日本が産んだ革命的ロボットアニメ
超電磁マシーン・ボルテスV(ファイブ)は1977年6月4日〜1978年3月25日まで日本で放送された全40話のアニメ。そして1978年5月5日にフィリピンでも放送されましたが、まさか今後のフィリピンの国民と政治に多大な影響を及ぼし、現在まで愛されるアニメに成るとは当時は夢にも思わなかったでしょう。「アニメくらいでそんな大げさな…」と思われるかもしれませんが、これからお伝えしていく解説でその経緯を知っていただければと思います。
フィリピンで実写リメイクされるほどのボルテスV愛
1978年〜2023年まで約45年の時を超えて、ボルテスVがフィリピン制作TVドラマによって実写リメイク化されることになりました。正式発表の公式トレーラーはこちらになります。
ボルテスVレガシー(全80話予定)というタイトルで2023年1月1日にメガ公開されました。その名にふさわしい再現度の高さは映像を観れば一目瞭然、世界中から注目されています。
ボルテスVとは?その物語や世界観
遠い宇宙からプリンス・ハイネル率いるボアザン星の侵略軍が地球に飛来し危機が訪れる。その侵略に備えて特訓していた主人公・剛健一をはじめとする剛三兄弟、峰一平、岡めぐみの5人の仲間。それに併せて密かに建造されていた5台のメカが合体し1体のロボットとなる、それが【超電磁マシーン・ボルテスV】そして侵略軍から地球を守るために戦うという物語。
ここまでだとごくありふれたロボットアニメですが、ボルテスVにはある特色があります。といいますのも
ボアザン星というのがボルテスVの世界観におけるテーマであり、現実社会に向けた風刺となっていて、フィリピン国家に大きな変革を与えるヒントとなっていきます。というのも、ボアザン星人には角が生えているのですが角が生えていない種族は下等だとみなしており、ボアザン星が地球を侵略するのも下等な種族を支配するためという優劣的な思想からです。
ただボアザン星人の中にはそんな格差別と支配に抵抗する反乱軍もいることが判明します。そこから物語の後半は大きく展開が変わり、防戦一方だったボルテスチームは反乱軍の協力で逆にボアザン星へ侵攻することに。そしてボアザン星の差別に対する革命と、ボアザン星による他の星々への支配から解放するための戦いという二重の意味をもって物語は終局へ。
人間関係も複雑なのですが、もし興味があれば新旧の作品などで確かめてみてください。
余談としてはボルテスチームのひとりである剛大次郎というキャラクターは鹿児島弁です。
さて、ここまでをまとめますとロボットアニメにしてはとても思想が色濃い内容なので当時の日本人の子供には正直ウケが悪くイマイチでした。ところが、フィリピン人にとってその内容は当時の政治状況と重なったことや、悪循環をなんとかしたいという改革意識が芽生えるキッカケとなって、フィリピンの子供にとっては文字通り革命的なアニメとなりました。ボルテスVの世界観と現実問題を絡めた詳しい出来事はこのあとの解説でお伝えします。
実際にフィリピンで革命を起こしたアニメ
ボルテスVが放送された1978年フィリピンはマルコス独裁政権という苦難の時代でした。
私腹を肥やす独裁で政治家はもちろん警察も腐敗しきってフィリピン国民は苦しみました。
そんな状況で放送されたボルテスVはなんと視聴率58%という熱狂的なものとなりました。
なぜそうなったかというと、物語の中での独裁政権や革命意識に共感を抱いたからでした。
その内容が反政府的だということでマルコスは1978年8月ボルテスVを放送中止しました。
しかしそのことが引き金になって反感が高まり革命に繋がっていきます。そして1986年2月、主にボルテスVを見ていた世代によりエドゥサ革命が勃発。革命は見事に成功しマルコス独裁政権は崩壊してゆき、約20年に及ぶ苦しみからフィリピン国民は解放されました。
その後、ボルテスVは再放送されてその主題歌を歌っていた堀江美都子は国賓扱いとされてその主題歌はフィリピン陸軍の軍歌となりボルテスVは国家に影響した作品となりました。
信じられない話のようですが、調べてみるとわかります。そういった出来事があったことを知ると果たしてアニメの影響力を軽視していいものか?と考えさせられることがあります。アニメの中に政治や戦争や差別などの重いテーマを盛り込んだボルテスVの影響によって、のちのち機動戦士ガンダムなどの現実味のあるアニメが誕生していきました。子どもの頃とは違う感覚で、大人になっても改めて見返したくなるようなテーマ性だからだと思います。
自分が体験した日本に対するフィリピンの想い
自分が小学中学の頃、夏休みでたまに家族でフィリピンに里帰りすることがありました。
その時に決まって日本のアニメのことを聞かれます。当時はドラゴンボールやセーラームーンなどが流行ってたのでその話をしてあげると喜びましたが、ボルテスVのことを聞かれた時は自分がよくわかっていなかったので答えられないとガッカリしていました。中学3年生になった時には日本でボルテスVの再放送を見て知ったので、フィリピンの子どもたちに話してあげると目をキラキラさせて聞いて、だんだんと大人たちまで話に混ざって真剣な人もいました。
やがてボルテスVの主題歌を現地語や英語ではなく「日本語で歌ってほしい」とリクエストがあったのでうろ覚えながら歌ってあげると、カタコトで歌マネしたり大人たちは懐かしさで感極まったりしていました。自分は子どもながらに「日本のことをそんなに好きでいてくれて嬉しいな」という想いで日本に帰国すると、日本では目まぐるしい流行でボルテスVどころではなく、なんだかやるせない気持ちになってしまったのをいまでも覚えています。
実際にフィリピンの母国語ではなく日本語で原曲そのままにオープニング曲として歌っているものがこちらです。
私が当時に感じていたボルテスVを通したフィリピンから日本へのリスペクトは本物だったんだと感動しました!
2023年になった現在、ボルテスV実写リメイク化という形で日本への感謝とリスペクトを伝承し表現する形になったというのは、とても素晴らしいことだと思います。物語の内容が革命ということなので、今後の世界において良い革命になる暗示になればと思います。最後にひとつお伝えしたいのは、現在フィリピンの大統領はマルコス大統領の息子という…皮肉というか因果ということも知っていただいてこの解説を終えます。ありがとうございました。
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