溶けないアイス
溶けてしまいそうなほどに夏を感じるこの頃。数年前は、迷い猫や小鳥が木陰で休んでいる姿が見られたが、今年は姿を消してしまった。生い茂った緑が日差しを浴び映えているが、こちらも夏バテ気味のようだ。
こんな時は冷たくて、さっぱりとしたものが食べたくなる。ただ、アイス「クリーム」は夏場には少しくどい感じがする。澄んだ水のようなアイスがないかと思っていた頃に出会ったのは、葛粉で作られた溶けないアイスだった。
色を閉じ込めたアイス
とあるスーパーで珍しいアイスを見つけた。それは葛粉に果物などを閉じ込めたアイスキャンディー。苺やパイナップル、ラムネなど様々なフレーバーが、アイスケースの中に並んでいる。
アイスケースの扉を開けると、ひんやりと冷気が漏れ出て涼しく、すこし心が解ける。氷菓の透明なパッケージ越しに、きらきら光る長方形の色彩を見た。
白い星の入った空色、太陽の光を閉じ込めたような黄色、微睡む猫の肉球のような淡い桃色、日が昇らないまだ夜明け前の空の色…。白銀の頃、色が恋しくなった誰かが、純白の下に眠る、残り香のような思い出を探し集め、雪と一緒に瓶に詰めた。そんな幻想性を感じさせるアイスに心惹かれた。
迷った末、選んだのはアクアマリンの色。水のようなゼリーが、葛粉でできたアイスの上を覆っている。その中に白い星のようなラムネが散りばめられている。
まずは一口。つやつやの舌触りの良いゼリーと、もちもちとした弾力のある不思議な歯ごたえ。噛むたびにしゃりしゃりと鳴る音が心地よい。ラムネのほのかな甘酸っぱさが広がっていった。