プリックテスト、そして食事制限の日々はつづく
先日、人生初のアナフィラキシーショックをおこしました。集中治療室で長時間過ごし、皮膚科で診察をうけたのは3日目の午後でした。
幼少期からアレルギー性鼻炎・結膜炎、花粉症をわずらい、過去には耳鼻科のスクラッチテストですべての項目に強い陽性反応、アトピー性皮膚炎、ぜん息もあります。食べ物も何かにアレルギーがあると思っていましたが、あまりに頻度も種類も多いので、漠然とダメそうなものを気にしながら、多少の症状は我慢して生活してきました。
アナフィラキシーショック後の、血液検査、特異的IgE抗体検査ではすべて陰性。無反応でした。
そこで『プリックテスト』というアレルギー検査を受けることになります。
ざっくり
アナフィラキシーショックとその後の検査
アナフィラキシーショック以降の検査期間は自分が作ったもの以外は食べられず、どれをどのくらいなら食べられるかも自分で実験しながら記録する生活です。もともと体調の悪いことも多いので、制限のあるもの以外でバランス良く食事を作り続けるのは負担が大きく、疲弊します。
以前よりも健康には良い食生活かもしれませんが、いろいろな食材を少しずつ種類は多く、手抜きにアレルギー対応食材を使えば、金銭的にも厳しいものです。
前回書いたアナフィラキシーショック時の記事を振り返り
前回の記事では、私が経験した『食物アレルギーによるアナフィラキシーショック』について書きました。
簡単にまとめると、
- 日曜日の夕食後にアナフィラキシーを起こす
- 翌月曜、電話で受診先を決めるまでに時間がかかる
- 月曜夕方、大きな病院の集中治療室で20時間以上経過観察
- 火曜日午後、同病院 皮膚科を受診
- アドレナリン注射器を処方され、常に持ち歩くことになる
- 血液検査(特異IgE抗体の同定)のために採血し、翌週再受診
という内容でした。
食事制限だらけ!アナフィラキシーショック後の長い検査期間が大変
次週の診察まで、アナフィラキシー時に食べた食物と、アレルギーがあると思う食物をすべて避けるように言われました。
アナフィラキシー時に食べていた食物には卵、白米・麦類までふくまれています。さらに自分でアレルギー疑惑を持つ食物は、乳製品、魚介類の一部、アクが強めの野菜・根菜類の一部、果物の一部…と幅広いのです。
アレルギー反応を示す食物を、今後まったく食べてはいけないことではないのはわかっていますが、今はできるだけアナフィラキシーをおこしたくありませんし、医師に避けて生活をするようにいわれている期間は、真面目に守ろうと思いました。
『なにを食べたら良いのかわからない…』
自宅に帰って冷静になると、なにを食べて良いのかわからない状態でした。日曜日夜のアナフィラキシーショックから、火曜夕方に帰るまで、食事は無しでした。疲れているから何か食べて眠りたいのに、簡単でお腹いっぱいになるものが頭に浮かびません。途方にくれてしまいました。
取り急ぎ、アナフィラキシー時に食べた食物のアレルギーを調べてみました。しかし調べるほどに、大変な状況だとわかりました。
いま冷蔵庫に残っている食材で、食べて大丈夫なのものはどれだろう…。買い出しに行ったばかりの小さな冷蔵庫を開けては閉め…悩みました。
そしてけっきょく、食事を摂るのは放棄して、ふて寝しました。
しかし夜中にお腹が空いて目が覚めて、けっこう手間のかかる煮物を作っていました。咳き込みながら食べた記憶があります。朝起きて冷蔵庫を開けたら、ラップのかかった鍋ごと冷蔵庫に押し込んであり、腕には少々じんましんが出ていました。
情報収集と過去の記憶を呼び覚ます作業
調べていく内に、食物アレルギーは大きく4つの種類にわけられることがわかってきました。(※あくまでも素人の私が調べ始めた初期での感想です)
- 食物自体へのアレルギー反応
- その食物の加工により発生する物質へのアレルギーや不耐性
- 栽培や輸入の過程で使用される農薬や防虫剤などへの反応
- すでにアレルギーをもっている花粉等に似た構造の食物にアレルギー反応
過去に耳鼻科で受けたスクラッチテストでは、私はすでに多くの花粉、動植物にアレルギーがあることがわかっています。その内容や幼少期のアレルギー反応の記憶も、可能な限り思い出す作業をしました。
耳鼻科で受けたスクラッチテスト
私が15年ほど前、耳鼻科で受けた『スクラッチテスト(検査)』は、主に花粉症の種類、動植物へのアレルギーの有無を調べる検査でした。
皮膚を引っ掻いて傷をつくり、検査対象の花粉などの液剤を傷につけて反応をみる検査です。自分で用意するものは特にありませんでした。ちなみにその時の結果は、全て大きく腫れて陽性でした。
聞いたことがない植物(科)もあり、記憶が曖昧で重複しているかもしれませんが、保険診療に数千円足して、先生のおすすめの項目を受けたと思います。医師から検査後、気をつけるように言われた記憶があるものをあげます。
ヒノキ・スギ・ブタクサ・ヨモギ・イネ科・シラカンバ(白樺・ヤナギ)の花粉、い草(畳)、イヌ、ネコ、ハウスダスト、ダニ、昆虫(ゴキブリ、ガ)
他にもあったのですが、その時教えてもらったシラカンバという言葉以外で聞いたことがないものを覚えていない状態です。医師から「一生、動物は飼わないように!死んじゃうよ」と、何度も念を押されました。
花粉症に交差反応をおこす食品
今回、自分が食物アレルギーをもっていることで知った中でも一番驚いたことは、多くの食品が「花粉症が原因で食物アレルギーをおこす可能性」があることでした。
交差反応、花粉症関連食物アレルギー症候群、花粉症に合併する食物アレルギー、といったワードで検索すると、医師のサイトなどで知りたい花粉症に関する情報がわかります。
たとえばスギやヒノキの花粉症では、トマトに食物アレルギーがおこる可能性があるそうです。
あくまでも花粉症の一部の人が、食物にもアレルギー反応をおこす可能性があることが判明しているだけで、花粉症だからといって関連する食物を全く食べないようにしなければならない、という意味ではありません。医師の指示がある場合に、完全除去や摂取量の制限を守って生活することになります。
私はそれらも参考にしながら、次の診察までの間、とても食べ物に気をつけて生活しました。
採血の結果とプリックテスト
血液検査は、「特異的IgE抗体検査」という即時型アレルギーの検査でした。結果はすべて陰性(反応なし)でした。
過去にもこの検査を受けた経験があり、その際もすべて陰性だったので驚くことではありませんでした。その代わりに、TSHという甲状腺関連の数値が下がっていることが新たにわかり、別途、専門医への相談が必要になりました。
そして次週は「プリックテスト」という検査を受けることになり、説明を受けました。
プリックテストとは
次は「プリックテスト」という、即時型アレルギーに対する検査を行うことになりました。
アレルギーの原因と思われる食物を、肌に針で小さな穴をつくりながら体内に入れて、皮膚の反応をみる検査だそうです。点滴をしながら、検査時間は15分程度と言われました。
受けるための注意事項
- アナフィラキシー時の食材、アレルギー症状がでていると思う食物を自分で10個前後決めて用意し検査時に持参する
- 食物はカットして、検査がやりやすいようにタッパーか何かに入れてくる
- 小麦は粉ではなくて加工された状態のパンなどが良い
簡単な検査なようにサラッと説明されました。
しかし検査を受ける食材を決めるにあたり、私は対象が多すぎて一週間以内に決めるのは大変でした。
プリックテストの食材選定と、日々の食事を猛勉強
日常生活でアレルギーの可能性がある食物をできるだけ避け、毎食すべて慎重に自分で作る生活に苦戦していました。外食もお惣菜もお弁当も頼れず、完全に自分が作ったものだけを食べていました。
この週は自分が食べられそうな食事のことを勉強して、実験的な感覚で料理して食べ、日々の食生活と反応を記録し、プリックテストに向けてアレルギー全般のこと、検査を受けるべき食物、自分の過去のアレルギー歴なども書き出しながら猛勉強をしました。
アナフィラキシーの原因かもしれない食物だけで7個(長芋、白米、大麦、卵黃、卵白、オクラ)、他にも気になる食物はたくさんあります。
最終的に、思いあたるものを書き出して消去法で決めました。
- ふだん食べる機会が少ないものは、今回は諦める
- 「アレルギー表示義務7品目」指定食品の中でよく食べるものを残し、ほかは諦める
- 花粉症で交差反応をおこしていると思うものでよく食べるもの以外は諦める
- プリックテストに向いた加工状態の食物を残し、重複しないようにする
それでも13個になりました。捨てることになる可能性がある食材のみを買うという、切ない買物をして揃えました。
検査用に小さく切ったものをラップに包み、さらに上からアルミホイルで包み、タッパーに並べて付箋をはり、保冷剤を入れた保冷バッグにまとめて病院へ持っていきました。真夏なので、外は30度超えの季節でした。
プリックテスト当日
- いきなり点滴をはじめます(針が入らず、やり直し3回で看護師さんが交代してルートを確保)
- 心電図、血圧、脈を計測しながら点滴が入るのを待ちます
- 少し時間を置いたら用意した食材の説明をして、検査の準備をしてもらいます
私が用意していったのは、長芋、りんご、トマト、豆乳、パン、白米(炊いたもの)、バナナ、牛乳、生卵(その場で卵黄・卵白に分けてレンチンされた)、冷凍エビを解凍したもの、そば、ピーナツ粉状のもの、白ごまで14種です。
- 腕にマジックで、番号や印を書かれます
- 針を食物に刺して、なかなか強い衝撃でバシッ!バシッ!とリズムよく穴を開けていきます(食物14種分、プラス点滴で入れる生理食塩水、ヒスタミンを追加して16箇所)
その状態で、15分間置きます。左腕は点滴と計測機、右腕はマジックでいろいろ書かれた状態で動けません。
- 15分後に反応を計測(医師がミリで直径を図り、看護師さんが記録していきます)
判定結果は、その場でわかります。医師から説明を受けた後も、しばらく点滴を行いました。トータルで一時間以上かかりました。
プリックテストの結果
反応があったのは、『リンゴ・トマト・パン(グルテンではなく小麦と医師はいっていた)』の3つでした。
しかしアナフィラキシーの原因となった食物が、ハッキリと判りませんでした。特異的IgE抗体検査をさらに項目を増やして行うと言われ、採血をして次週、また結果をききに来ることになりました。
この時点で小麦のアレルギーの危険性についてと、アレルギー専門医のいる病院へ転院して検査を受けることになるだろうと言われました。
和食中心…それでも不調続き
プリックテストまでの2週間、なにを避けたらよいのかわからないながらも、それなりに食事に気をつけて生活を続けてきました。
そしてプリックテストの結果がでてからは、『リンゴ・トマト・小麦製品』も食べないように気をつけました。ケチャップやカレーも小麦のパンも食べていません。どの程度をたべて良いのかも全くわからないので、可能な限りいまは避けるのが一番だと考えました。
アナフィラキシー時の原因はまだハッキリしませんが、関連があるとすれば大麦に小麦と交差反応をおこしている可能性も考え、麦類もすべて止めています。しかし和食がよいだろうと和風の調味料で料理しても、なにかに反応していました。
目は常に腫れてかゆい、目やにが多い、お腹がはっている、食事中に喉が痛くなって咳や鼻水が出る、少しじんましんもでることもある…アレルギー症状は続いていました。
小麦が犯人だったのか?
このころ、テニスのジョコビッチ選手の食生活の本が参考になるかもしれない、と聞きました。立ち読みした際に、グルテンフリーや小麦のアレルギーのことが載っていたそうです。
私は彼が「変な食事制限にこだわっている」という印象をもっていました。『グルテンフリー』という言葉も知っていましたが、セレブ風の人達が、アレルギーでもないのに小麦製品を抜くダイエット、健康法、流行りに乗った人達の食生活のイメージでした。意識高い系ってやつですか?と言いたくなり、まったく興味がありませんでした。
でも良いかも?と教えてもらったことは、自分なりに取り入れるようにしているので、まずは本の内容が抜粋されたサイトを読んでみました。
そこに載っていた小麦製品から起こる体調不良や病気の多くが、私の持つ不調や病気に当てはまりました。誰でも当てはまるように書いてあるようにもみえますが、きちんと読んで勉強してみようと思いました。私が小麦アレルギーなのか、グルテンに耐性がないのか、まだ詳しくは判っていません。しかし身体に負担のかかる原因になっている可能性は非常に高いのではないかと考えました。
まずは全く摂らずに、どれだけ体調がよくなるかを知りたくなりました。
調味料の成分をみたら、ほとんどが小麦入りだった
いままで調べていなかった小麦由来の調味料について詳しく調べてみると、私が使っている安い調味料のほとんどに小麦由来成分が含まれていました。しょうゆ、酒、みりん、酢、だし、コンソメ、鶏ガラスープの素、チューブのしょうが・にんにく、ガーリックパウダー、ポン酢、オイスターソース、味噌などなど。
小麦とかいていなくても、デンプン、醸造酢、醸造酒、酸味料、たんぱく加水分解物、乳化剤、植物油、デキストリンで小麦由来のものがあります。
料理をするにも手持ちの基本の調味料が原因かもしれないとなれば、使うのも躊躇してしまいます。思い切ってそれらを一気に仕分けして、小麦不使用のものに変えてみようと思いました。あとで食べても大丈夫と言われたら、また考えればよいと思いました。
ハッキリ記載がないものもわけてみると、全く小麦関連の成分が入っていないのは、塩・コショウ・スパイス類だけでした。(その他にも私はリンゴとトマトの使われているものをわけました)
小麦・トマト・リンゴ不使用の製品を探す!
インターネットで調べると、様々なサイトでアレルギー対応食品、グルテンフリー対応食品や小麦不使用の食品があります。しかしバラバラで買うと送料がかかるし、なにしろ単価が高いのです。できるだけ安く済ませるために、まとめて一箇所で安く揃えられる方法を探りました。
私が参考にしたのは、大人になってから小麦アレルギーが発症した方の書いているサイトでした。高いもので良さそうなものはたくさんあります。でも継続できるような手軽なもの、それらを売っている場所の目安もなかなかわからず、そのサイトがとても参考になりました。
そしてネットスーパーで最低限のものを買って入替えました。それからは安心して使えるようになり、良いものは味がしっかりしていて、使用量を減らせば塩分カットにもなると思いました。
そして何より、アレルギー症状が出る頻度が激減しました。食生活全体が健康的になっているからかもしれませんが、一週間後くらいにふと顔がスベスベでスッキリしたことに気がついて全体を確かめてみると、目の腫れがひいて、じんましんもほとんど出ず、お腹もスッキリ、身体も痛みが楽になって肩首もやわらかくなっていました。体重は一ヶ月くらいで3キロちょっと落ちていました。
この時は、少しモチベーションが上がりました。
特異的IgE抗体検査はまた陰性
翌週、特異的IgE抗体検査の結果をききにいきました。すべて陰性でした。
いままでも陰性だったので、その後の検査のことについても自分でイメージできるように調べておきました。遅延型のアレルギーは、特異的IgE抗体検査ではでないそうです。アナフィラキシーは即時型ですが、それも反応しないことが多々あるようです。
今後はアレルギーの専門医がいる病院へ転院すること、おそらく入院して負荷検査を受けることになるだろう、と言われました。負荷検査というのは、食品を少量ずつ食べてアレルギー反応をみていく検査です。
私は偶然小麦へのアレルギー反応もみつかった流れですが、思い起こせば以前にも小麦由来成分使用で問題になった「茶のしずく石鹸」の使用で強い反応をしめしたり、餃子、天ぷらを食べてアナフィラキシー様の状態の過去もあり、引き続き詳しい検査が必要になりました。
まとめ
転院先での指示までは、アナフィラキシーのときに食べたものプラス判明した3つの食物、さらに自分で合わないと感じるものは避ける生活をするように言われました。
そして転院先を受診すると、さらにまた一ヶ月以上この食生活が続くことになります。
食べることに緊張感をもち、頭を使う生活。悩みながらすべての食べ物を自分の責任で作る。さらに少しずつ試してみる、記録する。実験的で慣れない生活がまだまだ続くことが判り、とても気持ちが落ち込んでいます。疲れていてもお腹は空きます。
鹿児島にはアレルギーに対応したレストランや、アレルギー対応食材がまとまって揃う場所が多くありません。いまおにぎりを用意して出る余裕も、おにぎりを一度に一個食べて大丈夫なのかもわかりません。コンビニのおにぎりでは調味料や保存料までわかりません。まだまだ試しに少量だけ食べた食材で、アレルギー症状が出ることもあります。
毎日この生活を投げ出したくなって、もうどうでも良いと感じたり、食べることを拒絶するときもあります。自分がキライだった、”食べ物にケチをつける面倒臭いやつ”、になってしまったことも嫌でしょうがないです。
以前は食パン一袋で100円もしなかった食生活が、手抜きに使う一食分の発芽玄米パスタとアレルギー対応ソース、これだけ600円以上…なかなかのお値段です。
少しは楽に生きられるようになりたい…ただその思いだけで頑張っていますが、一生この生活はできません。
検査で食べられる食材がわかりそれが増えれば、もう少し楽に安い食事が作れるようになるのではないかと思っていますが、とにかく疲れます。健康な人にはならなくて構わないので、たまにはスーパーのお弁当やコンビニで済ませる生活に戻りたいと感じています。工夫して、しらたきパスタを作ってみたり、発芽玄米を作ったり、幅は増えていますが期間限定ならばできる生活です。
まだまだ解明されていないことの多いアレルギー、歴史の浅い花粉症。10年後には大きく検査方法も変化して、アレルギー対応食材も安価になり、大人もある程度の治療が可能になるのではないかと思います。
今後も続くアレルギー関連の検査や生活について、記事にしていこうと思います。