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暮らしの記録 夜溶け

A female hand touching the ocean water in front of a beautful sunset during summer time.

薄明の朝に

静けさに満ちた薄明の頃に目が覚める。ゆっくりと移り変わる空を見つめ、今日が始まることを実感する。眠る間に染み込んだノイズを流すように、柔らかに透き通った水に触れる。

日常のワンシーンを切り取り、綴ったエッセイです。サクッと気軽に読めます。

夜溶け

まだ日も登らない時間帯に目が覚める。優しい静寂に満たされた薄暗い部屋で、ベッドから伝わってくる体温で、自分が生きているということを感じる。窓を開けるとほんのりと涼しい空気が入ってくる。藍色の空が溶けていくのを見つめる。

微かに日が差し込む洗面所で、顔を洗うために水を出す。水の出始めは少し温かく感じる。

次第に冷たい透明な水が組み合わせた手のひらいっぱいに溜まる。手のひらに溜めた水は清らかで、柔らかく感じる。手のひらを少し揺らせば、水面も揺れる。日にかざせば、周りの風景を映し出す。

凝固、気化し、一点の場所に留まることはない。水が望めば、どこへでも行ける。それなのに水は自分から色を求めたりはしない。

目が眩むように色が溢れた世界で、何色でもないなめらかな液体で顔を洗う。忘れたい昨日を、夜の間にまとわりついた心臓の音を。

水が呼吸する。それらを水が吸い込み、流れていく。排水口へと導いていく。

顔を洗い終わり、目を開くと、水鏡に映る「わたし」が映っていた。

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