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統合失調症の漫画「わが家の母はビョーキです」の紹介

Medical image of female doctors and male patients examined on the questionnaire

入院中に何度も救われた漫画

私が23歳で閉鎖病棟に入院していたとき、病棟に置いてあった漫画によって救われた。その漫画の名前とは『わが家の母はビョーキです』(著書:中村ユキ)。

統合失調症の母を持つ「中村ユキ」さんの自伝的な漫画だ。悲しみと喜びの入り交じるこの漫画は、統合失調症の当事者家族にしか書けないあるある満載がたくさん散りばめられている。

入院中、私にとってこの漫画は、暗かった日々の中で唯一の光。苦しくて、苦しくて、しんどかった時期にこの漫画はそっと寄り添ってくれるような存在だった。

今回は、私が何度も救われることとなった漫画「わが家の母はビョーキです」の紹介をする。

統合失調症の母と共に歩いた日々

作者の中村ユキさんは母が23歳のときに生まれ、その母は27歳で統合失調症を発症する。定職を持たない夫からのDVに脅え、ストレスがたまった母は幻聴や幻視を見るようになった。

発病から20年、診断が未確定だったために何度も翻弄され、何度も傷ついてきた中村さん母子。

ユキさんの母は、統合失調症で幻覚や幻視が酷い時に何度も死にそうになり、パチンコ依存症やアルコール依存症に溺れ、閉鎖病棟に入退院を繰り返すようになる。

そんな状況の中、ユキさんには夢があった。それは漫画家になるという夢だ。過酷な環境の中、ユキさんは21歳の時に漫画家を志す。

こうして生まれた統合失調症の家族による当事者漫画

「消えたいね」
正気に戻った母と何回くらいこのコトバを口にしただろうか。
「消えたいね」は「死にたい」とは違う……
「存在しない平安」なのです

このくだりを読んで私は何度も頷いた。こういうモヤモヤや希死念慮は入院中もそして、今もある。『死にたい』って云うけど、別に死にたい訳じゃないんだ。死にたいんじゃなくて、「この状況から逃れたい」と云うほうがしっくりくる。

ユキさんは、お母さんの入退院で何度も世話を焼き、ヤングケアラーとして何度も苦労を背負って来たからこそ、こんな言葉が吐けたのだろう。

15万部も売れた統合失調症の漫画に

統合失調症は約100人に1人の割合でかかります

患者数はガンとほとんど変わらない

暗い闘病記なのに、中村ユキさんの温かな筆致のおかげで、読後感はさほど暗くならない。この漫画は、統合失調症の啓発にも理解に役に立っている。

統合失調症は昔「精神分裂病」と言われ、「むやみやたらに怖がられていた病気だったが、実は100人中1人かかるほどよくありふれた病気なのだ」と、漫画の中でピックアップされている。

この漫画を病棟で読んで、私の心は何度も軽くなっていった。私の病状は統合失調症ではなかったものの、同じような精神疾患の当事者として同感するシーンが多かったからこそ、この漫画には感謝してもし尽せない。

現代、統合失調症の薬は「向精神薬」や「抗不安薬」など画期的なものが開発され、薬さえコントロールすれば寛解する時代になっている。

100人のうち1人の当事者がいる統合失調症。この漫画は、そんな当事者のために一役買う存在となる。

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