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2019.08.10:フリーペーパーVol.41発刊!

バザーリア法が日本精神科医療に突きつけた40年間の空白

イタリア・ボローニャ発、バザーリア法が日本精神科医療に突きつけた40年間の空白

今から40年前の1978年、日本では差別意識のまだ根強かった精神科医療に、体系的な社会支援システムを構築した国があります。イタリアです。この国には精神科病院がありません。1978年5月13日に制定された法律180号イタリア精神保健法(通称・バザーリア法)により、精神科病院は閉鎖されました。バザーリア法という名称は、イタリアで最初に精神科病院廃絶を訴えた精神科医、フランコ・バザーリアに由来するものです。

イタリア精神科医療の紹介

バザーリア法の制定によりイタリアで精神科病院が閉鎖された後、イタリアと日本の精神科医療は、それぞれの道をたどりました。

1978年イタリア

イタリアが取り組んだ精神科医療とは、薬で病気を抑えて治療と考える従来の思考から脱却するものでした。精神障害者の治癒とは、社会における障害者の居場所をコミュニティーで共存するなかで手に入れるものと考えたのです。地域はノーマライゼーションを目指し、患者は自己決定を前提に責任への判断力を身に付けます。健常者との間に壁を設けず、社会的統合を許容するなかで精神障害者を受け入れるというものです。1978年に精神障害者の再入院を禁止すると、治療は基本的に精神保健センターで行われることになります。緊急の場合に備え総合病院内に精神科病棟は設置されますが、入院する場合でも期間は1週間程度しかありません。入院への異義があれば裁判所への抗告も認められます。

1978年日本

同じ時期の日本の精神科医療を見ると、1978年は、精神科の外科的治療として行われていた「ロボトミー手術」が廃止された1975年からほんの3年後ということになります。前頭葉の一部を切除することで患者の興奮をあらかじめ防ぐこの術式は、当時さまざまな議論を起こしました。日本での精神科医療は依然として入院が中心で、任意入院の制度確立が日の目を見るのは、1987年の法改正まで待つことになります。

精神科医、イヴォンヌ・ドネガーニ氏

日中まだ暑さの残るよく晴れた10月3日(水)、鹿児島市の勤労者交流センターに、イタリアの精神科医イヴォンヌ・ドネガー二氏が特別講演のため訪れました。ボローニャ精神保健局前局長であり、現在は国立ボローニャ大学精神学科専門課程で教鞭をとるドネガーニ氏の講演に、当日は多くの来場者が集まりました。講演は、バザーリア法にまつわるイタリア・ボローニャでの精神科医療の変遷をたどる講演や、ショートフィルムの上映、登壇者とのダイアログ、来場者からの質問を中心としたものでした。

精神科医療とは地域ケア

精神科治療とは地域ケアだと、ドネガーニ氏は強調しました。

薬、社会でのリカバリー、家族、仕事

医療と福祉は、切り離すことのできない関連の深い項目です。日本の精神科医療では、障害者が社会で生きていくための生活訓練が、医療と切り離され福祉として行われます。しかし、いざ入院するとなれば、医療と福祉が業界を住み分けるかのように、患者への対応は異なるものが別々に行われます。逆も同じで、安静を徹底される入院治療が期限を終えると、突然せわしなく社会参加が急かされていくのです。医療と福祉の支援に、連携した一貫性がありません。

地域支援と医療

イタリアでは、入院を続けながら福祉の支援を同時に受けることができます。退院しても計画的な治療は継続します。地域には社会的弱者の就労を目的として活動する社会的協同組合が存在し、患者の社会的参加を目標とした地域ケアが行われます。

まとめ

薬は、人を治療してもその患者の社会的な居場所を作り出すことはできません。精神障害者に必要とされるのは薬だけではありません。むしろ、安心して存在できる場所が必要です。精神科医療は、患者に社会的な居場所を提供することまで含めて治療と考えなければなりません。

フランコ・バザーリアは、次のような言葉を残しています。

―いかなる制度も世界の中心にいる精神の病を抱えた人を自由から解放することは出来ず、その機能は、崩れていくであろう。なぜなら、回復へ向かっているように見えても、制度は、否定的な力でその人にのしかかっているのであるのだから―。

心の病は、薬で無くすことができるならそうすればいいでしょう。しかし、長い治療期間を精神科病院に閉じ込めることなく社会参加の訓練に使ったなら、患者は病をかかえながらにしてコミュニティーに共存する力を備えることができます。

障害者の生きやすさとは、障害をどのように受け入れるかといったコミュニティーの性格が左右するものです。

私たちは精神障害者を避けているのではなく、精神障害者を理解するための努力から避けています。その結果、共存するためのコミュニティーを形成する機会まで失っているという事実を、知る必要があるのではないでしょうか。

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