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「容疑者は自閉症?」何で発達障害を強調するのか

「誰でもよかった…」最終の新幹線内で

6月9日(土)夜10時前、新幹線の車内で殺傷事件がありました。現行犯逮捕された男は22歳。「ムシャクシャしてやった。誰でもよかった」というような供述をしています。ナタで女性ふたりを切りつけ、止めに入った男性は逆襲に合ってしまい亡くなりました。正義感のある方が報われない…ほんと憤りを感じます。この事件で亡くなってしまった男性に対しまして、ご冥福をお祈り申し上げます。また、被害にあった方々の一日も早い回復を祈っております。

自閉症と犯罪、関係あります?

翌10日、4時38分に挙げられたこの事件を報じる毎日新聞デジタル版のタイトルは ” 容疑者は自閉症?「旅に出る」と1月自宅出る ”。自閉症と犯罪、関係なくないですか?凶悪事件と発達障害などのマイノリティをくっつけたがるマスコミ。いつもながら残念に思いますし、うんざりします。

発達障害とは

わたしたちがこどもの頃、発達障害という言葉はあまり耳にすることがありませんでした。発達障害は先天的なもので、脳の発達や機能が多くのひとと異なるために社会生活や日常生活に困難を与える状態のことを言います。

発達障害と診断されたひとはどれくらい?

今年4月9日に厚生労働省が公表した「平成28年 生活のしづらさなどに関する調査」によると、推計48万1千人が医師から発達障害との診断を受けているとのことです。このうち障害者手帳を所持しているのは76.5%。グレーゾーンの方もいるので、発達障害が原因で日常生活・社会生活で生きづらさを感じているひとは、まだまだ多いのではないかと思います。

発達障害の特徴

対人関係・コミュニケーションが苦手で興味や関心に偏りがある自閉症スペクトラム障害(ASD)、発達年齢に見合わない多動や衝動性あるいは不注意が特徴の注意欠如・多動性障害(ADHD)、読む・書く・計算するなど特定の事柄だけが極端に難しい学習障害(LD)。大きく捉えるとこの3つの症状で発達障害は説明できます。しかし、3つの症状が単独または複数重なるなど、個人差が大きいのが発達障害の特徴でもあります。

素行障害という二次障害

注意欠如・多動性障害(ADHD)の二次障害として知られている素行障害(行為障害)。社会で決められたルールを守れず、反社会的な行動を起こしてしまう状態です。

人または動物に対して残酷な行動を起こすこと、相手に重大な損害を与えようとすること、嘘をついたり万引きをすること、決められたルールを破ることの大きく4つの特徴があります。

発達障害が直接な原因でなくても、素行障害のような二次障害があることで、発達障害のひとの行動が理解できない、凶悪犯罪につながるのでは…と思うひとが、もしかしたらいるのかもしれません。

発達障害と犯罪

多くの精神科医や心理学者は「発達障害と犯罪の直接的な因果関係はない」と訴え続けています。しかし、10日の夜、たまたま点けていたテレビ番組では…。「発達障害」を事件と結びつけようとしている意図が見え見えでした。

発達障害と犯罪を絡めたがるマスコミ

1970年頃、新しい障害分類として登場した発達障害。2000年代に入ってから相次いで起きた凶悪事件。その加害者少年が発達障害者であることが取り上げられて以降、犯罪と発達障害を結びつけて報じられることが多くなりました。

見出しの鮮烈さを重視するあまり

新聞やwebメディアにおいて、タイトルや見出しは読者を引きつけるために重要な要素であるということは、webメディアに携わる端くれとして理解できるところではあります。しかし、今回のように「容疑者は自閉症?」というような、自閉症は犯罪者になりやすいと想起させるようなタイトル・見出しは避けるべきであるし、「発達障害」があるから犯罪を犯した的なテレビ報道は、多くの一生懸命生きている発達障害をもっている方に失礼極まりないと思います。

発達障害は容疑者の一部分にすぎない

新幹線内殺傷事件の容疑者の男が発達障害だったのは事実のようです。しかし、自閉症だから…発達障害だから…というのはあまりにも短絡的でそこに落とし所を求めている、または、ひとを引きつけるための道具に使っているとしか、わたしには感じませんでした。

メディアはこぞって速報を出します。事実を早く伝える技術はすごいと思います。しかし、見てもらうためだけに、センセーショナルな事件と箔をつけるためだけに、マイノリティの特性を利用するのはそろそろやめませんか?

わたしにはダイバーシティ(多様性)が謳われる今の時代を逆走しているようにしか思えません。

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