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弥生 暮らしの記録 

Diary and herbal tea standing on the table

アンダンテな暮らし

全粒粉のパンを焼き、青い花瓶と花の物語を空想し、社会と人の関係性について思考してみたり…。日常の出来事を淡々と見つめ、綴ったエッセイ集。サクッと気軽に読めます。

全粒粉の食パン

お気に入りのオーガニック食品を扱う店へ行く。ここにはラディッシュやトマトなど、いつも新鮮な野菜が揃っている。手作りのお弁当やお菓子もあり、私はよくお弁当やスコーンを買う。いつものように店内を見て回ると、珍しい物が陳列してあった。小麦を丸ごと粉にした製菓用の全粒粉だった。

きめ細やかな薄茶色の粉を眺めていると、パンが食べたくなった。角の部分が少し香ばしいパンの味を思い浮かべる。いつもお菓子作りに使用している精製された小麦粉や米粉とは違うのだろうか。全粒粉一袋を買い帰宅。

本を読みながらパンの焼きあがりを待つ。オーブンの軽快な音とともに、香ばしい匂いが部屋中に広がってゆく。一切れ味見すると、ふわふわで美味かった。いつかホットサンドを作ってピクニックへ出かけたい。

青い花瓶

ここ数年前から部屋に花を飾るようになった。庭に咲く花を摘み、小ぶりの青い花瓶にいける。花瓶の澄んだ青が綺麗で、花を湖に浮かべているような気分になる。柔らかな曲線のシルエット、陽の光が作り出す影や花の色の移り変わりがとても美しい。

花屋で可愛らしい花束を見つけた。ピンクのガーベラに白いバラ、緑色のひょろりと長い茎の先に黄色い星のような花が咲いている植物をまとめた小ぶりな花束。その控えめながらも可憐な姿に惹かれ購入。帰宅後、星の花の名前を調べると「ププリウム」というらしい。

長さを切り揃え、花瓶にいける。切られた植物の茎が、断面が痛々しく見えた。鋏の音が植物の断末魔のように聞こえ、良くないことをしているような気持ちになった。陽の光でバラの花びらが半透明に透ける。朝靄に包まれた森の奥、湖に落ちた星の欠片を探す少女。そんな物語を想像した。

電波戦争

世の中が不安定になると、人も不安定になる。自分より権力を持った人間には、抵抗、抗議する勇気がないから、手近な人間を攻撃する。自分たちのどうしようもない怒り、悲しみ、鬱憤などネガティブな感情を、自分より劣っている(とみなす、成功者や幸せそうに見える、自分より努力していないなど。誰かから聞いたうわさや表面的な印象だけで判断する)人間をターゲットにする。

攻撃するのは、「私」ではなく「私たち」だ。その対象は芸能人や政治家、学校や社会の「誰か」。まるでゲームで競うように、「誰か」を探している。チート行為やバグを使用してゲームで勝ったとしても、虚しさだけが残るだけだ。

攻撃している間は自分たちの抱えている問題は忘れられるけれど、根本的には解決しない。集団心理が働いて攻撃をやめたくてもやめられない状態になってしまう。そうしてどんどん堕ちていく。いろんな人の感情が混ざり合ったカオスはやがて自分自身を蝕んでいく。

「カオス」に染まると人形になってしまう。そこから抜け出すにはとても辛いことで、死にたくなるような思いもする。何年もかかることもある。でも自分が本当に望む幸せや対人関係、伝えたかった気持ちは、泥沼から這い出ないとわからなくなっていく。

本来ならば抱えている問題や感情を、「明らか」に、客観的に見て、どうすればよいか考えるべきで、そのエネルギーを他者にぶつけるべきではない。どうしても話がしたいならば、穏やかに、客観的に相手や自分の環境や問題を見れる状態で、口撃ではなく対話をすることが必要なのではないか。

ネットに溢れる電波戦争を見て、そんなことを考えた。

 

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