2026/5/10:フリーペーパーvol.122発刊!

読書という贅沢な時間

心と脳を穏やかにさせるシンプルな方法

 

僕個人の考えなのですが、人生において行き詰った感覚を持った時、少しでもリラックス出来る有効な手段として、最も効果的なのは読書をすることだと思います。もちろん人によって何が効果的かは色々と違うのでしょうが、40年ほど生きてきた僕の経験上、読書は心を潤してくれ、考えや想いであふれた脳を整理してくれます。僕の記事を読んでいただいた方は、僕が音楽の記事をよく書いていることを知っていただいていると思います。音楽は僕の人生の中で最も重要なものですが、音楽と読書、これらを比べた場合、心と脳を活性化させるには音楽を、鎮静化させるには読書が適していると思います。

読書、僕の場合、主に小説を読むことが多いです。活字に触れることは昔から好きでした。20代前半は漫画よりも小説を好みました。病気を経て、活字離れをしたこともありますが、最近また小説を手に取ることが増えました。小説は漫画よりも安価で手に入りやすいこともあります。近頃はブックオフオンラインをよく使います。サイトを見ていただけると、いかに小説が安価か分かります。文庫本よりかはハードカバーを好みます。表紙のデザインがハードカバーの方が洒落ていることが多いからです。

日本のカルチャーについて少し。日本のアニメや漫画は世界的に受け入れられているかと思います。ゲームもですね。でも日本の映画や音楽は昔よりかはマシですが、そこまで受け入れられていないと思っています。いえ、世界に受け入れられているかだけが重要でもないのですが。でも小説は、日本の小説は世界の中でも群を抜いて素晴らしいというのが僕の持論です。40代にもなると、涙もあまり流しませんが、小説は20代の頃のように泣いてしまいます。それくらいには小説という文学に魅力を感じています。

前置きが長くなりました。今回は最近読んで、感動した3作品を紹介させていただきたいと思います。ジャンルは違えどすべて女性作家のものとなりました。有名なものや、題名や表紙に惹かれたものと、統一感はないですが、読んでいただけると幸いです。

告白

湊かなえによる小説です。2008年8月に発行されています。デビュー作ながら、小説推理新人賞、2009年本屋大賞など、評価がとても高い小説です。題名は僕も知っていました。結構前の小説なのですが、なかなか読めず、今回やっと読めました。映画化もされて、僕の大好きなイギリスのバンド、レディオヘッドの「ラスト・フラワーズ」が主題歌なのも知っていたのに、です。

あらすじ

中学校の女性教師、森口悠子は終業式の日に教え子たちへ「告白」を始めます。彼女の幼い娘は学校のプールで命を落としましたが、森口はそれが事故ではなく、自分のクラスの生徒による犯行だと考えていました。

教師としての立場を離れることを決めた森口は、生徒たちの前である復讐計画を明かします。その告白をきっかけに、クラスメートや犯人とされる生徒、その家族など多くの人物の人生が大きく狂い始めます。

6章からなる、一人称の語り手が次々と変わる構成で、少年犯罪、いじめ、親子関係、復讐をテーマにしています。登場人物のそれぞれの心理描写が非常に濃密で、その人物の感情を推し量ると胸が苦しくなり、読了まで読者はこの小説に翻弄されると思います。だから読む手を止めることが出来ない。圧巻のラストまで、緊張感が続き、読了後も心に残り続けます。しかし優れた小説の類にもれず、この「告白」も書ききった感が昇華されて、自然と嫌な気持ちよりも、作者へのリスペクトが勝ちます。それくらいすさまじい小説です。未読の方は是非とも読んでみて下さい。

羊と鋼の森

宮下奈都(みやしたなつ)による小説です。2015年9月に発行されています。2016年本屋大賞など、書店員の方から好評である小説です。この小説はタイトルに惹かれて購入しました。
日本文学では、村上春樹以降、「羊」という言葉に少し不思議で知的な響きを感じる人も少なくないでしょう。かのミッシェル・ガン・エレファントの楽曲「キャンディハウス」でも羊が登場します。

あらすじ

北海道の高校生、外村直樹は、ある日学校の体育館でピアノ調律師の板鳥による調律に立ち合います。その音色に、幼い頃から親しんできた森の匂いや空気を感じ取り、深く心を動かされます。外村はその体験をきっかけに調律師を志し、専門学校で学んだ後、楽器店に就職します。

新人調律師となった外村は、先輩たちやピアノを愛する姉妹との出会いを通じて、技術だけでなく「音と向き合うこと」「人と向き合うこと」の難しさと喜びを学んでいきます。才能への迷いや自信のなさに悩みながらも、一歩ずつ成長し、自分なりの調律を探し続けます。

この小説は何か大きな事件が起こる物語ではありません。調律という仕事を通して、「才能とは何か」「自分らしい生き方とは何か」「人が仕事に情熱を注ぐ意味とは何か」を丁寧に描いています。主人公が「音の森」を歩くように、自分の道を見つけていく姿が魅力です。本から穏やかなぬくもりが感じられる小説です。僕はこの小説を読むまで、これほどまで読書中に安心感を感じたものに出会っていなかったです。「祝祭的」といっても構わないでしょう、それもとても静かで、幸福感に満ち満ちています。この優しさがこの小説の核なのでしょう。これまでの小説に対しての価値観がとても変わりました。こういう主人公やそれの周りにある空気感がとても新鮮で、これからはこの小説がある種のスタンダードになりうるのではと思いました。素晴らしい小説です。

表紙のデザインも素敵です。話がそれますがファッション通販サイト、ゾゾタウンにてCOACH(コーチ)というブランドがこの小説のキーホルダー(チャーム)を販売しています。バッグに付ける仕様でとても可愛らしいものとなっております。おもわず購入しそうになりましたが、値段を見て思いとどまりました。是非ご覧になってみてください。

舟を編む

三浦しをんによる小説です。2011年9月に発行されています。2012年本屋大賞を受賞しています。ベストセラーになり、映像化も多数されています。この小説は近所の本屋で文庫本を買いました。情報など全くなく、表紙の美しさに惹かれて購入しました。濃い藍色に銀の箔押しという装丁です。ネットで調べてみると2027年1月までの期間限定特別カバーらしいです。買えて良かったです。小説の内容も表紙に負けない美しい物語となっております。

あらすじ

出版社・玄武書房の営業部員だった馬締光也(まじめみつや)は、人付き合いが苦手で変わり者ですが、言葉に対する鋭い感覚を持っています。その才能を見込まれ、辞書編集部へ異動することになります。

辞書編集部では、新しい辞書「大渡海」の編さんが進められていました。辞書作りには膨大な時間と労力が必要で、完成まで十数年もの歳月がかかります。馬締は個性豊かな仲間たちとともに、ひとつひとつの言葉の意味や用法を吟味しながら、理想の辞書作りに人生を捧げていきます。

その過程で、馬締は下宿先の女性・香具矢と出会い恋を経験し、人間的にも成長していきます。一方、編集部は人員削減や予算の問題など数々の困難に直面しますが、「言葉の海を渡るための舟」である辞書を完成させるという夢に向かって歩み続けます。

この小説は単なる「辞書作りの話」ではなく、言葉の持つ力、仕事への情熱と誇り、人と人とのつながり、不器用な人々の成長を、ユーモアたっぷりに温かく描いたお仕事小説です。完成までに長い年月を要する辞書作りを通して、「言葉とは何か」「人に思いを伝えるとはどういうことか」を考えさせてくれます。言葉を愛する人たちが、一冊の辞書に人生を懸ける感動の物語です。

前述の「羊と鋼の森」の主人公同様に純朴な青年が話の中心になっております。この小説を読んでいて馬締青年に非常に好感を持てました。読む手が止まらず一気に読みました。読後感もとても心地いいものでした。一人称も「僕」ではなく、「俺」なのが人物像を分かり易くさせてくれています。こういう人物描写が非常に長けている作家なのだと思いました。

いかがだったでしょうか

統一感がないという前振りでしたが、3作すべてが本屋大賞受賞という共通点が見つかりました。本当に購入するまで知らなかった情報でした。良い小説は何か人を引き寄せる力を持っているのでしょう。3作とも10年以上前の作品です。2020年代の小説はまた雰囲気が違うのでしょうか。また最近の小説を読んだら、この記事のように紹介させていただければ嬉しいです。今回も楽しく書かせていただきました。最後まで読んでいただきありがとうございました!(2026年6月12日時点)

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