今年2月に撮影されたある映像が、研究関係者や「世界自然遺産」登録を目指している奄美大島住民の多くに衝撃を与えました。
それは、アマミノクロウサギの幼獣がノネコ(野生化したイエネコ)に襲われるという衝撃的な瞬間が記録されたものです。
自然界で他の動物を捕食することは珍しいことではありませんが、
ここで問題となるのは、”外来種”であるノネコが、”固有種”であるアマミノクロウサギを捕食していることです。
”生きた化石”・アマミノクロウサギ
アマミノクロウサギは鹿児島県奄美大島・徳之島の2島にのみ生息する”固有種”です。
体長は約40〜50cm。耳や後脚が短いなどの特徴を持っており、ウサギの仲間では最も原始的な姿をしています。後脚が短いため、ぴょんぴょんと飛び跳ねることは苦手ですが、大きな爪を使って地面に穴を掘ったり、斜面を駆け上がることを得意としています。また、ウサギの仲間としては珍しい”鳴くウサギ”でもあるのです。
奄美大島で交通事故によりケガを負ったアマミノクロウサギのネセブ(オス)。当園にやってきて4ヵ月が経過しました。体重も1900gと成長しています。やや警戒心が強く、野性味あふれるところが頼もしいです。非公開ですが応援よろしくお願いします! pic.twitter.com/Npp9tcsaNo
— 鹿児島市平川動物公園 (@hirakawazoo) April 4, 2017
ほかのウサギが進化を遂げている間、100万年以上も前からその姿形をほとんど変えることなく、隔離された島の中で原始的な姿を守ってきたことから「生きた化石」と呼ばれることも。
学術的にも重要視され、”国の特別天然記念物”に指定されています。
生息数は2003年時点で、奄美大島・2000〜4800頭、徳之島・200頭ほどと推測されています。
昔に比べ、住みかや隠れ場所となる森林が伐採などで減少したこともあり、絶滅が危惧されている”希少動物”なのです。
アマミノクロウサギのウサギ感のなさ pic.twitter.com/CbhXz9N3us
— サウスポーの人 (@Shuhei_Nagao) August 2, 2015
深刻化する”ノネコ”による捕食
鹿児島大学国際島嶼(とうしょ)教育研究センター奄美分室の研究員が、センサーカメラの自動撮影により捉えた衝撃的な映像。
今年の1月には徳之島で、アマミノクロウサギがノネコに咥えられている写真が撮影され、関係者の間に衝撃が走りましたが、この映像には襲う瞬間が記録されており、ノネコによる捕食が決定的なものに。
このように、映像として記録することに成功したのは初めてのことです。
・ノネコがアマミノクロウサギの幼獣を巣穴付近で襲う瞬間
https://youtu.be/f9_X6rsKryI
ノネコとは、人の生活圏内で暮らしている「野良猫」とは違い、もとは人に飼われていたであろう猫が”野生化”し山野などで暮らしている猫を指します。
そして、本来その地域の生態系には含まれていないノネコは、”外来種”という存在になるのです。
飼育を放棄された猫の野生化、さらに猫の繁殖力の高さなどを考えると、その数は1000頭を超えるとも。
そこで3月、ノネコ被害の深刻な実態の報告と、対策を話し合うべくシンポジウムが奄美大島で開かれました。
猫問題シンポ:「正しい飼養の徹底を」 ネコ被害の実態報告も 奄美市 /鹿児島 – 毎日新聞 https://t.co/fa9E8m2uGE 先日はアマミノクロウサギを襲うノネコの映像が公開されていたりもしましたが、こうした環境にならないようヒトが努力しなければなりませんね。
— ねこ経済新聞 (@nekokeizai) April 5, 2017
現在は完全排除目前となっていますが、これまではマングースによる被害に頭を悩ませてきた島民。
1979年、ハブやネズミ駆除を期待して30頭のマングースを放したものの、駆除の効果は得られず、数万頭まで増えた上にアマミノクロウサギを捕食しだすなど問題となっていました。
マングースの問題がようやく解決に向かおうとしているいま、ノネコによる被害が深刻化。新たな問題が島民や研究者を悩ませているのです。
アマミノクロウサギを守るために出来ることは?
沖縄や徳之島とともに、2018年夏の世界自然遺産登録を目指している奄美大島。今年夏に行われる、IUCN(国際保護連合)による現地調査を前に、何らかの効果的な対策が急がれています。
考えられる対策として、「ノネコを捕獲し、それを譲渡する」というものがあります。
ノネコ捕獲の取り組みはすでに行われているそうですが、約1000頭いると言われる野良猫のこともあわせて考えると、膨大な時間と労力がかかることが容易に想像できます。しかし、この方法は沖縄県で実際に行われ減少につながったいう成功例があるので、地道ながらも着実に効果を上げる方法なのです。
そして、猫を飼っている家庭での室内飼いの徹底も重要となります。
ノネコもマングースも、人の手によって奄美の生態系の中に持ち込まれたもの。もともとの天敵だったハブに加え、新たな天敵を作ってしまった人間の過ちは大きいでしょう。
残念ながら、今も昔も人間が問題のきっかけを作ってしまっているのは事実です。きっと島民以上に悩まされているのは、アマミノクロウサギたち。
世界自然遺産への登録が最終的な”目的”で終わることなく、この機会を、世界的にも貴重な生態系の保護により一層取り組むための”手段”として上手く活かし、人の手で守りぬいていってほしいものです。
http://www.asahi.com/articles/ASK3T5QRTK3TTLTB013.html
via:朝日新聞デジタル
http://www.env.go.jp/nature/kisho/hogozoushoku/amaminokurousagi.html
via:環境省ホームページ
https://www.konicaminolta.jp/kids/animals/library/field/amami-rabbit.html
via:コニカミノルタ
http://373news.com/_mov/news_list.php
via:373news.com
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