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発達障害者文学、横道誠さん

Opened book and eyeglasses on the desk

発達障害のための文学、『みんな水の中』

書店でこれだ! と思うような本を見つけてしまった。それは発達障害の当事者が書いた文学論、『みんな水の中』。大学准教授である当事者の横道誠さんが書いた文学エッセイである。横道誠さんの本は私が今まで欲しい、と思っていた内容を網羅した素敵な本だった。横道誠さんの本を読んで思ったこと。それは当事者文学はまだまだ開拓されていない豊饒な地であるということだった。

10代の頃、発達障害を理由に文芸部を断られて

私は10代の頃、文芸部に入部しようとした。しかし、体験入部直後、顧問の先生から自身の発達障害を理由に入部を断られた。理由は『発達障害者は文学も分からないし、理解できないから』という唖然とするような内容だった。もちろん、反発したが結局、入部はかなわず、私はその高校さえも学校側からの圧力に負けて転校を余儀なくされる。
今でも入部を断られた事実はトラウマになっている。大人になってからも発達障害者は小説が読めないとか、書けないとか、分からないとか、ネットで調べればそれなりにヒットする。文学界隈でもそういった認識が数年前までははびこっていった。しかし、横道さんの本の登場でそんな状況も一変する。

斬新な設定の当事者文学

横道誠さんは知識が豊富な文学者だ。『みんな水の中』では多くの著作を引用しながら発達障害的な文学観を語っている。横道誠さんの本を読みながら今まで待ち望んでいた主張が鮮明化され、よくぞ言ってくれた! と思わず喝采を上げた。

横道誠さんの文学への知識量は半端ない。漫画からアニメ、近代の名作まで網羅した一冊はそれだけで十分満足できる。それに加えて発達障害の当事者ならではの知見を詳細に描いているのだからすごい、と一言に尽きる。横道誠さんの世界観は当事者性を打ち出しながらも文学者としてのプライドを忘れず、緻密に評価している。読みながら共感の嵐だった。横道誠さんは幼少期に宗教2世として育ち、今でもその後遺症である複雑性PTSDで苦しんでいることを告白されている。その苦しみを救ってくれたのが紛れもない文学、本だった。

10年代を代表する発達障害文学『コンビニ人間』

横道誠さんは2010年代を代表する発達障害文学として、村田沙耶香の『コンビニ人間』を上げている。コンビニ人間は芥川賞を受賞した村田沙耶香さんの渾身の一作であり、ベストセラー作品である。主人公のアラサー女性はコンビニに働くことが生きがいのちょっと無機質の女性。彼女を取り巻く生きづらさが発達障害者を取り巻く環境を暗示しているのでは、と受賞当初から話題になった。
最近、発達障害は文学のテーマになることも多い。昨今の現代人の生きづらさを発達障害を通して描くことで鮮明に描こうとする文学者も多いのだろう。横道誠さんのように当事者自ら文学を熱く語ることも多い。発達障害と文学、その可能性は大いに満ちている。

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