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2024/11/10:フリーペーパーvol.104発刊!

ほっかほっか亭vsHotto Mottoの抗争懐かし「弁当屋はなぜ潰れない?」

Hotto Mottoとの抗争も記憶に新しい「ほっかほっか亭」の強さ

帰りのバスを待ちながら、私はふと顔を上げて前を向きました。そこは、もう10年以上も見続ける同じ景色。大きな道路を挟んで反対側にある弁当屋さん「ほっかほっか亭」も、10年間見続けています。

「あの弁当屋さん、僕が知るだけで、もう10年も営業している…」

その事実に「ハッ!」とした私は、ほっかほっか亭がなぜ長く経営を続けられるのかという疑問を抱き、その答えを知りたいという激しい衝動に駆られたのです。

ほっかほっか亭はイオン鹿児島鴨池店の正面

そのほっかほっか亭が、特別に地の利に恵まれているというわけではありません。正面には小売業大手のイオン。1分も歩けばコンビニ業界トップのセブンイレブンもあります。

店はそれほどおしゃれじゃない

その店には、私も何度か弁当を買いに行ったことがあります。弁当を受け渡しするレジと調理する厨房の間にはカーテンがあり、中をはっきり確認することはできません。ただ外観から察するに、ピカピカにキレイな店というわけではないようです。

天井間際に少しだけ空いた、仕切りの隙間からわずかに見える厨房の換気扇は、調理に使用したのであろう油が羽にうっすらと残っています。カウンターに敷かれた白いビニールマットも、長年の使用で部分的にヤケが生じ変色しています。

もちろん、出されるお弁当は包装も中身もおしゃれできれい。食べても美味しい。

店の外見がそのまま法的な清潔度の基準になるわけではありませんし、私自身もやたら小奇麗であることにそれほど価値を見ないので何も不足はないのですが、何でもかんでも除菌する今流行りの飲食店、という感じの店ではありません。

頻繁なキャンペーン

ほっかほっか亭では、たまに新メニューが出されます。定期的にのぼりを立て「あじフライ弁当390円」などと宣伝します。

数か月前には、のり弁の白身フライだけをあじフライに変えた「アジのり弁」といった商品も期間限定で売っていました。でも、その商品の販売は気にかけている間に終わってしまい、次のキャンペーンに移ってしまいました。アジのり弁を食べるチャンスは、もう二度と戻ってこないでしょう。

Hotto Motto の存在

ほっかほっか亭といえば、2008年のHotto Mottoとの分裂抗争が有名でしょう。現在は、それぞれが独自に経営を進めているようです。

ほっかほっか亭 vs Hotto Motto

ほっかほっか亭はかつて「ほっかほっか亭総本部」を統括とし、東日本、西日本、九州の全国を3地域に分けて営業するチェーンでした。東日本が直営の株式会社ほっかほっか亭、西日本がダイエーが所有するほっかほっか亭、九州はタイヨーという九州の会社が所有するほっかほっか亭でした。

その後、経営危機に陥った西日本のダイエーがほっかほっか亭を株式会社ハークスレイに売却。九州ではタイヨーがプレナスと名称を変更し経営が続きました。

プレナスはその後、東日本の株式会社ほっかほっか亭の全株式と総本部の44%の株式を取得。その結果、プレナスが全国ほっかほっか亭のうち3分の2の店舗を所有することになります。

「ほっかほっか亭」の商標権は総本部ではなく株式会社ほっかほっか亭が所有するもので、株式会社ほっかほっか亭を吸収合併したプレナスは商標権使用料を総本部に請求します。

総本部はそれに反発し、創業者が総本部の残りの株式をハークスレイに譲渡します。その結果、ハークスレイがほっかほっか亭総本部の親会社となり、プレナスがハークスレイの孫会社になるといった、いびつな関係が生じました。

商標権をめぐる争いは、その後、東京地方裁判所での損害賠償請求にまで持ち込まれます。

対立を深めたプレナスとほっかほっか亭総本部の争いは、2008年1月15日、プレナスがすべてのエリア・フランチャイズ契約を解約する旨の取締役会決議をし、最終結論を迎えようとしていました。

和解協議も進展が見られず、プレナスは5月14日付での解約を総本部に伝達。

同年2月12日、プレナスは新ブランド「Hotto Motto」を立ち上げました。

ほっかほっか亭

さて、肝心の鹿児島市鴨池にあるほっかほっか亭のお話に戻ります。

儲かっているから

ご紹介した弁当屋さんが、10年以上経営し続けている理由は、儲かっているからです。儲かる理由は、弁当屋さんであれば一番の理由として「美味しいから」でしょう。

その他にも、注文の出来上がる時間が早い、接客が丁寧、営業時間が便利、立地が良い、などさまざまな理由があると思います。店ではそれらの条件を一つでも多く実現するための努力をし、その結果、たくさんのお客さんが弁当を買いに来るのです。

小規模の弁当屋を10年続けることの意味

弁当屋さんって、自分だけの「見つけた」感が欲しくありませんか?なくてもいいけど、あればまあ良いという感じで。

そういう感情を湧かせるキッカケとなるものは、例えば食事であれば、他にも選択肢があるけど、この店に行けばとりあえずどのメニューを頼んでも自分は満足できるという安心感にもあると思います。

値段は特別に安くなくて普通でいい。味もそれほどうるさくこだわらない。でも、たとえ個人のこだわりだけならこの2つだけであっても、その店を訪れる大勢のさまざまな好みに平均的に対応することは、大変な労力を伴う仕事でしょう。自分1人の好みでさえ、相手に正確に伝えることは難しいものです。自分がその店のどの弁当を食べても平均的に満足できるという事実は、実は凄いことなのです。

見ず知らずの他人の好みに対応する仕事

10年以上安定して営業を続けている、そのほっかほっか亭には、客を引きつけるだけの何かがあったということでしょう。そのために、いろいろな工夫をしてきたのだと思います。

もちろんフランチャイズですから、食材については調理の終わったものを、どの店舗も同じように工場から仕入れるだけなのかもしれません。しかしそうであれば、メニューの開発企画の段階や、製造過程における工場なりの工夫もあるはずです。

そして、もし他の店舗との差別化を図ってより多くの客を自分の店にひきつけたいと考えるなら、お店が実行すべきは、一つでいいから、お客さんが本気で喜ぶ商品を店も本気で考えることです。

私が買いに行くその弁当屋では、独自に作ったタルタルソースをフライものにかけてくれました。だから「のりタル弁当」は特にお得感がありました。なりより美味しかった。

大きなサービスは、小さな心がけの積み重ねの結果成り立つものです。よりよいサービスを追求するためのもがきの集積こそが、ごまかしの効かない本音のメッセージとして、客の心に伝わるのだと思います。

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