地上波ではなくインターネットTVを見ていると、ニュースチャンネルに「発表まで2分」のテロップが白い文字で表示されていました。
「今日はノーベル文学賞の発表なんだ…」と、右横に流れていくさまざまなコメントを読みながら発表の午後8時を待ちました。
ストックホルムのスウェーデンアカデミーに紙を手にした女性が映り、自分には分からない外国語で受賞者を発表しているようでした。
村上春樹「クソっ…どうすればノーベル文学賞が手に入るんだ…?
!!!…そうか……カズオ・イシグロのように長崎で生まれて、ボブ・ディランのようにギター弾き語りして、ヘミングウェイのように海を愛すればいいのか…!!
ククク…もらった…!」
さだまさし「呼んだ?」— 20cm四方の阿呆面(さかさま) (@sakasamma) 2017年10月5日
納得のノーベル文学賞
「……イシグロ」と聞こえたので、私はすぐに理解しました。
「なるほど、カズオ・イシグロか!イシグロなら納得の受賞!」
と、久しぶりにノーベル文学賞に相応しい受賞者を選んだなと、清々しい気持ちになったのでした。
イシグロは日系のイギリス人で、作品の発表はすべて英語です。
それらが日本語にも翻訳され、私たちも文庫でお手軽に買って読むことができます。
私は、カズオ・イシグロは比較的日本人にも知られた作家だと思っていました。
カズオ・イシグロ氏ノーベル文学賞受賞がどんなふうに報道されているか、NHKニュースでも今朝の朝日新聞一面でも「わたしを離さないで」の核心部分があっけなく暴露されているのを目の当たりにして、小説を読む楽しみのひとつを一瞬で奪うメディアの鈍感さを憂う朝。
— azukKi (@azukki_) 2017年10月5日
知名度が意外に低くて驚き
ネットTVは街頭インタビューを放送しはじめ、道行く人々へインタビューしてみると、案外みんなイシグロさんを知らない。
「日本人?」
「初めて知った」
「読んだことはないんですよ」
などなど…。
インタビュアー自身がカズオ・イシグロと発表されてもピンときていない様子。
カズオ・イシグロの受賞は各メディアにとっても村上春樹を推すファンからも意外だったようですが、少なくとも日本ではあまり知名度が高くないんだなということが意外でした。
1000RT:【日本出身の英国人作家】ノーベル文学賞にカズオ・イシグロ氏https://t.co/MAnx8ovVOS
1954年長崎市生まれ。82年にイギリスに帰化、現在はロンドンに在住。『日の名残り』で英国のブッカー賞を受賞している。 pic.twitter.com/KdN1VTSYU9
— ライブドアニュース (@livedoornews) 2017年10月5日
『わたしを離さないで』
”Never Let Me Go”
カズオ・イシグロの受賞発表とほぼ同時に日本で突然有名になった作品です。
日本語では『わたしを離さないで』。
何を書いてもネタバレになるし、すでにテレビなどでもあらすじが発表されていますね。
【ノーベル文学賞 カズオ・イシグロのメッセージ】ノーベル文学賞の受賞が決まったカズオ・イシグロ氏。作品の原点にある日本への思いを語りました。おととし放送した「文学白熱教室」の一部を掲載。https://t.co/kqrL4vyEvW pic.twitter.com/jynSStSQ3e
— NHKニュース (@nhk_news) 2017年10月5日
日本の記憶…文学賞のカズオ・イシグロ氏「5歳まで母の日本語を聞いていたので女性の日本語は分かる、男性のはまったく分からない」https://t.co/9EXJ4Nyxw8 #ノーベル文学賞 #ノーベル賞 pic.twitter.com/ddZU8uTpUV
— 産経ニュース (@Sankei_news) 2017年10月5日
カズオ・イシグロの本は原書版もわりと容易に買えるので、少し英語に自信があるなら勉強だと思って原書で読んでみるといいです。
テレビでネタバレしてる通りになるのですが、事実を告知されたときに若者たちが見せる、現実を把握できない言動の描写に現実的な違和感を感じました。
長崎出身であるとか、日系だが日本人ではないとか、作家の周辺に関する情報にばかり注目が集まっています。
作品をきっちり読んで、場合によっては原書で読んで、作品について深く語り合うような番組はまだどこにもないようです。
断片的な情報は読む苦労が少ないから、作品を1冊でもいいから数時間かけて集中して読んで、本当の意味で「カズオ・イシグロ」を理解して語り合おうとする番組は今後も出ないかもしれません。
これは一時的なブームに終わるのかもしれません。
イシグロの作品を何年も前から読んでいて「もっと評価されるべき」と思っていたので、日本での認知度が高まってきたことは、とても嬉しいです。
イシグロの作品は根底にとても優しい気持ちが潜んでいるので、多くの人に読んでほしいです。