2025年世間は大阪・関西万博で盛り上がる
2025年4月13日から10月13日の184日間大阪府大阪市で開催している大阪・関西万博。
5月の大型連休の動員数はなんと101万人!SNSでも大阪万博の話題で今盛り上がっています。
そんな中とあるニュースが飛び込んできました!大阪・関西万博開催中に、1970年に開催された大阪万博のモニュメント『太陽の塔』が重要文化財に内定されたとの報道。そして大阪府は『世界遺産登録の第一歩になった』と話しています。
『ちょっと待って・・・!このモニュメントを?単独で?どういう経緯で?』
頭にははてなだらけ。世界遺産といっても建物(モニュメント)単独で世界遺産登録されているものは実は少ないのです。
ざっくり
岡本太郎作『太陽の塔』
1970年の大阪万博のシンボルとして作られたモニュメント『太陽の塔』。20世紀を代表する芸術家岡本太郎が作ったモニュメント。
当時大阪万博のテーマであった『人類の進歩と調和』を基に総工費6億3000万、約1年2ヶ月をかけ建設しました。
大阪万博終了後、太陽の塔の維持費や老朽化による改修費用などが問題になり、撤去計画を視野に。
ですが、市民による署名活動や撤去反対の声が多く上がり太陽の塔の恒久保存が決定しました。
どうやら太陽の塔は3つの顔を持っているようで、塔の頂部には金色に輝き未来を象徴する「黄金の顔」、現在を象徴する正面の「太陽の顔」、過去を象徴する背面の「黒い太陽」という3つの顔を持っていると言われています。
この他にも大阪万博前の1969年3月に作られた『若い太陽の塔』というモニュメントが、愛知県犬山市にある『日本モンキーパーク』内に建てられており、『太陽の塔』の兄弟と例えられているんだそう。
そして、神奈川県川崎市にある川崎市岡本太郎美術館、東京青山にある岡本太郎記念館では岡本太郎の作品を常設展示しており、展示を楽しむことができます。
岡本太郎記念館は、東京・港区南青山にある私立美術館。芸術家・岡本太郎の自宅兼アトリエだった邸宅を、没後1998年に改修し記念館としています。
川崎市岡本太郎美術館は1999年に開館。隣接地には藤子不二雄ミュージアムがあります。
東京・渋谷駅にある岡本太郎の作品。関東方面の人は割と身近に岡本太郎の作品を見ているのではないでしょうか。
国宝・重要文化財指定までの沿革
文化財といっても様々な種別があり、聞き馴染みがある無形文化財や有形文化財、重要文化財、国宝などがあります。
その中で文化財指定の基準はどうやって決めているんだろう?と気になった私。文化庁のホームページを隅々閲覧することに。
国宝・重要文化財(建造物)指定基準
●重要文化財
建築物、土木構造物及びその他工作物のうち、次の各号
の一に該当し、かつ、各時代又は類型の典型となるもの
(一)意匠的に優秀なもの
(二)技術的に優秀なもの
(三)歴史的価値の高いもの
(四)学術的価値の高いもの
(五)流派的又は地方的特色において顕著なもの
●国宝
重要文化財のうち極めて優秀で、かつ、文化史的意義の特に深いもの(文化庁ホームページ PDFより引用)
この5つのどれかに該当しているものが指定基準なようです。世界遺産の登録基準と似ている箇所もあります。
そして文化財指定までの沿革で重要となる、指定前の調査としてはこのような流れになっています。
重要文化財の指定は、様々な調査・研究の成果である建築史や土木史上の学術的な知見をもとに行われます。
文化庁では、指定の候補を把握するため、これまで民家、近世社寺、近代建築等について調査を実施しており、現在は近代和風等総合調査〔近代化遺産(建造物等)・近代和風建築〕、近現代建造物緊急重点調査を行っています。(文化庁ホームページ PDFより引用)
文化財指定までの沿革としてはこのような流れになっています。
- 指定候補の選定 (※国宝・重要文化財の指定は、所有者の同意を得て行っています。)
- 文部科学大臣より文化審議会に諮問
- 文化審議会(文化財分科会)での審議
- 文化審議会より文部科学大臣へ答申
- 官報に告示指定候補の選定
- 所有者に対し指定書を交付 (文化庁ホームページ PDFから引用)
有形文化財の建造物は原則、建築後50年を経過したものが対象となるようです。
ちなみに、世界文化遺産に登録されてる沖ノ島。かつて沖ノ島は、朝鮮半島や中国大陸へと向かう航海上の目印で、海の航海の安全を祈る場所として様々な祭祀が行われていました。そこで祭祀を行った際に、神仏に捧げるために献上する奉献品全て(約8万点)が国宝に指定されており、現在宗像神宝館に8万点の国宝が展示されています。
実は太陽の塔の重要文化財指定はまだだった!?
いくらネットで調べても『太陽の塔』がいつ指定候補の選定になったのかが不明でした。チャットGPTに尋ねてみると、2021年〜2024年に文化庁・専門家による調査・検討が行われていたようです。そして今年2025年5月16日に行われた文化審議会で答申されました。
メディアや大阪府が『太陽の塔が重要文化財に指定された!』と言っていましたが、官報にて告示される正式指定(文部科学大臣の決裁を経て官報告示する)はなんと答申されて半年後だそうです。危うく私も早とちりな記事を皆様に届けるところでした。(汗)
現時点では内定という段階ではあります。
吉村知事が発言した『次は世界遺産の登録を目指します』は現実問題とても難しい・・・
大阪府の知事である吉村知事は『世界遺産の登録を目指します』と言っていました。
実際問題、太陽の塔のみでの登録はかなり厳しいものであると私は思います。モニュメント単体の世界遺産登録はかなり珍しく、世界的に知られるパリのエッフェル塔でさえモニュメント単体での登録ではないのです。
エッフェル塔は『パリのセーヌ河岸』というくくりで世界遺産登録されており、首都パリを流れるセーヌ川の川岸のうちシュリー橋からイエナ橋までの8キロが世界遺産に登録。セーヌ川周辺に建てられているノートルダム大聖堂やエルミタージュ美術館など歴史的建造物も別に世界遺産に登録されています。
パリのセーヌ河岸の場合、個別の資産としてではなくエリア(周辺の建物も含め)というもので登録されています。
吉村知事が言った通り、太陽の塔が世界遺産の登録を目指すとなると、岡本太郎記念館と岡本太郎美術館を含めたシリアルノミネーションサイト(複数の構成資産をひとつの遺産として登録すること)として登録か、万博記念公園を含めたエリアとして登録かの二択になるのでは?と私は考えます。
そして世界遺産に重要なのが登録基準です。世界遺産の登録基準には10項目あり、ⅠからⅥまでが文化遺産、ⅦからⅩまでが自然遺産に適用されています。その中の一つでも当てはまるものがあれば世界遺産登録となります。
太陽の塔の場合、登録基準Ⅰ:人類の創造的才能を表現する傑作のみでの登録になるのでは?と考えています。
現在、登録基準Ⅰのみの世界遺産はタージマハル、シドニーのオペラハウス、プレアビヒア寺院の3ヶ所のみで、もし太陽の塔が世界遺産に登録となると、登録基準Ⅰのみでの登録になるかと思います。
岡本太郎の作品が再注目
2025年大阪万博の開催で再注目されている岡本太郎の作品。
フランス・パリのケ・ブランリー=ジャック・シラク美術館で開催中の「タロウ オカモト:再発見された日本」展は9月7日まで開催予定。
そして宮城県仙台市にあるギャラリーエイトでは、岡本太郎が手掛けた絵画や立体作品23点が展示されています。7月11日まで開催。
万博開催、重要文化財の登録内定で、みなさんが改めて岡本太郎の作品を鑑賞するきっかけができればいいなと思います。
芸術家・岡本太郎の生涯、そして素晴らしい作品をいつかこの目で見てみたいと私は夢見ています。
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