことです。

そして同じ仕事を任せるなら、正規、非正規の労働形態にかかわらず賃金が同じであることも当然です。

6月1日、最高裁は、どのような結論を導き出すでしょう。正規非正規すべての社員が安心できる雇用環境を作り上げるためにも、最も適切な判断が下されるはずです。