日本の医療技術の発展には目を見張るものがあります。
心臓外科におけるカテーテル手術、開頭せずに腫瘍を治療する脳外科での定位的放射線治療、研究の進む遺伝子治療など、研究者や現場の医師たちによる不断の努力が新たな可能性を広げています。
これらの技術開発には費用もかかりますし、経験と技術を兼ね備えた人材が欠かせません。
病院なら高額な先端医療機器も備えていなければなりません。
それらを設置できる環境や輸送手段、技術者も必要でしょう。
一つの技術を地元に取り込み、治療できる段階まで手配するには、さまざまな人的要素とお金が必要となります。
そして、それらの技術を採用するにあたり、より有利な条件がそろっているのは都市部ということになります。
どんなに優れた技術を開発しても、それを運用していく条件が整わなければ患者にまで届かないのです。
「薬を通じ 地域医療貢献を」 三津家正之・田辺三菱製薬社長https://t.co/7KMmeH760b pic.twitter.com/oThMHt2Oux
— 産経ニュースWEST (@SankeiNews_WEST) March 15, 2017
地方在住リウマチ患者の現実
自宅から近くのバス停まで歩いて約5分。
若く健康な足で歩けばその程度でたどり着く便利な場所に、母は住んでいます。
母はリウマチを患っていて、劇薬にも指定される高額な薬を定期的に服用、静注しなければ症状があらわれてしまいます。
症状とは、関節の激痛、変形、発熱など。慢性的に浮腫があり、小さなケガをしても血がなかなか固まりません。
料理が好きで人一倍うまいのですが、包丁を使った料理が難しくなりました。
薬をきちんと服用していても日常的に軽い痛みがあります。
歩くことにも痛みが伴い、数百メートル先のスーパーまで買い物に行くことすら簡単ではありません。
最近、買い物に使う手押しカートを使い始めたようですが、カートを押す路面もでこぼこで小さな車輪はスムーズに進んでくれないそうです。
力はどんどん弱くなり、たまに帰るとビンを開けてくれと頻繁に要求されます。
私がやると簡単に開いてしまうので、どれだけ筋力が衰えているかが分かるのです。
「医療者は医療文脈に(意識してあるいは無意識のうちに)従順に従うことによって、患者をどこかに置き去りにし、組織や業界、立場や身分のため、といったところに力点がおかれるようになっているのではないか」 ~地域医療に取り組む医師 https://t.co/bz7gJ232HF pic.twitter.com/VRTxxIIdYk
— 佐藤由美子(Yumiko Sato) (@YumikoSatoMTBC) March 13, 2017
地方の交通機関の問題
病院にはバスで向かいます。
バスの本数は地方にしては比較的ある方だと思います。
それでも、1時間に1本、通勤時間帯だけ30分に1本程度です。
時刻表をメモした小さな紙を、大切なものを保管する箱に母はしまっています。
身支度を済ませ20分くらいかけてバス停まで歩きます。
着いたらそこでさらに10分くらい待って、目的の病院の近くにあるバス停に向かいます。
バスが時刻ピッタリに来ることは稀だし、足の遅い母は自分の歩くスピードも自分で信用できないのです。
バスが目的の停留所に着いて、そこからまた病院まで歩きます。
バス停が病院の目の前にある訳ではないからです。
バス停の間隔も都会ほど近くありません。
バス停とバス停の間の中途半端なところに病院はあるため、母は余計に歩かなければなりません。
目も弱くなっているから電光掲示板に表示される運賃の小さな文字も読みづらいと言います。
最近のバスに増えている読みやすい大きな文字の料金表も、田舎のさらに田舎の県庁所在地以外では導入が遅れています。
なにもかも、日本は都会中心のまちづくりだと言いたくなります。
齢を取ったら都会のほうが住みやすいという意見に賛成です。
岩手医科大血液腫瘍内科の石田陽治教授の退任記念祝賀会で、石田先生と眞理子夫人と。先生が現場から実践してこられた、地域医療の、災害医療の、そして患者のための「チーム医療」の大切さを改めて考えさせられました。 pic.twitter.com/CN8yhflBlz
— 参議院議員 川田龍平(立憲民主党) (@KawadaOffice) March 12, 2017
選択肢の少ない治療法と医師
さあ、まだ治療までたどり着いていませんね。
これが、難病を患った地方民高齢者の現実です。
国会議事堂のある東京で議論していても、こういうことって分かりませんよね。
病院までたどり着いて、やっと主治医の治療を受けられるのですが、母の症状をきちんと診る能力を備えた医師は、その病院に1人しかいません。
その医師も、県庁所在地である鹿児島市の総合病院から曜日指定で派遣されている方です。
専門病院なのに診察できる医師がたった1人? と思いますよね。
しかし、そうなのです。
インフォームド・コンセントという制度が、随分前に習慣化されました。
でも仮に、母がその先生の治療方針に意見しても、代わりの先生はいません。
何もかも、受け入れるしかありません。
幸い、その医師はとても丁寧に親身になって診てくださいます。
母は以前、同じ症状でこの病院の前に地元の個人病院で診察を受け、「問題ない大丈夫、風邪による関節痛です」という誤診を受けています。
その後症状は改善せず、今の病院で今の医師に診断してもらい、関節リウマチを発症していることが判明しました。
もし、最初の診断でリウマチであることが明らかになり、適切な治療を受けていれば、今の症状は違ったものになっていたかもしれません。
昨日洞爺湖温泉のお店で昼食をとっていたら、地元のお婆さんと店員が話していたな。診療所が無くなるので本当に困ると。地域医療問題かぁと思っていたら、急病人対応ができなくなるので、ホテルが修学旅行ツアーを呼べなくなるからだとか、そういう側面でも影響あるんだな
— Minky (@Minky_j) October 13, 2015
つくづく思い知らされるのは、どんな高度な医療技術を開発しても、インフラなしに技術は活かせないということです。
それは病院としての設備の問題もありますし、単純に住んでいる自治体の交通インフラの問題であったりします。
交通費もかかりますから、いつもタクシーに乗る訳にはいきません。
そういえば、いまは都会の方が短距離のタクシーは料金が安いのですよね。
電車、地下鉄、バス、そしてそれらの便数も、都会には敵いません。
患者から見た病院の設備の充実度、治療方法の選択肢、医師を選ぶ権利の問題など、都会なら自分を守るために自己主張して方法を吟味して選べるものが、田舎では限られてしまいます。
地方医療問題は頻繁に話題に上りますが、医師としては経営面も考えなくてはなりませんから、理想論で地方に居を構える訳に行かない理由もわかります。
公立病院の分院を点在させる、そのための費用は国で一部負担する、問題がお金であるなら地方在住医師への報酬を優遇するなどの政策が必要ではないでしょうか。
医師としての活躍、技術や知識の向上が問題なら、研修への参加費用を援助するなど、地方に住んで医師がメリットのある状況を作る必要があるでしょう。
そのために予算が必要なら、自分の給料を削ってでも国民のためにそうしてください。
φ(..)
「定年になった「大学教授」は全員、地域医療に最低10年間携わること、という「制度」を作ると、60歳以上の医師就業問題と、地域医療問題が一気に解決するのではないでしょうか」
目に余る医学部教授の老害に厚労省も加担 https://t.co/byGnjoDRHJ
— 堀 成美 (@narumita) February 27, 2017
https://www.keieiken.co.jp/monthly/2010/1008-06/
via:NTT DATA
https://chugai-ra.jp/about/about03.html
via:中外製薬
https://www.pref.chiba.lg.jp/index.html
via:千葉県
via:一般社団法人地域医療教育研究所
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