福祉避難所開設の公表、自治体の2割弱に留まる
全国の政令指定都市と県庁所在地計51市のうち、福祉避難所の開設をホームページなどで公表すると決めているのは福島市、熊本市など9市に留まっているようです。半年ほど前に発生した北海道地震の際、札幌市は福祉避難所開設を公表せず、一般避難所に来た人だけを福祉避難所に移しました。その事実に対して、後日、難病患者などから批判があったそうです。にもかかわらず、札幌市はいまだ未公表とのこと。
医療的ケアがなければ命に関わる方もいるという事実を自治体は真摯に受け止め、一般の方へ事前に福祉避難所の役割を説明することも含めて、福祉避難所を開設した際には公表していただきたいなと思います。
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— 障害者ニュース速報 (@syougai_news) 2019年3月5日
ざっくり
「福祉避難所」とは?
福祉避難所というものがあることを知らない方も多いと思います。わたしは母親が車椅子ユーザーなので避難する術を調べていた時、たまたま福祉避難所の存在を知りました。
学校の体育館などの一般の避難所では生活に支障のある高齢者や妊婦、乳幼児や医療的ケア児、傷病者、難病患者などの「要配慮者」を受け入れる避難所のことを「福祉避難所」といいます。
「福祉避難所」公表の必要性
内閣府が定めている福祉避難所の確保・運営のガイドラインには、「災害時に福祉避難所を開設した際には、支援の必要な人や家族らに場所などをすみやかに周知する」と記してあります。
情報不足で命を落とす可能性も
札幌市の場合、半年前の地震で公表しなかった理由として、「安全が確認できない中、人が集まって混乱することを避けるため」と述べています。確かに一理あると思います。
でも、必要な設備がなければ命を落としてしまう方がいる事実は受け止めなければならないと思いますし、助けられる命を情報不足で落とすことは避けなければならないと思います。事前に、福祉避難所の役割を住民に周知することで、福祉避難所に人が集まることは阻止できるのではないかと思うのですが。
要配慮者には個別連絡も
可能であれば、福祉避難所を公表するとともに、支援の必要な方に対する個別連絡もお願いしたいです。連絡がくれば福祉避難所を開設している場所を伝える、というスタンスの自治体もあります。でも、連絡できない方もいらっしゃるでしょうし、安否確認にもなります。状況が許されるなら、要配慮者に対する個別連絡、ぜひお願いしたいです。
熊本地震の時は福祉避難所に健常者が殺到して機能しなかったケースが多々ある。
だからと言って公表しないのではなく、公表した上で誰でも避難できるわけではないことを周知し、健常者が来たらきっぱり断ることだ。
福祉避難所の開設、公表は2割 自治体、一般人殺到を懸念https://t.co/eYlkTfXWbO— TARO*クリエイター系公務員 (@lolololocal2) 2019年3月4日
神戸市独自の取り組み「基幹福祉避難所」
福祉避難所は一次避難所ではなく、要配慮者に対する二次避難所という位置づけになっています。災害発生後、避難生活が中長期化する事が予想される場合にのみ開設されることが一般的で、自治体が福祉避難所を開設するまでに1週間程度かかるケースもあります。そこで、神戸市は独自の取り組みをはじめています。
神戸市全区に「基幹福祉避難所」整備済
神戸市は、大規模災害が起こった時に特別養護老人ホームなどの施設運営者が自主的に開設し、要配慮者が直接避難することができる「基幹福祉避難所」を設けています。基幹福祉避難所は神戸市全区に整備されているそうです。
長田区の特養をモデルに
基幹福祉避難所は、阪神・淡路大震災で周辺の施設と連携して住民を受け入れた長田区の特別養護老人ホームをモデルにしています。神戸市は震災の教訓を生かして制度設計を進めています。ぜひ、他の自治体にも参考にしていただきたい取り組みのひとつです。
大災害時に障がい児者や難病児者などは、一般の学校などの一次避難所から、病院などの医療設備が整った二次避難所(福祉避難所)に移ることになります。
スムーズな避難ができるよう神戸市の取り組みです。https://t.co/xq9aFWSBYl— アンリーシュ | 医療的ケアのWebメディア (@unleash1220) 2019年2月24日
福岡市が開設する「福祉避難室」
2018年4月、福岡市は大災害が起きた時、各避難所に「福祉避難室」を設けることを決めました。「福祉避難室」は、専門性の高いサービスは必要としませんが、避難所での生活に困難が生じる高齢者や障害者などに特別に配慮した部屋を学校などの避難所内に必要に応じて開設するものです。福岡市の地域防災計画の修正案に盛り込まれています。
まだ、導入している自治体が少ない福祉避難室。福祉避難所に行くまでもないが、一般の避難所では避難生活が難しい方や、移動が難しい方、福祉避難所が被災した場合など、近くの避難所に特別に配慮した部屋があるのは心強いです。
大災害が起きた時、各避難所に「福祉避難室」を設けると福岡市が決めました。障害のある人や高齢者向けで、受け入れ態勢を充実させます。#災害 #避難所 #福岡 #障害 #高齢者https://t.co/W9ctQCXv5C
— 朝日新聞医療サイト「アピタル」 (@asahi_apital) 2018年4月25日
「福祉避難所」開設、公表すべきでは?
災害が起こった時の備えが必要なことは、誰もがわかっていることだと思います。でも、自治体によって対応が異なっている現実があります。「福祉避難所」開設の公表もそのひとつです。
要配慮者の中で、命を落とす危険があった方がいる、また、不安に思った方がいる事実があるのであれば、やはり公表すべきだと思います。もし、福祉避難所の運営に不安があるのであれば、そこは早急に議論していかなければ住民の命を守る術のひとつを失うことになります。災害はいつ起こるかわかりませんし、待ってはくれません。
まだまだ、災害対策、特に災害弱者に対する対策は不備が多いように感じますし、周知できていないと思います。神戸市や福岡市など、しっかり災害を想定して独自の取り組みをしている自治体が増えて欲しいと思いますし、各自治体には、災害弱者といわれる方々の命を可能な限り救えるしくみを真剣に考えていただければありがたいなと思います。
東京新聞 福祉避難所 開設公表2割 pic.twitter.com/mag2fnMBke
— 坂忠(さかちゅう) (@Agano810544) 2019年3月5日
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