静かに、始まる曲です。いつ、歌い始めるの分かりません。しかし、歌詞の一言目からパンチのある出だしで、その静かな迫力に強烈に打ちのめされます。

楽曲「ファイト!」は、中島みゆき1983年に発表したアルバム「予感」に収録されています。静かにビートが刻まれ、小さく、ささやくような女性(中島みゆき)の声で心中の呻きが絞り出されます。

中卒で働き始めた少女が社会の薄汚いクズどもに苦しめられ、それでも生きていくために懸命に力を振り絞る様子が楽曲中に克明に描かれます。

竹原ピストルの「ファイト!」

竹原ピストルさんは、中島みゆきさんのことを尊敬しています。自分なりのアレンジは最小限に抑え、オリジナルの「ファイト」をできるだけ正確に表現しようとする歌い方には感銘を受けます。

自殺することを希望していた自分を救ってくれた曲をどれほど大切にしているかその思いの深さが伝わってきます。

自分のライブでもほぼ必ずといっていいほどカバーするこの曲にさえ、いつまでも畏怖の念を抱きつづける彼に対して、私は誠実な人柄を想像せずにはいられません。

しかし、そのような思いを、彼は徹底的に否定するでしょう。

中島みゆきの「ファイト!」

なかなか始まらない歌詞、いつまでももどかしいビートの連続。主人公である少女の、世間における芽の出せない立場を比喩しているかのようです。

歌詞の内容があまりに悲壮で、それに対する中島みゆきの声の明るさが、大人たちの中で自分を殺しながら都会で孤独に生きていく少女の苦しみが如実に表されます。

同時に、地方出身の世間を知らない少女が閉鎖的な田舎でどれだけ苦しめられもがきながら生きてきたかその真実が歌声の中から滲み出てくるかのようです。

大人として今を生きている人たちも、自分が同じように若者の芽を詰み、苦しめている張本人になっていないかよく考えてみてはいかがでしょうか。

良し悪しも聞き手次第、自分の心に訊ねてください

どちらが歌おうと、問題になるのはその歌詞の内容です。だから、聴く人の方で解釈に間違いがない限り両者に違いはありません。

竹原ピストルでも中島みゆきでも、あるいは誰が歌おうとも一旦独り立ちしたという個人の主張を今さら管理しようなどとは誰一人思ってはいないでしょう。

楽曲に対してのリスペクト尊敬)の念までが彼らの歌にはすでに込められています。

作った中島みゆきですら、そうです。

私が初めて中島みゆきのファイト!を聴いたのは、自分が中学から高校に上がるころだったと記憶しています。

私はすべての放送が終わった後から知ったのですが、そのころ、中島みゆきさんはオールナイトニッポンというニッポン放送の深夜ラジオ番組のパーソナリティーを務めていました。

放送は1987年3月30日に終了し、ファイトが発表されたのが1983年ですから、ラジオ番組が放送されている最中に「ファイト!」が出たということです。

番組に投稿されたハガキから生まれた曲であることも有名で、ファンであれば誰でも知っていることと思います。

中卒の人に経理の仕事は任せられない

という言葉が、働き方改革、男女共同参画社会のなかで、今どのように捉えられることでしょう。

中島みゆきの曲には胸に響くものが多くあります。竹原ピストルの曲も同様に素敵なものが多いです。

紹介したいと思うものがあったらまた書きます。