日本の障害者求人はギリギリのノルマを満たすだけの採用
法改正に伴い、障害者の就職機会が増えてきているようです。それでは、就職を希望する障害者は、その職業をさまざまな求人の中から自分の希望に合わせて「選べて」いるのでしょうか?
障害者の職業選択の自由
就職機会が増えたとはいえ、障害者を常勤の正社員として雇用する企業はごくわずか。パートの形態で最低賃金を保証しても、同一労働同一賃金の原則にのっとり経験やスキルに合わせた昇給昇進も期待できる求人など、特例子会社を除いてほとんど存在しません。本来なら当たり前のこういった雇用ですら、地元のハローワークでこの20年間、私自身はまったく見たこともありません。
障害者の求職活動
障害者は多くの場合、ようやく見つけたたった一つの求人に、選ぶ余裕など与えられることなく応募します。ましてや、障害があって年金を受給し生活に窮していたり、最低限の生活を保つために生活保護を受けていたりしていれば、普段からケースワーカーの威圧は強いものがあります。何度も何度も「仕事は、仕事は」と急かされ、たった1年契約の臨時求人であっても自分の得手不得手など関係なく応募せざるを得ない気持ちに追い込まれます。
背景
そういった障害者には、長く定年まで何十年も勤め上げたいと思えるような、職業を選ぶための「モラトリアム=猶予期間」が、ありません。そうして、本来自分が得意とするわけでもない職業に飛びつくばかりに、短期間で体調を崩し、かつての公的保証体制を復活させることに大変な面倒と手間と時間をかけます。そういった、後々の状況まで考えた就労活動の自由さえ、負債を抱えた経済的弱者の障害者には持たせてもらえません。
「殺すぞ!」「飛び降りろ!」ーー絶えず支店長の罵声がする職場でうつ症状が悪化 大東建託に障害者を雇用する資格なし https://t.co/NTuno4vWZS
— 満州中央銀行 (@kabutociti) 2019年3月12日
通常の就職活動に置き換えて考える
障害者が仕事に安定しないのは、本人の適正という理由以外に、適正を活かす職場を選ぶ時間的な自由すら得られないことにも起因するでしょう。自分が何十年も勤めている仕事は、多くの場合いくつかの選択肢から選んで決めた仕事ではないでしょうか?そうでない人もおられるかもしれませんが、そういったとりあえず的な就職が長続きしないことは、誰だって同じだと思います。
都合のいいところだけ雇用
障害者だから優遇するという考え方は、障害者にとって必ずしもありがたい話という訳ではありません。理由は、優遇には必ず妬みや非難がともなうし、そもそも障害者が最も望んでいる職業環境とは「同じ扱い」だからです。細かいことを言えば、そもそもマイナーとされる障害の中でもさらにマイナーである精神障害は、初めから外されがちな障害です。法定雇用率に組まれたのも、最近です。
会社の本音
私は身体は元気なので、身体の障害のある人達がどのような苦労を職場で味わっているのか、就労のための面接でどのような扱いを受けているのかについて、肌で感じることは出来ません。
それでも思うことは、雇用する側がなるべく障害者の数をギリギリ最低限に抑えたいと思っているということと、はじめから障害者を戦力として計算に入れずに雇用を済ましているということです。
法定雇用で義務付けられた採用など、早く終わらせて収支の目処を立てたいのでしょう。会社に益することなどない雇用だと、初めから割り切っているのでしょう。仕事の分割や配分といった、障害者雇用においてセオリーとなりつつある面倒な工夫など、やりたくないのでしょう。
障害者雇用枠で働こうと思って、ハロワで相談したら、「何が出来て何が出来ませんか?」と問いかけられた。なんでも出来ます。何にも出来ない日があるのです。神さまはいないなと思った。#双極ライフ
— 7040@双極性障害 (@w5UKZmVWPv1buYb) 2019年3月11日
求人の絶対数が足りない
猶予の与えられた求職活動とは、選べるということに尽きると思います。選ぶためには選択肢が必要で、選択肢を増やすため必要なことは多くの企業が障害者の求人を増やすということです。
現在の障害者求人の多くは特例子会社が多数を占め、職場全体が障害者というものがほとんどです。それはそれで価値がありますが、健常者の中にとけこめるよう障害者を受け入れるという図式ではありません。
現在は、
1.障害者の採用活動は早く終わらせて
2.障害者以外の従業員で利益を出し
3.「配慮」とされる障害者への心遣いに気を配る面倒から開放されたい
という雇用が本音でしょう。
しかし、中には特定の分野、または調整業務などの総合的な仕事の進め方にも対応できる人もいます。それを見極めもしないまま障害者は「外す」ような雇用を企業が行っている間は、合理的配慮などいつまで経っても整うことなどありえないのだということを、採用担当者は知っておいてください。