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フィンランド語の母音は、日本語の五つより三つ多い八つの母音があります。
フィンランド語の母音には、日本語や英語には無い発音もあります。
またフィンランド語には、母音調和と呼ばれる規則があります。
この記事では、フィンランド語の母音について説明します。
フィンランド語の母音
フィンランド語の母音は八つあります。
a, e, i, o, u, y, ä, öです。
- a:aは「ア」の音です
- e:eは「エ」の音です
- i:iは「イ」の音です
- o:oは「オ」の音です
- u:uは「ウ」の音です。ただし日本語のウより唇を丸めて発音します
- y:yは母音です。「イ」と言いながら唇を丸めて発音します
- ä:äは母音です。英語の「cat」の「a」の音に似ています
- ö:öは母音です。y より少し口と舌を広く開いて発音します
母音の舌の位置
それぞれの母音の舌の位置を表にすると以下のようになります。
高さは舌の位置を表します。
円唇とは、唇を丸めるという意味です。
前舌/非円唇 | 前舌/円唇 | 後舌/非円唇 | 後舌/円唇 | |
高 | i /i/ | y /y/ | u /u/ | |
中 | e /e/ | ö /ø/ | o /o/ | |
低 | ä /æ/ | a /ɑ/ |
母音の長さ
フィンランド語は全ての母音に基本の短い短母音と、短母音より長い長母音の区別があります。
フィンランド語の単語は、含まれる母音が短母音か長母音かで意味が変わるので、発音する際には母音の長さに気をつける必要があります。
短母音は一つの文字で、長母音は二つの文字で表わされます。
例としてte「あなた方」とtee「お茶」があります。
二重母音
フィンランド語には、二つの異なる母音が連なって発音される二重母音があります。
ai, au, äi, äy, oi, ou, ei, eu, ey, öi, öy, ui, uo, iu, iy, ie, yi, yöがあります。
/i/で終わる | /u/で終わる | /y/で終わる | 開二重母音 | |
/ɑ/で始まる | ai [ɑi̯] | au [ɑu̯] | ||
/æ/で始まる | äi [æi̯] | äy [æy̯] | ||
/o/で始まる | oi [oi̯] | ou [ou̯] | ||
/e/で始まる | ei [ei̯] | eu [eu̯] | ey [ey̯] | |
/ø/で始まる | öi [øi̯] | öy [øy̯] | ||
/u/で始まる | ui [ui̯] | uo [uo̯] | ||
/i/で始まる | iu [iu̯] | iy [iy̯] | ie [ie̯] | |
/y/で始まる | yi [yi̯] | yö [yø̯] |
iで終わる二重母音は単語の中のどの位置でも現れますが、円唇母音で終わる二重母音は通常語頭だけに現れます。
通常、二重母音は上に挙げたものだけとされますが、他の母音の組み合わせが二重母音化する事もあります。
例えば yliopisto「大学」 は yli「上級」とopisto「教育機関」の組み合わせですが、話し言葉などではylio-pistoのように聞こえる時もあります。
母音調和
フィンランド語には、母音調和と呼ばれる現象があります。
母音が三つのグループにわかれていて、一つの単語の中で同じグループの母音しか同時に現れる事ができないという規則です。
母音のグループ
フィンランド語では母音は三つのグループに分けられます。
- 前母音:ä, ö, y
- 後母音:a, o, u
- 中立母音:i, e
前母音と後母音は、同じ単語内に同時に現れる事はできません。
中立母音は他の母音と混在する事ができます。
同じ単語の中で母音は、前母音もしくは中立母音、後ろ母音もしくは中立母音だけが現れて、前母音と後母音が同じ単語に現れる事はありません。
例えば、tuo「あれ」やtyö「仕事」という単語は存在しますが、前母音と後母音が混在したtuö、tyoという形はフィンランド語にはありません。
また、この原則は単語に付く接辞にも影響します。
例えば単語に後母音が含まれている場合、接辞も後母音のものを使います。
「Suomi(フィンランド)」は後母音が使われているので、Suome-ssaとなりSuome-ssäとはなりません。
外来語には母音調和の規則に従わず、母音が混在したものが見られます。
例として「analyysi」「分析」、「konduktööri」「車掌」などがあります。
参考
言語学大辞典セレクション ヨーロッパの言語(三省堂)
ニューエクスプレスフィンランド語(白水社)
Finnish phonology(Wikipedia英語版)