朝のバス停で、いつもと同じバスを待っていました。
到着したバスに乗り込み、しばらく経ってひと息ついて、斜め前方を見ると車椅子ユーザーが先に乗っています。

その方は付き添いの方と2人組で交通機関やデパート、書店、飲食店のバリアフリー対策について話し合いの様子。

彼らの話題の1つに、「全てのバスが車椅子に対応しているわけではない」というものがありました。

鹿児島の公営バスには「低床式バス」というものがあり、低く設置された乗降口小さなスロープを運転士が手動でセットし、車椅子ユーザーが乗り降りしやすいよう、設計に工夫が凝らされています。

すべての便が低床式バスというわけではない

これなら合理的配慮にも適ったバスだと思いますが、全てのバスが低床式というわけではないのです。

通常の運行間隔なら、短くて5分以下、長くて20分、次のバスを待ちますが、低床式にしか乗れない方はバスの時刻表で低床式バスを調べ、わざわざ交通局に電話で問い合わせて低床式バスの運行時刻に自分の行動時間を合わせなくてはなりません。

このような運行状況が、完ぺきに「合理的配慮」を満たしているのか否かについては疑問の残るところです。

お年寄りにはキツイ、高くて急な乗り口階段

鹿児島は主に、市営と民営それぞれ1社ずつのバス会社が中心となって運行しています。

ある民間のバスは、わずか3段の昇降口ながら1段の高さが極めて高く、小柄で足腰の弱ったご高齢の方は乗るのも一苦労といった車両があります。

さらに、運動障害のある方なども四肢が思い通りに動かないため、乗り降りに苦労しています。

合理的配慮には該当しないかもしれませんが、ダイバーシティユニバーサルデザインを推進する政府の方針とは逆行しているように思います。

おそらくは予算不足、利益の問題

たとえば、鹿児島市の公営バス会社が、運行車両を今からすべて低床式に変更した場合、莫大な費用がかかるでしょう。

年度によるものの、鹿児島市の交通局は財政的に若干厳しい状況にあり、それが数年続いています。バスの本数は過疎化した路線を中心に便の減少が続き、運賃も度々上がっています。

しかし、それでも収支が好調という訳ではありません。

そのような中、完ぺきなバリアフリーを要求すると、路線によっては運行そのものがストップしてしまうかもしれません。わたしが耳にした、先に同乗していた車椅子ユーザーの方が提案していたことは、もっと現実味の高いものでした。

通常、車椅子のまま乗車される方は、走行に合わせて前に転倒しないよう優先席にタイヤと体を固定します。わたしがバス車内で耳にした会話の内容は、「バスの走行する反対方向に顔が向くように席を回転して設置してくれたらいいのに」というものでした。

すると、車椅子ユーザーは前方の景色を楽しめなくなりますが、転倒の危険性はずいぶんと軽減されます。

仮にバスが急ブレーキをかけて前方につんのめっても、その方向には車椅子の背面が前の席にピタリと合わさっているので、後ろ向きに倒れる危険性は低いのです。

路線バスの全線バリアフリー対応は、特に低床車両なら最善の方法だと思います。しかし、健全な経営で従業員の生活を守るのも経営者の仕事です。

もちろん、障害者が自分の権利を懸命に訴えることは今後も必要なことです。

むしろ、現代は世間との共存を障害者の側から提案していくべき時代だといえるでしょう。あたり前の意見を、話し手も聴き手も、何のわだかまりもなく受け入れることができれば、バリアフリーについてこの国はまた一段ステップアップするのではないかと思うのです