総合診療(プライマリ・ケア)を信条とする医師、森田洋之先生に質問してみるコーナー第3弾は、現在猛威を奮っている「インフルエンザ」について特集する3回目(完結)です。

いま、全国的にインフルエンザの患者さんが急速な勢いで増えています。薬と免疫の関係や、薬の上手な飲み方って、一体どんなものなのでしょう?

今回は、ウイルスの予防法、免疫の重要性などについてお話しいただきました。

「インフルエンザ治療について1―診断キットで陰性でも診断書や薬をもらえるの?」 
「インフルエンザ治療について2―感染してるのに、なぜ薬を飲まなくていいの?」

インフルエンザウイルスって、どこにいるの?

森田「一般的なイメージだと、インフルエンザにかかってる人、つまり熱が高くて咳してるような人はウイルスを持ってて、それ以外の世界にはウイルスはいない『きれいな世界』と、そんなイメージですよね」
20161224090639名人「違うのですか?」

森田「実は、検査してみたら、インフルエンザに感染した人のうち75%は無症状だった、って言う研究結果もあります(注)」

名人「え〜!!75%…無症状の人の方が多いのですね」

森田「そう、これを不顕性感染と言います。そう考えるとインフルエンザって結構普通にその辺にありふれたもので、みんなかかっているのかも」
20161224090643名人「そうなんですね、なんかイメージと違う。でも、インフルエンザにかかってても症状が出ない、ってどういうことですか?」

森田「感染と言うのは、病原体が定着して増殖する。この両方が成り立たないと成立しないんです。つまり、インフルエンザは身体に入るけど、ワクチンや免疫力のおかげで「増殖」しない、もしくは「増殖」が抑制されてる、だから症状が出ない、または軽い症状で済んでる、実は我々が生活している街の中にもそういう人が結構居る、そういうことなんでしょうね」

名人「そうなんですか、インフルエンザって、その辺にゴロゴロいるし、体内にも入るけど、体内で増殖して熱が出たりするかは別ってことですね」

森田「そうですね。意外にウイルスや菌と人間って共存しているんですね。冬になって、気温や湿度の関係で日本全体でウイルスの量が増える、たまたま体調を崩して免疫力が衰えてくる人もいる、そんなウイルス量と免疫力のバランスの問題で、インフルエンザの症状が決まってくるのかもしれません」

名人「なるほど」

森田「インフルのいる世界、いない世界。とパッキリ分け無いと大変!と神経質になって…時には犯人探しが始まることもあります。でも実は、意外にウイルスを完全に排除することってかなり困難。だから、「その辺にインフルは居る、ある程度のウイルス量なら免疫で対処できる」そんな前提を理解しつつ、
それでも出来る限りウイルスが入ってこないように…

インフルエンザについて大事なこと5つ

1 こまめに手を洗う(アルコール消毒もOK)
2 マスクをする(くしゃみをする時は人にうつさないよう)
3 近づかない(インフルの症状がある人はウイルスを大量に持っているだろうから)
4 あらかじめワクチンを打つ
5 規則正しい生活する

などで免疫力をしっかり付けておきましょう!!そんな風に、上手に怖がる感じの方ほうがいいかと」

名人「なるほど!ウイルスの量と免疫力のバランスの問題ですね。結局、大事なのは出来る範囲での手洗いやマスク、自分の体力、免疫力ってことなのか。当たり前なことですね」

森田「そう、結局は当たり前のことなんです」

名人「免疫力アップに、ドリンク剤でも買ってみようかな…」

免疫力アップに効果的なものって何?

森田「免疫を抑制する薬はありますけど。免疫をアップする薬は医学的には残念ながらまだないんです。そんな素晴らしい薬が本当にあったら厚労省がとっくに薬として認可してますし。免疫がしっかり働いてくれるのを期待するなら、安静・休養・栄養、こんな普通のことくらいしか分かってないんです」

 

―インフルエンザに感染しているのに薬を飲まなくてもいいという理由は、そもそも回復は自分の免疫力によるもので、薬はウイルスの増殖を抑えるといった役割を担うものだからです。

もちろん、回復に至るまでの症状を緩和するために薬は有用であり、処方も大切なことです。しかし、最終的にインフルエンザウイルスをやっつけるのは自分の免疫力なのだと自覚し、もしも感染してしまったら「安静・休養・栄養」に努める必要があるでしょう。(インフルエンザ治療について全3話・完)

(注)Hayward AC.et.al., Comparative community burden and severity of seasonal and pandemic influenza: results of the Flu Watch cohort study, Lancet Respir Med. 2014 Jun;2(6):445-54. PMID: 24717637

ワクチン非摂取の2,737人の血清で、流行シーズンの前後のインフルエンザ抗体価を測定したところ、18%で抗体価が4倍に上昇しておりインフルエンザに感染していたと考えられた。毎週の電話聞き取り調査により、そのうち75%は無症状だったと推測された。

森田洋之先生の意見はこちらに詳しく載っております。

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