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ASDで白血病のサバイバー、斎藤美衣さんが紡ぐ言葉の深さ

Autism mental health day. Jigsaw puzzle background. Paper texture

Xで知った注目物書き、斎藤美衣さん

Xをするようになってから知った物書きさんがいる。

Xをしなければ知らなかった物書きさんである斎藤美衣さんは私と同じASDと複雑性PTSDを持ち、そして、14歳の時に白血病を発症したがんサバイバーでもある方で17歳の時に摂食障害を発症された方だ。

Xを散策していると思いがけない逸材に出会えることもある。

斎藤美衣さんの俳句や短歌がタイムラインで流れていたので惚れ込み、すぐにフォローした。

斎藤美衣さんのプロフィールも気に入り、後を追うアマチュア物書きさんだと思ったら何と、斎藤美衣さんは医学書院の『ケアを開く』シリーズから本を出版することが決まったそうなのだ。

本を出す前から応援していたファンとして発売になったら即座に買わねばと思い、本屋へダッシュした。

壮絶な手記、『庭に埋めたものを掘り起こさなければいけない』

斎藤美衣さんの手記は一言で言うと凄まじかった。

胸をえぐられるような悲しみと怒りに震えたような本だった。

読みながら『ああこういうことあったな』と今までの自分の生きづらさを答え合わせするような本だった。

斎藤美衣さんは14歳の頃、白血病で1年間闘病生活を送っている。

その様子も過酷で胸が痛かった。

私は閉鎖病棟に入院経験はあるものの、身体的な疾患で入院したことはない。

閉鎖病棟にはない過酷さに斎藤美衣さんの文才は真に迫っていた。

その後、斎藤美衣さんは白血病の後遺症から摂食障害も発症している。

まさにダブルマイノリティである。

摂食障害の苦しみも著書の中で吐露されている。

実はこの本、斎藤美衣さんが措置入院をした1年後に書かれた本なのだ。

これも驚くことだろう。

波乱万丈とは言うが措置入院という過酷な経験後に本を出せるなんて人生、何があるのか、分からない。

斎藤美衣さんの文章は詩的で美しい。

まるで詩歌を読んでいるかのように読み手は感じる。

自分と同じ当事者を見ると同じように頑張れるし、明日を生きてみよう、と思える。

斎藤美衣さんが今まで生きてきた中、感じた違和感は私も同様、見覚えがあった。

あの時の苦しみ、あの時の哀しみ、あの時の怒り、全て見覚えがある。

読み進めながら何度も反芻した。

同じ当事者としての苦しみを持っている

 

斎藤美衣さんの著書は私が日ごろ感じている苦しみや怒りや悲しみをつぶさに表現しており、読んでいて共感する点は多かった。

ネットには発達障害、取り分けASDに対してレッテル張りや偏見・中傷を行うアカウントが一定数存在するがああいうアカウントを目撃すると私はひたすらに悲しくなる。

何故、ASDに生まれただけで『共感性の欠如』や『想像力の欠如』『コミュニケーションの欠如』などある意味、一方的な見方をされないといけないのだろう。

言語化能力が巧みな斎藤美衣さんの著書を読むとむしろ、共感性も高いし、想像力はこんな素晴らしい文章を1冊の本としてまとめられるのだから高いほうだと思うし、本を読む限り、知的なコミュニケーションが堪能な方に見えるが、それは私だけが感じるのだろうか。

こんなにも当事者が感じる生きづらさを的確に言語化し、それを1冊の本として出版できる能力は極めて優秀だと言っても過言ではない。

ちなみに2024年の『三省堂 辞書を編む人が選ぶ「今年の新語2024」』には大賞に『言語化』が選ばれている。

当事者界隈でも飛び交う『言語化』という言葉、実はこの言語化能力は定型発達でもかなり難しい。

斎藤美衣さんは当事者でありながらその難しい言語化に挑み、素晴らしい1冊の本として出版された。

この本は発売1カ月後で重版となり、大きな反響を呼んでいる。

斎藤美衣さんは私にとって当事者物書きの先輩のような存在

 

小説家にはなれないかもしれないが私は小説家と同じように当事者の手記を出す物書きさんに強く憧れがあった。

自閉症スペクトラム障害で多数の本を出版している東田直樹君や今回紹介した斎藤美衣さんのようにいつか、この苦しみを世の中に伝えねばならない、と。

いつか叶うかも分からないし、叶えられるかも分からないが希望は持っておこうと思う。

措置入院後のわずか1年後に本を出版した斎藤美衣さんのようなケースもあるのだ。

人生に希望を捨ててはいけない。

この記事をきっかけに斎藤美衣さんのことを知れたら嬉しい。

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