去る5月20日、日本中のボクシングファンが待ち望んだ一戦、WBA世界ミドル級王座決定戦が1位アッサン・エンダムと2位村田諒太の間で行われました。
序盤は村田がガードを固めて相手の出方をうかがう展開。それが3ラウンドまで続きました。
つまり、3つのラウンドで10−9のポイントを相手にタダで上げたということ。
それでも、KOで勝てばポイントは関係ありませんから、それはそれで理に適った作戦ではありました。
ただし、勝ってさえいれば。
【WBA 村田戦のジャッジ処分か】帝拳ジムの本田会長は、村田諒太の判定負けに言及。WBAが正式な再戦指令とジャッジの処分などを通知してくることを明らかに。 https://t.co/JEmUZp0Xnd
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WBAという団体の特徴
世界のボクシング団体は乱立しており、主要団体だけでも4団体あります。
かつて日本が世界戦を行うとして認めていたのはWBCとWBAのみでした。近年になってWBOとIBFが日本ボクシングコミッション(JBC)の認める団体として加わっています。
なかでもWBAについては若干ネガティブな意見をお持ちの方が、ボクシングファンなら多いのではないかと思います。
WBAは最も歴史の古い団体で、他の3団体はWBAから派生して生まれた団体です。
まず問題となるのは、WBAにはチャンピオンが多過ぎるという点です。それも多くの場合、同じ階級に2人以上います。
正規の王者がケガなどのため試合を長くできない場合の暫定王者。同じ階級で他の団体と複数の王座を獲得した場合に与えられるスーパー王者。そして正規王者。
特に暫定王者の乱立はひどく「チャンピオン」の価値が下落するといった批判を浴びてきました。
【ボクシング】#村田諒太 判定負けでJBCがWBAに抗議文 https://t.co/697WHGKLWx pic.twitter.com/lHM7v5NQ68
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踏まえるべきだったWBA式の判定
現在のボクシングの試合において、判定になっても勝つために理解しておくべきジャッジの傾向があります。
ボクシングの判定要素は主に4点あります。1.有効なクリーンヒット、2.アグレッシブ(有効な攻勢)、3.リングジェネラルシップ(主導権支配)、4.ディフェンス(防御)です。
今回の試合後、頻繁に言われていることは村田の手数が少なかったこと。
無駄な空振りも少なく有効打を的確にヒットさせていましたが、思いパンチをズドンと打ち込むと相手はグラつくもののそれまで。
連打を自重しているようさえ見えました。
現在の判定で最も重要視されるのは手数となっています。効いていないパンチでも当たってさえいればポイントは当てている選手に傾きやすく、それはWBAでは顕著に見られる傾向です。
JBCがWBAに抗議文、村田諒太世界戦の検証求める https://t.co/YW0KXmqqa5 pic.twitter.com/JCKsNum0cu
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裏目に出た丁寧な試合運び
開始3ラウンドでほとんど相手の出方を見ていた点から、村田陣営は試合前からおおよそ村田の優位を分析していたものと思われます。
エンダムのパンチはリーチが長く伸びのあるものでしたが威力については村田に遠く及びませんでした。
3ポイント失っても残りのラウンドを村田が多く取れば判定でも勝てますし、ダウンを取れば一気に2ポイント、KOならポイント関係なく勝てます。
村田の威力のあるパンチでスタミナを削られたエンダムは打ってもほとんどすべてのパンチが村田のガードに阻まれ、顔面にはヒットしていませんでした。
または、パンチを当てるというより触ってるだけ。
とはいえ、ジャッジはリングの外にいますから、死角で見えづらい攻防もありました。
タッチしてるだけ、あるいはガードの上からのパンチも当たっているように見えれば、有効なクリーンヒットとして認識されてしまいます。
どこまで男なんだ #村田諒太
尊敬するわマジで。 pic.twitter.com/qnM2teWCtJ— 300zx🇯🇵 (@300zx_) May 21, 2017
ボクシングというスポーツにおいては、非力な選手がボクシングというルールの枠のなかで巧みな試合運びを見せ、勝利を掴み取るケースがこれまでも多々ありました。
でもそれでいいのです。
規定のルールのもとにおける技能の優劣をつけるゲームの一つとしてボクシングも存在するのですから。
だから、村田はもっと泥仕合をするべきでした。
その方が勝ちやすかったのかもしれない。
仮に当たっても村田の太い首ならエンダムの非力なパンチを浴びる前に倒せていたかもしれない。
「打たせずに打つ」はボクシングの基本中の基本ですが、プロの一発勝負の試合において、村田はその力の多くを出せぬまま12ラウンドを終えてしまったように見えました。
判定についてはWBA会長が直々にジャッジの非を認め、再戦を提案しています。村田を支持した2人のジャッジ、グスタボ・パディージャ(パナマ)とヒューバート・アール(カナダ)に対しては6ヶ月の資格停止処分が下りました。
他の団体もこの試合における村田の素晴らしさを知ってか、WBO、WBCなどから試合のオファーも来ています。
金銭面や村田のコンディションの問題もありすぐに試合できる訳ではありませんが、これだけの潜在能力を秘めた選手を放っておく手はないでしょう。
ジャッジのミスなら、村田は実質的なチャンピオンなのです。
どこかのタイミングで再び挑戦し、次こそ最新の注意を払ってミドル級の世界チャンピオンになってほしいと願っています。
http://www.nikkansports.com/battle/news/1829166.html
via:日刊スポーツ
via:Asterism