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2024/11/10:フリーペーパーvol.104発刊!

IBD患者の受験対策 体調にあった”受験環境”を整える

IBD患者の受験は家族だけでなく学校などのサポートも必要

クローン病や潰瘍性大腸炎といったIBD(炎症性腸疾患)患者の多くが10代で発症し、なかには受験を控えた大切な時期に発症する人もいます。ほかの受験生と比べ、ハンデを背負っているIBD患者。

受験対策は勉強だけではありません。体調にあわせて”受験環境を整える”ことで、ハンデを少しでも軽減することができます。高校3年の夏に発症し大学入試に挑んだ私が実践した、センター試験〜2次試験までの”IBD患者の受験対策”を紹介したいと思います。

試験会場の受験環境を整えてもらう

IBD患者の主な症状は、強い腹痛や高熱、下痢が続いたりします。受験シーズンは寒い時期であるため体調を崩しやすく、試験に影響を与えないか不安な人もいるのでは。試験会場は大学の広い教室だったりするので、なおさら寒さを感じることも。

ほかの受験生も寒いなか頑張っているのですが、IBD患者の場合、寒さが体に与える影響は生易しいものではありません。激しい腹痛を感じたり、お腹がゆるくなって頻繁にトイレに駆け込んだり、これでは集中して試験にのぞめません。

ほかにも、痔瘻がひどく肛門周囲にドレン(排膿用の管)が何本も入っている人は、座席に座ることすらままならないことも。これではほかの受験生に比べて不利ですから、少しでも良いコンディションで試験を受けるために、受験環境を整える必要があります。

トイレに近い個室を用意してもらう

まずは試験会場に、トイレの近くにある受験用の個室を用意してもらいましょう。試験中に何度もトイレに駆け込むことも考えられます。広い会場だと何度も手を上げてトイレに行くのもはばかられるし、移動だけで貴重な時間をムダにしてしまいます。
そこで、トイレが近い個室を用意してもらえると、頻繁に行くことになっても周囲に気を遣うこともなく、時間のロスを少しでもなくすこともできます。

個室のメリットはそれだけでなく、小型の暖房器具(電気ストーブなど)を持ち込むことも可能だということ。
足元を温めることで、冷えによる腹痛等を少しでも回避できます。さらに、座席に座れない場合は教卓のような高いテーブルを用意してもらうと、立ったまま試験を受けることができます。

家族だけでなく学校や主治医にも協力してもらう

試験会場に個室を用意してもらうには、病気の症状や体調面の不安など、個室で受験したい理由をしっかり会場側(大学など)に伝え、理解してもらう必要があります。
書面や電話で前もってお願いをするのですが、ただでさえ病気との闘いや受験勉強で不安や疲労の多い状態ですから、自分や家族だけで動くよりも学校の担任や入試担当を通した方がスムーズに交渉ができるので協力してもらいましょう。

その際、病状を証明するために診断書の提出も求められるので主治医と相談して、病状の説明と個室での受験を希望する理由等について一言添えてもらうと良いでしょう。

病気に関する対策

受験環境が整えられたら、病気自体への対策も考えておかなければ。もともと体調が不安定な病気であり、寒さや緊張などで体調が悪化する可能性はさらに高まります。

体が冷えないように

冷えに対しては服を着込むのはもちろん、手軽に持ち歩けるカイロが重宝します。背中や腹部あたりに貼ったり、ポケットに入れて手を温めたり。体調に影響を与えやすい冷えに対しては、特に入念な防寒対策を。

腹痛やトイレに行く時間を考慮した時間配分を

試験中の腹痛やトイレも想定されるので、解答の時間配分も余裕を持って考えた方が良いでしょう。
また、トイレに行きたくなったら遠慮せずに何度でも申し出ましょう。時間がもったいないからと我慢しても、集中できなければ意味がありません。

早めの鎮痛薬の服用も

試験開始前や試験中に腹痛が生じた場合、腹痛に対する鎮痛薬を持っているのなら試験前に服用しておくか、事前に試験中の服用許可をもらっておき服用しましょう。
内服薬は効果が出るまでに少し時間がかかるので、痛みを感じたら早めに服用すると良いでしょう。もちろん容量、用法を守った上で。鎮痛薬の中には眠気を催すものもあるので事前に確認を。

食事の準備も大切な対策

特にセンター試験は一日がかりだったりするので、学校が用意したホテルや飲食店で昼食を取ることがあります。その場合、IBD患者は極力避けなければいけない脂質の高い料理や食物繊維の多い野菜、刺激物などが出されることがあります。

何も食べない訳にはいかないので、食べられるものを自分で持参するか、お店の方で用意してもらえるように学校に相談するなどしておきましょう。しかし、お粥などのように腸に優しいものは、どうしても普通食と比べるとチカラになりにくいです。腸に刺激の少ない栄養補助食品やエンシュアリキッドなどを用意しておくと空腹時に手軽に摂取することができます。

私はセンター試験では、お粥・お吸い物・卵焼き(油はオリーブオイル)を保温弁当箱で持参し、2次試験ではホテルに頼んでお粥を用意してもらいました。

感染症予防をしっかりと

IBD患者のなかには治療によっては免疫力が著しく低下している人もいますインフルエンザなどの感染症にかかりやすい上に重篤化の可能性もあるので、日頃からうがい手洗いなどの予防対策をしっかり行いましょう。

”病気の先輩”たちの経験を参考にする

クローン病は病気の症状に個人差があり、まさに十人十色。知り合いにクローン病の先輩がいれば直接話を聞いてみたり、SNSなどを利用して参考になる情報を集めてみるのもアリでしょう。実際に経験した人の言葉ほど参考になるものはありません。

多くの助けを借りて乗り切った大学受験

私が発症した頃はクローン病の認知度はとても低く、なかなか理解してもらえませんでした。腹痛や高熱が続いたり、痔瘻がひどく椅子に座ることもできなかったため受験を諦めかけていました。

そんな時に学校の先生方が背中を押してくれ、さらに大学の入試担当の方々の全面的な協力により受験しやすい環境を整えることができ、体調が悪いなかでも自分のやれるだけの力で試験を受けることができました。
納得のいく試験結果ではなくても、多くの人たちの力を借りて最後まで頑張れたことには満足していて感謝の気持ちしかありません。

まとめ

私はありがたいことに協力的な人たちに恵まれましたが、大学によってどこまで要望に応えてくれるのかはわかりませんし、すべての学校や大学が協力的であるとも限りません。
それでも、何もせずに諦めるのではなく最後まで粘り強く交渉してみましょう。

これまでの努力を病気なんかのせいでふいにしないために、将来後悔しないためにも。ただし、病状が本当に悪い時は、無理をせず治療に専念するという決断も大切です。

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