『誓いじゃないけど僕は思った』
エッセイ
「くまさん、くまさん大変です!」
業務後、楽しくおしゃべりしていた女の子が急に焦り出した。いったい何だというのだ。
「くまさん出ちゃってます。“意図せずかっこいいポーズ”がでちゃってます」
そんな馬鹿な。私は自分のポーズを見た。
でちゃっていた。ヨガの「木のポーズ」みたいなのがでちゃっていた。
また別の日。休憩時間にある女の子と雑談をしていたら例の女の子が駆け寄ってきた。
「くまさん大変です。また出ちゃってます」
私はまた自分の体勢を見る。
また出ちゃってた。女の子に打ち明ける。
「信じてもらえないかもしれないけど、無意識にかっこいいポーズが出ちゃうんだ」
女の子が微笑む。
「わかってます。無意識に、“意図せずかっこいいポーズ”がでちゃうんですよね。でも、それ本当にやめたほうがいいですよ」
わかっている。わかってはいるのだ。しかし、自分の無意識を自覚するのは難しい。その人の無意識の行動に気づけるのはいつも他人なのだ。私はこれまで何人の女の子の前で意図せずかっこいいポーズをとってしまっていたのだろうか。
先日
ーー先日、姉一家が遊びに来た。談笑する姉と姪を眺めながら、私はやはり人の無自覚に気づけるのはいつも他人なのだと思った。
受け継がれている。そう思った。なんだかすごく嬉しくなった。これからもかっこいいポーズを続けていこう。誓いじゃないけど僕は思った。
『誓いじゃないけど僕は思った』は、中学生の頃好きだった女の子を(それ以来会ってもいないのに)7年も好きでいつづける男の話だ。
こう書くと、純粋さよりも狂気を感じる人が多いと思うが、スポーツや何かの挫折など、長い年月を経ても囚われてる(惹かれている)ことはあるように思う。それがたまたま恋愛だったと考えると、そこまで特殊なことではないのかもしれない。
最後にちゃんと本の感想を書くことで、この狂気じみたエッセイから読者が離れないことを祈る。
このエッセイで紹介した本
『誓いじゃないけど僕は思った』3つの短編集『青空チェリー』豊島ミホ/著より
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