国内16万人といわれるパーキンソン病患者に朗報!
7月30日(月)京都大学医学部附属病院は、京都大学IPS細胞研究所と連携して「IPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞を用いたパーキンソン病治療に関する医師主導治験」を8月1日(水)から開始すると発表しました。
IPS細胞とは
人間の皮膚などの体細胞に、ごく少数の多能性誘導因子を導入し、培養することによってできた「人工多能性幹細胞」のことをIPS細胞といいます。英語では「induced pluripotent stem cell」と表記、この頭文字をとっています。IPS細胞は、いろいろな組織や臓器の細胞に分化する能力と、ほぼ無限に増殖する能力をもつ多能性幹細胞です。
パーキンソン病とは
1817年、ジェームス・パーキンソンさんによって発表された病気です。パーキンソン病の四大症状は、手足がふるえる(振戦)・動きが遅くなる(無動)・筋肉が固くなる(固縮)・からだのバランスが悪くなる(姿勢反射障害)。脳の幹にあたる黒質という部分の神経細胞が次第に減少して、その神経が働くときに使うドパミンという物質が減ると、このような症状が出ます。国内に約16万人の患者がいるといわれています。
ドパミン神経前駆細胞とは
神経伝達物質のひとつであるドパミンは、ドパミン神経細胞の中でつくられます。ドパミン神経細胞が進行性に失われ、ドパミン産生量が減少することによってパーキンソン病は発症すると考えられています。今回移植されるドパミン神経前駆細胞は、ドパミン神経に分化する前の細胞です。パーキンソン病モデル動物を用いた過去の研究から、ドパミン神経前駆細胞を移植することによって、脳内に成熟ドパミン神経細胞を効率的に生着できることが明らかになっています。
今回の京都大学の治験について
京都大学医学部附属病院が行う今回の治験「パーキンソン病に対するヒトIPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞の細胞移植」は、2つの課題を計画・実施予定とのことです。
治験の課題
「ヒトIPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞の細胞移植による安全性及び有効性」と「ヒトIPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞の細胞移植時におけるタクロリムス(免疫抑制剤)の安全性及び有効性」を検討するという2つの課題があります。
治験の目的
細胞移植は線条体(被殻部分)に行い、「移植することによる安全性及び有効性」と「移植した被験者に対するタクロリムスの安全性及び有効性」を評価することが目的とのことです。
治験の内容
今回のIPS細胞は、再生医療用IPS細胞ストックから提供されたものを使用します。このIPS細胞からドパミン神経前駆細胞へ分化させたものを被験者の脳に移植するとのことです。移植後の免疫反応に備え、既に臓器移植などにおいて臨床実績のあるタクロリムスを今回の治験では免疫抑制剤として使用します。
細胞移植について
IPS細胞から分化誘導した約500万個のドパミン神経前駆細胞を定位脳手術(今回は頭部を固定した上で直径12mmの穴を頭蓋骨に開けて、そこから注射器のような器具を用い、ドパミン神経前駆細胞を注入するとのこと)により線条体(被殻部分)の左右両側に移植するとのことです。
治験参加患者の募集など
ドパミン神経前駆細胞移植の安全性と有効性をパーキンソン病の患者さんで確認する今回の治験の実施予定人数は7名。観察期間は移植後2年間とのことです。治験参加患者募集については、京都大学医学部附属病院ホームページに9月末までの期間限定で特設ページが設けられています。
最後に
日本国内に約16万人いるといわれているパーキンソン病患者。15年前になくなったわたしの祖母もパーキンソン病でした。まだ、根治できる治療法のない難病ではありますが、今回の京都大学のIPS細胞を用いた治験で突破口が開けるかもしれません。この治療の安全性・有効性が認められれば、「IPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞を用いたパーキンソン病治療」は保険適用となるそうです。
IPS細胞からつくった細胞を実際に患者さんに移植するのは、理化学研究所の網膜、大阪大学の心臓に続いて国内3例目。パーキンソン病患者への移植は世界初とのこと。
この治験は多くのパーキンソン病患者の希望であると思います。数年後、この治療法がパーキンソン病治療のひとつの選択肢となることを期待するとともに、治験に参加する7名の方の治療がスムーズに進むことを望みます。
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