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2020/05/10:フリーペーパーvol.50発刊!

マスク無し会議出席で懲戒処分は有効なのか?

違法な懲戒処分である可能性が高い。WEB会議も要検討。

大阪府の専門学校が、マスクを着けずに会議に出席した職員に対し、出勤停止の懲戒処分を行ったというニュースが報道されました。

マスクを着けずに会議に出席したことなどを巡り、大阪電子専門学校(大阪市天王寺区)を運営する学校法人木村学園(同)が、嘱託職員の男性(60)を出勤停止の懲戒処分にしていたことが28日、わかった。(2020/4/29 読売新聞

この懲戒処分の有効性や、その他感じたことについて、社会保険労務士の観点から解説をしてみようと思います。

懲戒処分が無効となる

まず、結論から申し上げれば、今回行われた出勤停止の懲戒処分は無効であると考えます。

その理由は、3つあります。

第1は、客観的に見て、マスクを入手することが困難な社会情勢であったということです。5月に入り、ようやく市中にマスクが少しずつ出回り始めたという印象もありますが、少なくとも4月中旬はマスクの入手が非常に困難な状況でした。

そのような状況の中、一方的にマスクを着用を求め、マスクを着けなかったことを理由に懲戒処分を行うということは、社会通念上、本人にとってあまりに酷であるということになります。

第2は、学校側が代替策を示さなかったということです。「学校側でマスクを確保してマスクを入手できない職員に配る」、「手作りマスクを配布する」、「マスクの代わりにハンカチやスカーフなどで口をおおうことを指示する」など、学校側としてできる対応はあったはずです。

確かに、学校側がマスクを配布したにも関わらず本人が着用を拒んだということであれば、懲戒処分は有効になる可能性が高いでしょう。しかし、報道された内容を読む限りでは、そういった代替策を講ずること無く、学校側が一方的に出勤停止の懲戒処分を課したようですので、違法性が高いと考えられるのです。

第3は、うがった見方かもしれませんが、「休業手当の支払逃れ」というようにも見えてしまうということです。本人がコロナに感染した場合は別として、コロナの予防のため、企業の判断で従業員を自宅待機とする場合は、労働機基準法上の休業手当の支払が必要となります。休業手当の金額は、平均賃金(原則として3か月の総賃金を、歴日数で割ったもの)の60%以上とされています。

本来、学校側として、「感染防止のため、マスクを用意できない職員は自宅待機とする」というルールを運用したいのであれば、マスクが入手できなかった職員に対しては、平均賃金の60%以上の休業手当を支払った上、自宅待機を命じなければなりません。

そうであるにも関わらず、「仮に」の話になりますが、休業手当の支払を免れ、無給で自宅待機をさせるために、懲戒処分の出勤停止という体裁をとったのであれば、法的には違法な懲戒処分ということになります。

WEB会議はできなかったのか

本件においては、そもそも論として、学校に集まって会議を行うこと自体が必要だったのか、ということも論点になります。

4月は国内でもコロナウイルスの影響が深刻化し、緊急事態宣言も出され、不要不急の外出は控えることが求められてました。そのような状況でしたので、学校側としても神経を尖らせていたのだと思います。それが行き過ぎて、強権的な懲戒処分の発動になってしまったのかもしれません。

しかし、感染防止に注力をするならば、会議自体をWEB会議に置き換えることはできなかったのでしょうか。政府からも、企業活動においては、テレワークが推奨されていました。

WEBカメラ付きのノートパソコンがあることが望ましいですが、Zoomなどのアプリを用いればスマートフォーンからのWEB会議参加も可能なので、どうしても現場に行かなければ難しいような会議を除き、WEB会議の活用が望まれます。

まとめ

確かに、学校としては、職員が安全に勤務を行い、そしてもちろん、生徒の安全を守る必要があります。それは、他の企業に置き換えたとしても同じことでしょう。

しかしながら、そのために、個人に過剰な負担や責任を課したり、無理強いをしてはなりません。企業側でマスクを調達したり、率先してWEB会議を導入したりするなどして、労使に軋轢を生まぬよう配慮しながら、コロナ危機を乗り越えていってほしいと思ってやみません。

 

プロフィール
榊 裕葵(ポライト社会保険労務士法人代表)

大学卒業後、製造業の会社の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務。その後、社会保険労務士として独立し、個人事務所を経てポライト社会保険労務士法人に改組。マネージングパートナーに就任。勤務時代の経験も生かしながら、経営全般の分かる社労士として、顧問先の支援や執筆活動に従事している。また、近年は人事労務freee、SmartHR、KING OF TIMEなどHRテクノロジーの普及にも努めている。

主な寄稿先:東洋経済オンライン、シェアーズ・カフェオンライン、創業手帳Web、打刻ファースト、起業サプリジャーナルなど

著書:「日本一わかりやすいHRテクノロジー活用の教科書

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