リアルで忠実な真の精神医療漫画
最近の漫画ってレベル高いな、と感心した漫画でもある、『Shrink ~精神科医ヨワイ~』は驚くほど、リアルで漫画にありがちな、ショッキング描写ばかりの精神医療ではない、患者さんや当事者にとっても忠実で 真摯な漫画だ。
漫画で精神医療を描くとなると、犯罪暴露のような誤解を招くような描写だったり、犯罪者予備軍のように描かれたりして、精神疾患を描く漫画を敬遠していた時期もあった私ですら、この漫画は本当に欲しかった漫画そのものだった。
Shrink〜精神科医ヨワイ〜[漫画公式サイト/最新情報・試し読み]|
集英社グランドジャンプ公式サイト (shueisha.co.jp)
ハッピーエンドで終わるストーリー
精神科医の弱井先生たちを中心に展開される、この漫画は基本、各章の登場人物たち、患者たちの行く末は、ハッピーエンドで終わる。玉石混交の情報が入り乱れる現代社会において、原作者の七海さんが、自身の家族が精神疾患を発症して、情報収集の難しさを痛感したことが、本作を生むきっかけになったという。精神医療はとくに情報収集の有無がその後の治療法に影響を与えることはよく知られている。
冒頭、弱井先生はこんな発言をする。
「自宅でできる心のケアについて」|七海仁 #note https://t.co/zr7g2C1hrL
外出自粛やテレワークが続く中「自宅でできる心のケア」について、精神科医、心理士、接骨院の先生方にアドバイスを頂いてまとめました。
すでにご存知の内容が多いかとは思いますが、ひとつでもご参考になれば嬉しいです。— 七海仁Shrink⑨11/17発売 (@jin7seas) April 25, 2020
隠れ精神病大国である日本
「精神病患者が多いけど自殺は少ない国。精神病患者は少ないけど自殺は多い国。(中略)昨年の自殺者は20840人。15~39歳の年代の死因の第1位は自殺。こんな国は先進国では日本だけです。日本は隠れ精神病大国です」
昨今、若い世代を中心に自殺者数が増加に転じたニュースは、コロナ禍になってからよく耳にするようになった。特に著名人の自死でメンタルケアの重要性は多く語られるようになった。
この弱井先生の発言で、トラウマ治療を受けている私もまた肩の荷が下りたような気がした。精神科に対するハードルは十数年前からすれば敷居が下がったとはいえ、まだまだ多くの行きにくさが存在するのは周知の事実だろう。
弱井先生はその敬遠する風潮がむしろ、精神状況を悪化させ、多くの人への支援が足りていないのだ、と力説する。
この漫画は本当にすごい
私は解離性障害と複雑性PTSDのため、『EMDR治療』を受けているのだが、まだまだ世の中には知られていない、『EMDR』をこの漫画では紹介している。それはPTSD編で登場し、最先端のトラウマ治療について、詳しく、なおかつ分かりやすく、親しみのある画風で紹介されている。
原作者の七海さんは毎回、専門機関や当事者の会などで取材し、リサーチを行ってから原作の執筆に当たっている。そのきめ細やかな取材で培われたストーリー展開は無理もなく、長年、精神科に通院している私が読んでも、何の違和感もなかった。
精神疾患は増えたのか?人気マンガが、いまコロナを描く理由https://t.co/buAyjYcag8
最後は国立精神・神経医療研究センター病院コロナ病棟リーダーの有賀先生と一緒に、コロナ禍における精神医療や医療従事者の皆様への思いについてお話させていただきました。
よろしくお願いします🤲 https://t.co/rowhFzTgBE pic.twitter.com/lTEgHrSjtX
— 七海仁Shrink⑨11/17発売 (@jin7seas) November 25, 2022
紹介されている精神疾患
現在、Shrinkでは8巻までが刊行されている。これまで紹介された精神疾患はパニック障害、うつ病、大人の発達障害、境界性パーソナリティー障害、睡眠障害、産後うつ病、双極性障害、摂食障害、アルコール依存症、PTSDなど多岐にわたっている。ちなみに本作はゴルゴ13の原作者であるさいとうたかおさんの功績をたたえ、設立された『さいとうたかお賞』を受賞した。
私は刊行1冊目からのファンだったのでこの本が多くの人に読まれ、賞賛を受けているのを知って、とても嬉しかった。
「最近、疲れたなあ……」と思う方にもオススメです。