社労士が改正障害者雇用促進法のポイントを説明します。

平成28年4月1日から障害者差別解消法が施行され、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本的な事項が定められましたが、このタイミングに合わせ、雇用の分野においては、より具体的な施策を打ち出すため、改正障害者雇用促進法が施行されました。この法改正によって、障害者の方の雇用環境はどのように変わるのでしょうか。

 

今回の法改正で押さえるポイントは次の3点です。

1.障害者に対する差別の禁止

2.合理的配慮の提供義務

3.苦情処理・紛争解決援助

榊 裕葵

それぞれのポイントについて、順番に見ていきましょう。

 

1.障害者に対する差別の禁止

雇用の分野において、障害を理由とする差別的取扱いを禁止することが、法律上明記されました。募集及び採用の際には、障害者でない方との均等な機会を与えることが必要とされました。また、採用後においては、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、障害者であることを理由として、障害者でない方と不当な差別的な取扱いをしてはならないとされました。女性の差別禁止については、男女雇用機会均等法が昭和60年に成立し、翌61年から施行されており、30年以上前から法定されていたわけですが、障害者の差別禁止については、ここにきて、ようやく法律上に明記されたということです。

 

2.合理的配慮の提供義務

障害者の方の採用や、採用後の就労に対し、事業主が必要な配慮をしなければ、実質的な意味において、障害者の方に均等な機会を与え、差別的な取扱を回避することにはなりません。そこで、今回の改正では、障害者の方に対して「合理的配慮」をすることが法律上の義務となったのです。車いすを利用している方が筆記試験を受けに来た場合には机の高さを調節するとか、耳の不自由な方と面談をする場合には筆談でコミュニケーションを取るといったようなことが例示できるでしょう。また、知的障害者の方には、本人の習熟度に応じて無理のないペースで業務量を徐々に増やしていくこと、精神障害者の方に対しては、本人の体調に配慮し、出退勤時間の調整や通院時間の確保をしてあげるといったようなことが合理的配慮になります。

なお、あくまでも「合理的配慮」ですから、職場をバリアフリー化するとか、障害者の方のためのトイレを設置するとか、大きなコストが発生して会社に負担がかかることまでは法律は求めていませんから、事業主の方は、今回の改正を必要以上に負担とは感じないでください。

「うちみたいな中小企業は余裕がないから合理的配慮なんて無理」と無関心に走るのではなく、「工夫」や「気配り」によって対応できることはたくさんあるはずなので、各会社が実情に合わせて、できる範囲で「合理的配慮」を行うことが大切なことなのです。

 

3.苦情処理・紛争解決の援助

ここまで説明してきましたよう、障害者の方に対する差別が禁止されたり、合理的配慮が義務化されたりしましたが、これらの法律の定めに反して、事業主から差別的取扱いをされたり、合理的な配慮を受けられなかった場合、障害者の方は誰に相談をすれば良いのでしょうか。

この点について、改正障害者雇用促進法では、差別の禁止や合理的配慮が「絵に描いた餅」にならないよう、障害者の方の相談機関についても定められました。改正障害者雇用促進法では、話し合いによる自主的解決を図ることを促しつつも、当事者間で解決しない場合は、各都道府県の労働局に相談することによって、都道府県労働局長による紛争当事者への助言・指導・勧告を受けたり、労働局内に設置された紛争調整委員会によって、調停を行ったりできるようになったのです。困ったとき、どこに相談すれば良いのかという知識として知っておいてください。

 

まとめ

今回の改正法の施行によって、障害者の方の求職活動と、採用後の雇用継続において、法的な支援が受けられるバックボーンが整ったと思います。ただし、具体的に何が「差別」や「合理的配慮」に当たるのかについては、厚生労働省の指針である程度は明示されているものの、実例を積み上げ、定着をさせていかなければならないでしょう。この法律の実効性が、どれくらい形になるかは、障害者の皆さまや、それを支援する方々のこれからの行動にかかっていると思います。

 

プロフィール

榊 裕葵(あおいヒューマンリソースコンサルティング代表)

大学卒業後、製造業の会社の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務。その後、社会保険労務士として独立し、あおいヒューマンリソースコンサルティング代表に就任。勤務時代の経験も生かしながら、経営全般の分かる社労士として、顧問先の支援や執筆活動に従事している。

主な寄稿先:東洋経済、DODA、シェアーズ・カフェオンライン、創業手帳Webなど