2026/3/10:フリーペーパーvol.120発刊!

現役医師が描く“静かな感動”──夏川草介『スピノザの診察室』を読む

医療ドラマのような派手さはない。
奇跡も、陰謀も、絶叫もない。
それでもページをめくるたび、胸の奥にじんわりと灯りがともる——。
そんな読後感を残してくれるのが、『神様のカルテ』シリーズで有名な夏川草介さんの小説 『スピノザの診察室』 です。

「スピノザの診察室」とは?

2023年に水鈴社から刊行され、2024年本屋大賞にもノミネートされた話題作。
本作は、現役医師である著者が20年以上の臨床経験をもとに、「人の幸せとは何か」を静かに、丁寧に描いた物語です。

物語の中心にいるのは、“マチ先生”こと雄町哲郎

主人公の雄町哲郎(おまち てつろう)は、京都の町中にある地域病院で働く内科医。
かつては大学病院で難手術を次々と成功させた凄腕医師でしたが、最愛の妹を亡くし、残された甥・龍之介と暮らすために地域医療の道を選びます。
そんな哲郎のもとに、大学准教授の花垣が愛弟子・南茉莉を“研修”という名目で送り込むところから物語は動き出します。

派手なドラマはない。それでも心に残る理由

夏川さんは本書について、こう語っています。

医療が題材ですが「奇跡」は起きません。
腹黒い教授たちの権力闘争もないし、医者が「帰ってこい!」と絶叫しながら心臓マッサージをすることもない。
しかし、奇跡や陰謀や絶叫よりもはるかに大切なことを書き記しました。

本作が描くのは、“人が人を支える”という、ごく当たり前で、しかし最も大切な営み。
患者の最期に寄り添う医師の姿。
困難に対して怒りや暴力ではなく、勇気と誇りと優しさで向き合う人々の姿。
その静かな強さが、読む人の心に深く染み込んでいきます。

タイトルに込められた“スピノザ”の意味

タイトルにある「スピノザ」とは、17世紀の哲学者バールーフ・デ・スピノザのこと。
彼の思想は「感情の理解」「心の自由」を重視するもので、作中でも哲郎の生き方や医療観に影響を与える重要なモチーフとなっています。
医療小説でありながら、どこか哲学的な余韻を残すのはこのためです。

映画化が決定

水鈴社のプレスリリースによると、『スピノザの診察室』は 2024年本屋大賞第4位の勢いもあり、映画化が決定しています。
まだ公開日やキャストは発表されていませんが、誰がキャスティングされるか、今からとても楽しみです。

こんな人におすすめ

• 医療ドラマの“派手さ”よりも、人間ドラマの“深さ”を味わいたい
• 静かに心が温まる物語を読みたい
• 『神様のカルテ』シリーズが好き

まとめ:希望の灯りをともす物語

『スピノザの診察室』は、“命と向き合う”という重いテーマを扱いながら、読後には不思議と心が軽くなる作品です。
今の時代だからこそ読みたい、優しさと希望に満ちた医療小説。

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