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レッスンサイトを無償提供、フェンダーの明るい未来

各国で外出制限!すぐにフェンダー社がレッスンサイトを無償提供

アメリカの有名なギターメーカー、フェンダー社がコロナウィルスによる自主隔離中の人々のために、「フェンダー・プレイ」というレッスンサイト・アプリを先着10万人へ、3ヶ月間無償提供しました。これは各国で突然始まった外出制限の中、他社よりも比較的早い段階での発表でした。突然始まった自宅時間をどのように過ごすべきか途方に暮れる人々へ、オンラインレッスンの認知と、楽器の練習という大きな楽しみを与えてくれるきっかけになりました。

ピンチはチャンス!フェンダーの早い決断が外出制限中の人々へ与えた希望と商才

フェンダー・プレイは、2017年にスタートしたギター・ベース・ウクレレのレッスン動画を有料で使用出来るオンライン学習サイトです。レッスンの内容は自分で設定した楽器・ジャンル・レベルで選択できます。

外出制限中、楽器店へ出向いて購入する人が減る一方で、以前からネットを駆使した生活が中心になる事へ準備してきたフェンダーの有事での素早いレッスンサイトの無償提供は、分析力とフットワークの軽さを併せ持つ同社の、将来の顧客獲得も見込んだ攻める姿勢を表しています。

各国で自主隔離が強いられる中、この機会に自宅にずっと置いてあるギターを弾けるようになりたい人、楽しく過ごすためにネットでギターを買う人。これらの人々が継続して楽器を演奏し、レベルアップした際に購入するであろう高額の商品や演奏に必要な製品の購入が見込まれます。先着順にしたところも、無償利用者に選ばれし者、という特別感を与えるフェンダーらしさだと思いました。フェンダー社の明るい未来は、現CEOによる業績回復で既に実証済みです。

フェンダー社の歴史

世界で最初に量産型のソリッドボディのエレクトリックギター(日本で現在「エレキ」と呼ばれているギター)を作った会社です。ギブソン社は数年後に量産型のソリッドボディのレスポールモデルを出しました。この2社が世界2大エレクトリックギターメーカーと言えます。

フェンダー・プレイを試してみました

先着順ということで、発表を見てすぐに私も登録してみました。ギターを習った事がないので、基礎やレッスンの流れも勉強したかったのです。何より無料ですから試さない理由もありません。ブルースギターを選択し、初心者レベルの1から始めました。アプリはダウンロードしませんでした。

ギターの弦の押さえ方や弾き方は、正面・上からのアングルでも見ることが出来てわかりやすく、講師もMIやソーントンのレッスンで使用する音楽プログラムを使用し、教え方が上手いのです。譜面の読み方・タブ譜の読み方、指や手首のケアまで、初心者がおちいりやすい弦楽器の難点である「指が痛い、譜面が読めない」といった事も、しっかりフォローしています。

一回辺りのレッスンも平均して3分ほど。いくつかまとめて進めても良いのですが、週3日程度の推奨で、徹底して初心者が続けられるように出来ています。レッスンに使用される曲が、また渋い選択で楽しい。講師が使用するギターや、後ろに上手く飾られるギターも観ているうちに気になりますが、宣伝は一切ありません。ただし日本語ではなく英語でのレッスンです。私は英語でのカウントに合わせる方が演奏しやすく、簡単な説明で内容もわかりやすいと感じます。

初心者にやさしいフェンダー・プレイのサポートの理由

フェンダー・プレイが初心者のケアに余念がない作りには、現フェンダー社のCEOのインタビューで読んだ、ギタープレイヤーに関する分析結果がうまく反映されていると思いました。

現CEOは他業界からの抜擢ですが、彼自身もギターを愛するプレイヤーの一人です。主にナイキ、ディズニーを経て、業績が悪化していたフェンダー社をプレイヤー目線で見つめ直す一方、客観的に購入者の分析を行い、自ら各国の楽器店をまわり、「米英国内でのギター初心者の50%は女性である」ことをデータ上でハッキリとさせました。これは他社が一過性のテイラー・スウィフト現象だと言う中で(人気女性シンガーソングライターに憧れる現象)、フェンダーはそれを否定しました。なぜならテイラーの楽曲がギター中心のものから変化しても、ギターを始める女性の数は変わらないからで、誰もがスターを目指してギターを始めるわけではない、ということも意味しています。

一年続けて、楽器を生涯の共としよう

一方で購入して一年以内にやめてしまう人が多いこともわかりました。反対にギターを一年以上続けた人は、一生のものとする傾向が高いそうです。私も以前、ハーバード大学に在籍する学生たちの多くが何らかの楽器を高いレベルで演奏することをライフスキルとしていて、学内でも音楽活動がとても盛んだと聴いたことがあります。子育てが終わり、生活や時間に余裕が出来た世代が、若い頃に手の出せなかった憧れの楽器を手にし、再び音楽を楽しむ傾向も高まっています。これは経済的な余裕が戻っただけではなくて、一人の人間として自分磨きをし、人生を楽しむ事ができるアイデンティティを大切にする人が増えた、ということでもあると思います。

「ギターを習い始めて1年近く続いた人はギターを一生のものとする傾向がある」

「ギターを学ぶことが社会的に大きなトレンドになってきている」

「たくさんの人たちが新たなライフスキルとしてギターを挙げている」

「初めてギターを手にする人達の72%はライフスキル、自分磨きの為にギターを弾く」

フェンダー・プレイ登録後のサポート

レッスンを始めると、メールで進捗を数字で評価して励ましてくれます。初心者がおちいるスランプの克服に関するメールも、ちょうど良いタイミングで来ます。レッスン以外でも、簡単に弾けるレベルの曲を紹介してくれます。ギターは楽しいことを教えてくれます。私は利用していないのですが有名アーティストのレッスンや、サウンド作りのレッスン、Facebook上で仲間と演奏出来る企画や、講師による特別レッスン公開するという案内も来ています。登録者をやる気にさせ、放ったらかしにしない心配りが素晴らしいのです。練習用アプリもあります。自社製品の宣伝が無いのも心地よいです。

フェンダー・プレイの利用者統計

フェンダー社が「Fender Play」という学習アプリの利用者統計を取った際に、想定では半数は若い世代で初めてギターを手にする人でした。しかし実際は半数が中高年の再びギターを手にする利用者です。

因みに、このデジタルラーニングの年間での利用率は、新学期・新年度にやや落ち込み、米国のブラックフライデー(11月第4金曜)あたりから1月末までがピークで、予想以上に季節に左右されやすいものだそうです。

ギターだけにとどまらない、フェンダーの攻める戦略

フェンダーはアーティストのシグネチャーモデルや、新しい製品、復刻モデル、ストリーミングサービスとの連携システムなど、次々と開発・発表しています。商品開発もリニューアルの間隔を7年から4年へ引下げ、時代とニーズに合った製品を多く生み出しています。エレクトリックギターを軸にアコースティックギター・ベース・ウクレレ・エフェクター・アンプなど、幅広いのです。ウクレレの販売数も安定して増加していますが、ヘッドがフェンダーギターのヘッド状にしてあるなど、他社との差別化とフェンダーファンが欲しくなるような、軸がズレていない製品作りです。

マーケティング予算も、従来の4%から10%へ引き上げ、ますますデータ分析に裏付けられた、的を得たサービスが期待できます。

アジアパシフィック地域に力を入れるフェンダー

近年は、特にアジアパシフィック地域での業績アップが著しく、日本でも15年から販売代理店を通さず、自社運営体制になりました。2名からスタートし、100名体制になったそうです。

今年1月のNAAM(米国最大の楽器ショウ)では、Charのシグネチャー・マスタングモデルを発表し(日本人有名ギターリスト、チャーのモデル)、本人がその良さを説明しながら、演奏を披露する場面もありました。特にアジアパシフィック地域の売上げがグローバルの成長を上回っていることから、日本にも力を入れているのがわかります。

時代とニーズに合わせた製品の開発

エレキギター、アコースティックギター、ウクレレの購入者が増えていることを、フェンダー社では2つの理由があるとしています。

一つは音楽ストリーミングサービスの成長。ストリーミングサービスを使用するユーザーは、ゴールドマン・サックスの予測では3年で7億人まで伸び、30年には10億人を超えるといわれています。新しい音楽もオールディーズも、いつでも気軽に音楽に触れることができて身近になりました。実際に私もSpotifyを愛用しています。演奏してみたい曲が流れたらその曲をチェックしておき、時間がある時に改めて聴いて練習しています。フェンダーは今後、ストリーミングサービスとコード譜を連携させたサービスを提供するようです。そうなったら一日中楽器を弾きたくなりそうです。

もう一つはライブに行く人の増加。実際にフェスやライブではギターやベース演奏が主体になり、それを目の当たりにして楽器に挑戦する人が増えている、ということらしいです。フェンダーはアンプ、エフェクターやサプライ製品など楽器本体以外の開発にも力を入れているので、幅広い市場を持っています。私も好きなブルースギター弾きが、古いフェンダーアンプ直結で使用しているのを見て、とても憧れています。

ウクレレの爆発的人気もフェンダー社を支える

ウクレレは手軽に購入できる価格帯からあり、何よりサイズ感が良いです。自宅に置いて邪魔にならず、手軽に手に取れ、飾りたくなる良い大きさです。私もハワイのみやげ品として貰ったウクレレを壁からかけて飾り、時々手にしています。子供の初めての楽器にも良いと思います。フェンダー社もギター好きの心を刺激するデザインで、人気ウクレレシンガーのシグネチャーモデルを販売しています。海外では小さな子供たちにもウクレレ人気は浸透していき、ウクレレの爆発的人気は安定して衰えを知らないようです。いま一番注目されているアーティストとも言えるビリー・アイリッシュも、素敵なウクレレを弾きますね。日本では少し馬鹿にされがちなウクレレでしたが、いまではすっかりオシャレな人が弾く印象です。

低迷から復活したフェンダー社、低迷して規模縮小するギブソン社、2大メーカーの違い

エレキギターの2大メーカー、フェンダーとギブソン。どんなに衰退しても、他社に吸収されてでも、ブランドは残るとおもいます。しかし変化を恐れ規模縮小していくギブソンの低迷と、業績回復したフェンダーには明確な違いがあります。

現在のフェンダー社とギブソン社の違い

低迷からフェンダーを救ったCEOは語っています。「いいブランドは、いい商品の積み重ねがあります。ナイキなどは、マーケティングに優れた会社と思われるかもしれないが、いいプロダクトを作り続けてきたということです。いいプロダクトがあってこそ、マーケティングが生きてくる。フェンダーは、大変優れたプロダクトを生み出してきた会社だが、グレートカンパニーとはまだいいたくない。まだまだ成長する、良くなる要素が多くあると信じています。」

ギブソンとフェンダーの歩む路の違いは、客観的分析による時代へのマッチ力だと思います。時代が自分たちをキャッチするのを待つだけでは、その間に企業が衰退してしまいます。ギブソンを弾くスーパースターの出現を待ち、良い製品を作り続けるだけでは、いまの時代は他社に負けてしまいます。

フェンダー・プレイをやって良かった点

フェンダー社が、ミュージシャンでもある有名な神経外科医と協力して行った調査では、楽器を演奏することは人の情緒や心理に良い作用をもたらすことがわかったそうです。自信が持てるようになる・より忍耐強くなり意欲が湧く、そしてなぜか道徳心も鍛えられるそうです。

私がフェンダー・プレイをやって良かったのは、自分が意外に高いレベルであることを知り自信が付いたこと、ギターレッスンの一般的な流れを知ることが出来たこと、英語でのセッションで使われるであろう言葉に触れられたこと、進捗を励まし合う仲間がSNS上で出来たこと。終了間近のレベル5なので、終わったら何か面白いサポートがありそうで楽しみです。残念だったのは、もう少し高いレベルが練習したかった点です。しかし基礎が出来ていれば、今後その方法は自由に選択できます。いまはフェンダーギターを持っていないけれど、またいつかフェンダー製品を購入したくなりました。日本語でのレッスンやサポートを期待する人も多いのではないかと思います。

楽器メーカー以外でも、様々なレッスンサイトを作って公開しています。周りを気にせず、マイペースで新しい知識を学ぶには、オンラインでの学習もとても良いきっかけになると思います。

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