修道院へのイメージ
修道院と聞くとあまりイメージがわかない人が多いと思う。私もそうだ。教会はなんとなくわかる。よく趣味で神社やお寺を訪ねるのだが、そこの場所の雰囲気とは少し違うように感じていた。4年前にある本と出会ってから、修道院への、祈ることへのイメージが変わった。そんな私が修道院のお菓子を買いに行った話をしたいと思う。
修道院への憧れ
私が修道院に興味を持ったのは、2年前に『修道院のお菓子と手仕事』(早川茉莉 柊こずえ著 大和書房)を手に取ったときだった。淡いピンク色の表紙に惹かれ、パラリとページをめくった。全国の修道院のお菓子や手作り品、修道院付近のお店、そして普段知ることのできない俗世間から離れた生活を送る修道士たち…そんな静かな祈りのコミュニティがあること、また修道院でものが作られ、それらが販売されているということが驚きだった。また同時に魅力的だった。
修道院の手作り品
神社ではお守りや破魔矢などが売られているが、修道院でそういったものが売られていることは意外だった。スリッパ、石鹸、蜜蝋ろうそく、ポストカード、ハーブソルト、刺し子ふきん…眺めているだけで心が穏やかになるような品々。
その中でも心を惹かれたのが、修道院で作られているお菓子だった。有機栽培、無農薬の原材料を使いていねいに作られたお菓子たち。市販のものとは違い、添加物も入っていない。かわいらしい形をした焼き菓子や、季節のフルーツを使った期間限定のジャムやゼリー。心惹かれるお菓子たちを眺めていると、味わってみたくなった。
といっても修道院は教会と比べてどこにでもあるというわけでない。近場にないか調べてみると鹿児島県霧島市溝辺町に一軒あった。ただ、神聖な祈りの場である修道院を訪ねるのは少し気後れした。お菓子のページを目に焼き付けるように眺めていると、修道院のお菓子を取り扱っている道の駅があった。霧島市溝辺町の「溝辺町物産館 よこでーろ」。私は車を走らせた。
修道院のお菓子を求めて
「溝辺町物産館 よこでーろ」は鹿児島空港へ行く途中にある物産館。そこで取り扱っているお菓子は、聖血礼拝修道会聖ヨゼフ修道院のレターレ(タルト)とショートブレッド。聞きなれない名前を聞いて、なんだかおしゃれだなと思った。
物産館に着いて、店内へ入る。空港近くということもあってか、にぎわっていた。いろいろな商品を横目にお菓子を探した。たくさんの商品の中、店内の冷蔵品コーナーの一角にぽつんとお目当てのものが置いてあった。そっと手に取り、会計を済ましていそいそと車に戻った。
お菓子のパッケージには原材料表示シールと、シンプルな修道院のカードが入っていた。まずはレターレ。丸い花の形をした可愛らしいお菓子。口に入れた瞬間ふわりと甘い香りがした。上品な甘さでくどくない。ショートブレッドは口の中でホロホロと崩れた。素材の甘さが引き立っていて、いくらでも食べられそうだった。どちらのお菓子も、ふんわりあまくてやさしい味わいだった。
修道院のお菓子は市販されているものとは違う、特別な何かを感じた。それは味かもしれないし、お菓子に込められた想いかもしれない。小さい頃に母親が作ってくれたおやつを食べた時のような気持ち。そういった懐かしさやあたたかさ…
修道院を巡る旅をしてみたい、そんなことがふと頭に浮かんだ。修道士たちと同じ生活を送れる修道院もあるそうなので、いつか行ってみたいと思う。
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