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クローン病治療に希望の星 新薬「ステラーラ」(前編)

治療に行き詰った患者の新たな選択肢であり、新たな希望

クローン病治療において「レミケード」や「ヒュミラ」などの免疫抑制剤による治療はいまや珍しくなく、多くの患者に良い結果をもたらしています。一方で、それらの治療では症状が良くならなかったり、副作用が強いため使用できないという患者も少なくありません。

そのような患者に対しても大きな効果が期待されている新薬が、昨年に日本で先行販売された「ステラーラ」です。

ステラーラとはどんな薬?

レミケードやヒュミラと同様、継続的に投与することで長期にわたり症状を抑える効果が期待されています。そして、投与間隔は基本的に12週間隔とこれまでで最長。1度の投与でそれだけ長く効果が持続すると考えられているのです。

投与方法

ヒュミラは自分で管理し注射を行いますが、ステラーラは看護師などの医療従事者が注射を行います自分で針を刺す際にためらいや恐怖を感じていた人にとっては、精神的な負担が軽減されるかもしれません。また、主治医とともに投与スケジュールを管理できるためうっかり忘れるということもありません。

私も今年の3月から投与を開始し、これまで4回の投与を受けました。
1回目の投与は入院中に。心拍数や酸素、血圧等をモニタリングしながら点滴で約1時間ほどかけてゆっくりと投与しました。投与を開始すると投与終了後30分が経過するまで、体調に変化がないか、こまめにチェックも行われました。

2回目以降の皮下注射も、薬液が入ってくる時の痛みはほとんど感じません
注射のプロフェッショナルが素早く上手に打ってくれるので、安心して受けられます。

投与の適応となる患者

投与ができない患者

誰でもすぐに使用できるわけではありません。これまでの治療では十分な効果を得られていない患者が主な対象となります。

レミケードやヒュミラなどで症状が落ち着いている場合は、ステラーラに切り換える必要はありません
将来、現在行っている治療の効果が減弱するかもしれません。その時のために「最後の砦」として残しておくべきでしょう。

ステラーラ治療の仕組み

ステラーラは、炎症や免疫反応を引き起こす物質の働きを弱めることで、消化管の炎症を抑え腹痛や下痢といった症状を改善する「生物学的製剤」です。

「生物学的製剤」とは、生物が作り出すタンパク質をもとに作られ、体の免疫機能などに関わる「サイトカイン」という物質の働きを弱める薬剤のことです。残念ながらクローン病の原因は、いまだはっきりと判明していません。しかし、クローン病患者の腸管には「免疫異常」が見られ、マクロファージ(白血球の一種)が炎症に関与する「インターロイキン(IL)」や「腫瘍壊死因子(TNF)α」などの物質を作り出すことで、炎症が起きることがわかってきています。

「IL」が重要な役割を果たしていると考えられており、特に「IL-12」と「IL-23」はクローン病の発症に深く関わっていると言われています。「IL-12」と「IL-23」が”炎症を起こす細胞を活性化させることで、消化管に炎症を起こし、その結果クローン病が発症すると考えられています。

ステラーラの作用

ステラーラの作用を簡単にまとめると

  1. ステラーラの成分が炎症や免疫反応を引き起こしている「IL-12」と「IL-23」の働きを弱める
  2. ”炎症を起こす細胞”の活性化を抑制する
  3. 消化管の炎症を抑え腹痛や下痢などの症状を改善する

抗体が作られにくい”ヒト型抗体”

ステラーラの凄さは、何と言っても「抗体が作られにくい」という点でしょう。生物学的製剤には、薬剤そのものが体内で「異物」として作用し、その薬剤の働きを低下させる「抗体」を作り出すものがあります。これを「免疫原性」と言います。

生物学的製剤は「マウス抗体・キメラ型抗体・ヒト化抗体・ヒト型抗体」の4種類があり、種類によって「免疫原性」は異なります。その中でも「ヒト型抗体」は免疫原性が低く抗体が作られにくいと言われているのです。ステラーラは「ヒト型抗体」です。抗体が作られにくいため薬剤の効果も弱まりにくく、炎症を抑え込む効果が長く続くと期待されています。

まとめ

闘病年数が長くなるクローン病患者にとって、長く続けることの出来る薬剤治療の存在は、本当にありがたいものです。次回「クローン病治療に希望の星 新薬「ステラーラ」(後編)」では、薬剤治療とは切っても切れない「副作用」と「注意すべきこと」について紹介します。

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